「基本ワンピースのひと」

もともと、あまりかっちりとした服は好まず、どちらかといえば楽に着られてそれなりに見える服を求めてきた。

とくべつ服が好きとか、お洒落が好き、というタイプではなかったが、30代後半になって急に服をたくさん買うようになってしまった。なぜなら夜な夜なネット通販で服を探す楽しみを知ってしまったから。

複数のサイトで服を探し、「お気に入り」に登録し、「カート」まで入れてもう購入寸前というところまできて、「やっぱりやめた」ということも多い。しかも深夜1時とか、2時の時点で。それまで何時間PCにかじりついていたのだろう…と思うと、ほんとうに馬鹿みたいなのだが、欲しい服の条件がいくつかあって、それを満たす服をひたすら探し続けるという行為が、なんというかゲームみたいな感覚で楽しいのかもしれない。

そういう馬鹿げた行為が2日ほど続くと、さすがにじぶんでも「いい加減にしないと」と思い、その連鎖にピリオドを打つがごとく、えいやと「購入を確定する」ボタンを押してしまったりもする。

服がほしいのか、服を探すゲームを終えたいのか、もうなんだかわからなくなる。はあ。

そんなこんなで膨れあがってきてしまったクローゼット。たまにリサイクルに出したり、売ってみたりするが(数年前はいくつかのお店に並行して買取の見積もりを出し、Excelで比較表までつくっていた…)、限界がある。

大量の服の整理に頭を悩ませていたら、こんどは「着られる服がない」という事態に陥った。

とある手術を受け、お腹を切ったもんだから、上下分かれている服を着ると傷口に当たって痛いのだ。

パンパンのクローゼットを見回しても、そのほとんどが上下分かれているもの。ワンピースは歌うときの衣装か結婚式用のもので、ふだん気安く着られる感じのものではない。

とりあえずと思い、以前ユニクロにて1000円以下で買ったマキシ丈のワンピースを着てみたが、これがとても快適。こういうのがほしい、と思ってまたまたネット通販のサイトを次から次へと漁る日々。数日間で何着か購入してしまった。でも仕方がない、身体のためなのだから。

ますます膨れあがるであろうクローゼットを思い、気が重くなる一方だったが、もうこうなったら「基本ワンピースのひと」でいこうじゃないか、と気が変わってきた。

小物でいくらだって遊べるし、何より毎朝コーディネートを考える時間の短縮にもなる。

この秋冬のお洒落が、急に楽しみになってきた。

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