なぜ、フォーエバー21は破産したのか?
いよいよ11月ですね。あと日曜が8回来たら2020年ですよ。どうですか?ちょっと焦りませんか。
そんな先月末、こんなニュースが報じられていました。
フォーエバー 21は9月25日に日本市場からの撤退を発表し、10月11日から国内の全14店舗でファイナルセールを本格的にスタートした。営業終了1週間前からは最大90%オフに引き上げ、最終営業日となる今日は店内の全商品を50円で販売。なお、公式オンラインストアは実店舗に先駆けて10月14日をもって閉鎖した。ー
https://www.fashionsnap.com/article/2019-10-31/forever21-close/ より引用
大阪の安売りショップも真っ青な値段ですが、どれだけ混雑したんだろう。最終日の様子をタイムラプスで撮っといたら面白かったのに。
そして、フォーエバー21は日本撤退だけでなく、本国ではなんと破産を申請するに至っています。
10月末で日本から完全撤退を表明している「フォーエバー 21(FOREVER 21)」が、米連邦破産法11条の適用を申請した。破産法の申請は、アメリカ合衆国デラウェア州連邦地方裁判所が公開している過去45日間に提出された企業一覧リストで確認ができ、申請日は「9月29日」と記されている。フォーエバー 21は日本での事業終了に加え、今春には中国本土と台湾、先日は香港から撤退したことから、破産申請も秒読みとされていた。ーhttps://www.fashionsnap.com/article/2019-09-30/forever21-filed-for-bankruptcy/ より引用
一時期は飛ぶ鳥を落とす勢いだったフォーエバー21、なぜこんな事態になってしまったのでしょうか。掘り下げていくとファッション業界だけでなく、色々な転換期が今来ている、ということが分かってきます。私見を交えつつ順を追って解説してみますね。
1、ファストファッションの二極化
2008年のH&M銀座店オープンを皮切りに隆盛を極めたファストファッションですが、実はここ数年その日本でも苦戦している状況があります。
2015年にはイギリスのトップショップが、2017年には当時GAP傘下オールドネイビーが日本撤退、2018年にはH&Mの銀座店もクローズし、GAPの原宿駅前店もそれに続き、フォーエバー21の撤退、破産へと繋がっていきます。
以前はオープンすれば大盛況、モールでも集客装置として歓迎されていたのも今は昔。一方、ZARAやユニクロ、GUは比較的堅調だったりもする。
その原因は何かと言えば、消費者の目が肥えたということに尽きるでしょう。
本当に買うべき価値があるのか?この値段でこの品質が妥当なのか?といった要素を細かく見るようになったし、感じられるようになった。堅調なブランドはそのあたりの管理が上手いんですね。
だからコスパが悪いと判断されたブランドや品質に満足できないブランドからは足が遠のき、お客さんが来ないからセールを連発しさらに印象が悪くなるというループにハマっていくわけです。GAPもタイムセール連発は控えた方がいいと思うのだけど。
もう「安かろう悪かろう」では通用しません。
ファストファッションでもそれなりのものを求められている。基準が上がったことに敏感なブランドは生き残り、そうでないブランドは落ちていく。二極化が進んでいると言えるでしょう。
2、フォーエバー21のクオリティは
良かったら破産してないだろというツッコミはお控えください。残念ながらファストファッションの中でも下位グループですね、オブラートに包みまくった表現でも。
僕は個人の方にコーディネートを提案したり、実際に買い物をアテンドする仕事もしていますが、ついぞフォーエバーをオススメすることはありませんでした。だって大人が着るもんじゃないもん。すみません自らオブラート破りました。
真面目な話、生地も縫製も褒めるべきところはありません。若者向けにファッション雑貨全般を拡張していたのは一定のニーズがあったと思いますが、メインのアパレルがあのクオリティではいずれ満足できない日が来る。だからフォーエバーしか着なかったという人は少なかったんじゃないかなと想像します。該当された方ごめんなさい。
そして、上陸当時からほとんど向上がなされていなかったのもポイントのひとつでしょう。あまりそこに関心がなかったのでしょうね。でもその間にライバル達は企業努力で品質アップに取り組んでいた。小さな差がいつしか越えられない壁になっていたというわけです。
またフォーエバーはトレンド一本槍でここまで来たブランドですが、もうデザイン面のトレンドだけでは太刀打ちできないということの証明にもなっています。
今はSNSの発達によってトレンドはあっという間に広がるし、どのブランドも同じようなものをスピーディーに出す。優位性が崩れてしまった以上、より質の良いものが選ばれるのは必然ですね。
そして、フォーエバーが破産するに至った決定的な理由がもうひとつあるのですが、、
3、サスティナブルという潮流に乗り遅れた
これがかなり大きかったと見ています。
ちなみにサスティナブルとは「持続可能な」と訳されることが多いですが、リサイクルや再生可能な素材→再利用が進んだエコな循環型社会を目指そうという考え方です。
2017年、こんなニュースが世界を騒がせました
H&Mは古着を回収したりエコに取り組む企業として打ち出していただけに、これは大きな批判を浴びました。ところが、そこからのH&Mの巻き返しが早かった。
サスティナブルな施策を次々と打ち出し、一気に業界の先導者的なポジションになっていったのです。今年はこんな事も始めました。
カジュアル衣料大手のH&Mは4月、オレンジの皮、パイナップルの葉、藻類バイオマスという、斬新な素材3種を使ったConscious Exclusive Collectionを発表した。Conscious、つまり意識や配慮があるこのコレクションは、廃棄された果物の再利用に加えて、リサイクルされたポリエステルを使うなど、全ての商品を環境にやさしい素材でつくっている。ーhttps://www.businessinsider.jp/post-189401 より引用
だってしょうがないじゃないか、と渡鬼のえなり君ばりに諦めるのではなく、急進的と思えるくらいにサスティナブルに舵を切った。これは他のブランドにも大きな影響を与えただけでなく、ファストファッションの顧客層にも啓蒙的な役割を果たしていると言えます。
今、消費者の関心は、商品そのもののクオリティだけでなく
誰の手によってどう作られているのか?
ブランドにどんなポリシーがあるのか?
社会にいい影響を与えるか?
というバックヤードにも及んでいます。
フォーエバーはそこに踏み込めずに進化できなかった。
その結果、クオリティでも理念でもアピール出来ず、”時代の徒花”というポジションになってしまったのです。
4、そこから学ぶべきことは
ファッションは時代を映す鏡などと言われますが、今後は「見た目だけでは評価されない」時代になっていくでしょう。
しっかりしたポリシーがあり社会やユーザーに配慮したシステムでなければ支持されないし、ウソがあったら簡単に見抜かれ拡散される。
ランバンで大成功を収め、最近ハイジュエラーのリシュモングループと新プロジェクトを立ち上げたデザイナーのアルベール・エルバスもこんなことを言っています。
現代における“ラグジュアリー”とは価格帯だけの問題ではない。手にしている製品や口にしている料理がどうやって作られたのか、その原材料は何か、それらがどこから来たのかを知ること。つまり倫理的であることがラグジュアリーだと思う。ー
https://www.wwdjapan.com/articles/970212 より引用
値段よりも、その背景や理念が大事になると言うことです。消費者はそこを見抜くと彼も考えています。
こう書くといかにも大手企業に向けたような感じになりますが、個人規模のビジネスだって同じようにそこが大事になっていく。
平たく言うと、ブランド物で固めてクラス感を演出するような手法は、もう通用しないということです。そもそもブランド物を持つ=みんなの憧れという図式がもう崩壊している。
それよりも、自分のポリシーを正しく表現できる装いや魅せ方、ポリシーに共感してくれる人を濃く集めるブランディングをしていく方が効果的だし、時代に合っています。必要以上のものは、要らない。
ちなみにフォーエバー21、北中米では営業継続を目指しているようですが、ここからの再建は並大抵のことではないでしょう。
これからは見せかけ口先だけの華やかさより、何を考え、何をしたいのか、何を伝えたいのかをしっかり魅せていくことが必要な時代になっていく。今個人にも企業にも、それを伝えているところです。
誰かの受け売りではなく自分の考えを自分の言葉で語り、表層的なトレンドではなく潮流を見誤らないこと。
”永遠”であるには並大抵の努力では足りない、と身をもって教えてくれたのかも知れません。
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