見出し画像

危うい

なんでこんなことになってしまったんだろう。
 
初めて君を見たのは駅の改札だった。
とにかく儚くて消えてしまいそうな危うさが
僕の心を鷲掴みにして
そのまま僕は君をストーカーのように追いかけてしまったんだ。

一人でバーに入る君を追った。
友達と合流でもするのかと思ったけど
カウンターに一人でいる君を見て
人生で初めてナンパをしたよ。
とにかく君に近づきたかったんだ。

戸惑いながらも僕の話を聞いてくれた君と
お付き合いが始まったのは自然な流れだったね。
僕は既婚者で、君も既婚者だったけど。

君はとにかく妖艶だ。
男ならほとんど全員が君を泣かせたいと思うだろう。
間違いなく僕もその一人だった。

嫁の目を盗んで君との逢瀬を重ねたけど
君から「距離を置こう」と言われたときは
君がいなくなるかもしれない恐怖で
思ってもなく君を責め立ててしまった。
僕はなんて弱虫なんだ。

僕と君の関係は薄い氷の上を歩いてるように危ういものだったんだ…。やっと気づいたよ。
もう遅いけど。

ーーーーーーーーーーーー

どうしてこんなことになってしまったの…?

あなたと初めて出会ったのは
夫と喧嘩して家を飛び出した日だったの。
カウンターで飲んでたら
急に隣に来て話しかけてきて…
ナンパされるのは慣れてたけど…あなたの必死さに
少し戸惑った感じになってしまったわ。

優しいあなたとお付き合いするまで
時間がかからなかったのは…なぜだろう?
一緒にいるのが本当に当たり前だと思ってたの。

よく私が他の人にとられてしまうって
あなたは不安がっていたけど…
こんなおばさん相手に誰が恋心を抱いてくれるのよ。
全くおかしなことを言う人だわ。

何かあるたびに「嫁が…」「嫁と…」って
あなたの家族の話を素直に聞いてあげれなくなったとき…
あ…私あなたのこと本気になってるんだわって気づいたの。
「距離をおくべき」と思ったのは私のわがままだけど…
まさか、お前のそういうところが嫌いだ…とか
そんなこと言われると思ってなくて
売り言葉に買い言葉ね…。
「別れる?」なんて聞いてしまった私がバカね。
引き止めてくれると思ってたのよ。

私達の関係が綱渡りのように危ういことはわかっていたはずなのに。



なんでこんなことに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?