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神経と疼痛


はじめに

 背中の痛み(疼痛)※や腰痛で整形外科にかかり、X線またはMRIをとられた経験があります。医者に、骨に異常はありませんが「神経が圧迫されています(図1のような画像を見せられました)」と言われ、痛み止めと炎症をおさせる薬が処方されました。そして、その後多かったのは、(原因がわからないため)とりあえず痛み止めを出しておきますという診断でした。
 腰や内臓疾患が原因であるとわかる痛み以外に、近年、原因がわからない脳が痛みを感じる腰痛(非特異的腰痛というらしい)が多くなっていると言われています[1]。
 原因がありそれが神経に伝わり最後に痛みを感じるのは脳であり、神経自体は痛みを感じないのではないかと思ってきましたが、では神経とは何でしょうか。神経は体の器官から得た感覚情報を脳に、逆に脳から体の器官に電気的信号の指令を伝えるネットワークであることは漠然とわかっていたのですが、上に書いたように「神経の圧迫」からくる痛みとは何かを知りたくて神経について調べてみましました。
 神経の構造と機能について、参考文献をもとに学習したことを書きたいと思います。
 この記事では神経が情報を受け取る体の器官、すなわち痛みの原因が発生する箇所と、痛みを認識する脳については解説しませんが、後日勉強して書きたいと思います。

※痛み(疼痛)は、傷ついた細胞からカリウムなどが放出され、さらにプロスタグランジンという脂質性の物質や、ロコトリエンという炎症性物質が放出されます。そして神経からは、ブラジキニンという痛みを増強する物質が放出され、神経を伝わり大脳が痛みを感じるとのことです。
 椎間板の変症(椎間板ヘルニアの前段階)は、椎間板の中心部である髄核が変性し、外側の線維輪に傷が生じることがあります。この傷が神経構造に圧迫を及ぼすことがあり、その結果、腰痛や坐骨神経痛などの症状が引き起こされるそうです。
 ヒトの体の細胞が傷つき細胞内で化学反応が起きて、それを痛みであるとの情報を神経が脳に伝え、脳が痛いと認識していとは不思議です。


図1:MRIで撮影された椎間板ヘルニア(参考文献[2])

神経の構造(参考文献[3]から)

・中枢神経:脳と脊髄です。
・末梢神経:中枢神経から体の器官をむすぶネットワークです。
  さらに、末梢神経には、
  運動神経:脳からの命令をもとに、骨格筋を働かす運動の指令をする伝達経路です。
  自律神経:呼吸、血液循環、食物の消化などを無意識に調整する経路です。自律神経には
     交感神経:体の器官の活動、緊張を司る経路と、
     副交感神経:体の器官の休息、リラックスさせる働きを司る経路
とがあります。
 たくさんの種類の神経があります。「はじめに」に書いた疼痛と自律神経の関係がわかなくなりました。無意識に調整できるなら、痛みも脳が感じないで、無意識に調整してほしいところです。
 次の節では、神経の情報伝達方法について説明します。

脳からの器官への情報伝達方法

 脳にあるニューロンという神経細胞が、体の器官と細胞に情報を伝えています。

ニューロン

 ニューロン(神経細胞)は、
入力は樹状突起、情報伝達部分を軸索、それを覆っている部分を髄鞘と言います。そして、末端の枝である出力部をシナプスといいます。
ニューロン 細胞体の大きさは、0.1mm~0.005mmで、DNAをもつ核があります。大脳では1mm3に10万個ものニューロンが詰まっています。合計すると100億個から1000億個もあり、最も長いニューロンは腰から膝まで1mもあります。
 シナプスと受容体の間には間隙(かんげき、すきま)があり、神経伝達物質を放出して情報を伝えています。ニューロンは、樹状突起で他のニューロンから間隙を通してシナプス小胞 - 脳科学辞典 (neuroinf.jp)で作られた化学的シグナル(神経伝達物質)を受け取ります。神経伝達物質には、グルタミン酸、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどがあります[4]。受け取った化学的シグナルは、ニューロン膜の特殊なイオンチャネルを介して電気的シグナルに変換されます。
 具体的には、神経伝達物質がニューロン膜のレセプターに結合すると、イオンチャネルが開き、ナトリウムイオンなどが細胞内に流入します。この電気的な変化が活動電位(興奮性シグナル)となり、軸索を伝わって次のニューロンに伝えられます。
 シナプス部でも同様に、到着した活動電位によってカルシウムイオンが流入し、シナプス小胞からの神経伝達物質の放出を引き起こします。このように、ニューロンは化学的・電気的シグナルを相互に変換しながら、情報を伝達しているのです。
 隙間を作って伝達物質を使うのは情報の強さを変えるためで、興奮、抑制情報を相互に加減させています。このことをシナプスの可塑性と言います。この可塑性には、特定のアミノ酸(グルタミン酸受容体)が関与しています[5]。


神経とシナプス



神経に特定の刺激(しげき)が加えられ続けると、その情報を学習し、その後のはたらき方が変化すると考えられています。情報の伝わりやすさは、シナプス伝達効果と言います[3]。

このように、ニューロンが化学的・電気的シグナルを相互に変換しながら、情報を伝達していることから、生きているとは、体内で化学反応が起きているそして電気的シグナルが伝達することなのです。伝達物質を作るシナプス小胞は大事ですね。これが衰えると神経伝達が衰えるような気がします。
 

器官から脳への伝達方法

痛みの場合(参考文献[7])

皮膚感覚のレセプターの自由神経終末(神経線維の末端)→
 神経→
 後根神経節(こうこんしんけいせつ)→
 脊髄→
 脳視床→
 大脳皮質の一部である一次体性感覚野
 一次体性感覚野は痛みの処理に関わる部分
 帯状に広がる一次体性感覚野は、場所によってからだのどの部分の痛みを担当するかが分かれています

 痛みとなる刺激の例としては、
機械刺激(指を切ったり机をぶつけたりした時に感じる刺激)、
温度刺激(熱い、冷たいなどの刺激)、
科学刺激(科学的な物質などで炎症が起こる刺激)
があります。これらをレセプターの自由神経終末が受け取って、電気的な信号に変換します。

 皮膚で感じる痛み以外の各器官たとえば
眼、耳、鼻、舌(視覚、聴覚、鼻覚、味覚)
が受け取る感覚情報については、それぞれの器官についてさらに調べて書いてみたいと思います。

参考文献

[1]腰痛 - Wikipedia
[2]椎間板ヘルニア - Wikipedia
[3]中外製薬、からだとくすりのはなし、からだのしくみ、神経、https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada022.html

[4] 脳の構造 ttps://bsi.riken.jp/jp/youth/know/structure.html

[5]記憶・学習のメカニズムを分子レベルで明らかに―記憶・学習を操作できるか 幸田 和久(生理学)、慶応大学 、2014.4.1 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/medical_info/science/201404.html

[6] https://www.bs.s.u-tokyo.ac.jp/~naibunpi/Oka/2005Summer_Seminar.pdf

[7] https://www.healthcare.omron.co.jp/pain-with/basic-knowledge/signal-pathway/

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変更履歴
Rev.1  2024.4.13 初版

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