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美術館散歩 #2 モネ連作の情景展

上野の森美術館「モネ連作の情景」展に行ってきました。

モネはある時期から同じモチーフを天候や季節の移り変わりの中で、その一瞬の光彩をカンバスに切り取る手法を取り入れます。
本展はその「連作」に焦点を当てた展示となっています。

訪れたのは平日の夕方でしたが、かなり混んでいました。
ショップが一度外に出た別会場になっているのですが、そのショップに入るのにも相当な列ができていて、モネの人気を感じました。
ただ、規模的にはあまり大きなものではなく、2800円(土日は3000円)はちょっと高いのではないかと個人的には思います。

本展では展示されていないものですが、クロード・モネの作品で一番好きなのは「散歩・日傘をさす女」です。

モデルはモネの妻カミーユ、側にいる男の子は息子のジャンです。
乾いた夏の風が、絵を見ている私たちにも届いてきそうな傑作です。
慎ましい暮らしの中でも家族への愛情と幸福が伝わってくる作品です。

モネには百貨店を経営するエルネスト・オシュデというパトロンがいたのですが、破産して国外逃亡。残されたオシュデ夫人と6人の子供達がモネを頼って居候します。
この絵を描いた3年後のことでした。
そしてその翌年、最愛の妻カミーユは亡き人となってしまうのです。

「散歩・日傘をさす女」が描かれた11年後、モネは同じモチーフで2枚を描きますが、そのモデルとなったのはオシュデ夫妻の三女シュザンヌです。
この時点ではオシュデ夫人=アリスとモネは再婚しているので、義子ということになりますが、しかしその作品には日傘をさしている女性の表情がはっきり描かれていません。
亡き妻への追慕の念がそうさせたのかもしれません。

これ以降、モネは人物を描くのをやめて、風景画の「連作」にのめり込むようになります。

原田マハさんの小説「ジヴェルニーの食卓」は、同じ義理の娘であるブランシュの目を通して、モネの連作『睡蓮』がどのようにして誕生したかが語られる物語です。
作家の豊かな想像力に脱帽します。


上野の森美術館で1月28日まで
巡回展は2月10日~5月6日 大阪中之島美術館

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