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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』

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いつの世もダメな男はいるもので、酒に、煙草に、博打に、女、昼間から仕事もせずにプラプラと、挙句の果てに女房に手を挙げて……。そんなバカ亭主を持った女が駆け込む先が、縁切寺 ―― … もっと読む
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記事一覧

【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 深厚之宿縁浅薄之事不有私 (完)

 おはまの遠島の日が来た。  惣太郎は、父母と連れ立ち、見送りに行った。  舟は、永代橋…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 14(落着)

 銀蔵は、清次郎と郷役たちにびっしりと締めあげられた。そして白状したのが、おみねの大家、…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 13

 満徳寺に着いたのは、翌日の昼前だった。  花畑を耕していた嘉平や女たちが驚くのを尻目に…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 12

「ええ、それなら頂きました」  と、吉兵衛は怪訝そうな顔をして答えた、ふさふさの眉毛まで…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 11

 この事件は、惣太郎たちを陰鬱な気分にさせたが、それでも得たものがなかったわけではない。…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 10

 それを父に伝えると、宋左衛門は、 「そうか……」  と言ったきり、押し黙ってしまった。…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 9

 一旦自身番へと連れて行かれた女は、すぐさま大番屋へと移された。そこで、与力による吟味を受けた。  幸いだったのは、南町が月番だったので、惣太郎は源五郎から何かと優遇してもらえた。  源五郎から聞いた話であるが、おかるは矢張りおはまであった。  彼女は、これまでと思ったのか、それまでの経緯(いきさつ)を洗いざらい話した。  北町の大澤とは数年前からの付き合いらしい。政吉のことで、いろいろと相談にのってもらっているうちに、関係を持つようになったとか。  政吉も、そのこ

【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 8

 父が江戸に到着するという前日、その予感が的中した。  同心の源五郎に呼び出され、南町奉…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 7

 その帰り道、誰かにつけられているような気がした。  はじめは気のせいかなと思った。  …

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 6

 新兵衛に連れて行かれたのは、南町奉行所であった。  何ゆえ敵地にと思ったが、 「寺社奉…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 5

 味噌焼きの香ばしい団子を頬張っていると、加賀屋のほうから新兵衛がやってきた。  随分満…

hiro75
5年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 4

 外に出て、冷たい空気を何度も吸い込んだ。  昂ぶっていた心が徐々に冷やされ、熱くなって…

hiro75
6年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 3

 翌日、御手洗主水に挨拶をした。また、入りが遅い、昨日はずっと待っていたのだとねちっこく…

hiro75
6年前
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【歴史・時代小説】『縁切寺御始末書』 その四 おみねの一件始末 2

 再びの江戸であった。  二度目ということで慣れもあるし、新兵衛もいるので道に迷うこともなかった。はずだが、奉行所についたときには、すでに暮れかかっていた。  対応に出た藤田孝三郎が、 「随分遅かったですな」  と尋ねると、 「いや、久しぶりの江戸で迷ってしまいまして」  と、新兵衛は笑いながら答えた。  何のことはない、新兵衛が前日の宿で深酒をしてしまい、昼近くまで二日酔いで参っていただけである。 「御手洗さまは、もう下がられましたか」 「ええ、とっくに」