「ジェンダーレスな服」ってなに?
最近よく耳にするようになったジェンダーレスという言葉。ファッション界でもよく聞かれるようになりました。
そもそも言葉の意味からいくと、ジェンダーレスとは「男女の区別をなくす」ということになるそうです(解釈は色々あるかもしれませんが)。
学生服のトンボさんでも、いち早くそういった流れに対応していますね。
https://www.tombow.gr.jp/school/original/genderless/
男子制服、女子制服という呼称からやめて、好きなものを自由に選んでくださいということですね。
先行して、商業施設でのジェンダーレス制服採用も増えてきました
ちなみに篠原さんは今や国が認めるデザイナー。ぐふふシノハラですぅ♪の時代を知っている世代としては隔世の感がありますね。わたしはウルトラリラックス。
似たような言葉に「ユニセックス」という言葉がありますが、主にユニセックスはアパレルで使われる用語であって、ジェンダーレスはより上位の概念。ジェンダーレスという表現がメジャー化したことによって置き換わったものと思われます。
では、具体的にジェンダーレスな服ってどんなものなのでしょうか?
ジェンダーレスな服、とは
ユニセックスな服を「男女どちらが着てもおかしくない」とするなら、ジェンダーレスな服は「男女どちらが着ても素敵に見える」というレベルにアップグレードされているのではないかな、と。
もう少し掘り下げると、ジェンダーレス=無個性ではなく、性差をフラットにした上でその人の持つ本来の個性を引き出す服だと思っています。無個性というのはユニセックス時代の考え方でしょう。
男性だからカッコ良く、女性だから可愛く、という概念を外して、着た人の魅力だけで勝負できる、魅力が伝わってくる服というのか。その人の中性的な面が見えてくるという発見もあるかも知れない。
ゆえに、性別に依る服を作るよりジェンダーレスな服を作る方が難しいと思う。どちらが着ても素敵に見える絶妙なデザインを形にしないといけないわけだから。単にシンプルな色とデザインにしました=ジェンダーレス!というのは表面的な理解です。
男性だから、女性だから、では括れない好み
男性でも、ゴツゴツしたいかにも漢(この場合”おとこ”と読む)な格好が苦手という人は多いし、女性だからピンクとかフリフリなデザイン好きでしょと言われるのは納得できないという人もいるでしょう。
僕はまさに前者で、北斗の拳みたいな痛そうな革ジャンより薄くてしなやかな革のブルゾンが好きだし、フードのついたかわいいロングコートとかも好きです。ただ割としっかりしたボディなので、もし華奢だったらもっとウィメンズを選んでいたかも知れません。逆に顔がもっと凛々しい感じだったら痛そうな革ジャンが似合ったのかな。
これはもう好みというか、感覚の問題なので説明は出来ません。和食が好きな人もイタリアンが好きな人もいるよね、みたいな感じ。その折衷で満足できる料理を作れと言われたら確実に難しいわけで、ジェンダーレスな服というのはそういう微妙なバランスの上に成り立っていると思うわけです。
そういう意味で、僕がよくウィメンズも見に行くのはCOSというブランド。
COSはH&Mグループの最上位クラスのブランドという位置付けで、値段はファストファッションとは言えませんが品質もファストファッションのそれではなく。大人も満足のクオリティだと思っています。
ちなみに前出のロングコートもCOSで買ったのだけど、僕が試着した途端に周りで見てた人たちも続々と試着し出すという謎の現象にちょっと笑ってしまった。物珍しかったのかな?
COSは男女アイテムは分かれているものの、サイズも多様でシンプルかつ綺麗なラインのアイテムが多いのでジェンダーレスなブランドと言えるのではないかと。僕はウィメンズのLでちょうど良い。Tシャツやコートなどは特に良い感じです。普段のTシャツはほぼCOSだし。2,500円は安過ぎます。
ただ、ちょっと待ってほしい
ここからは私見ですが、イデオロギー的なものとファッションとしてのジェンダーレスは出来るだけ切り離すべきではないのか、と思っていて。
なぜなら、ジェンダーレスなアイテムが好きな人が必ずしもクィア(性的マイノリティーや既存の性のカテゴリーに当てはまらない人)ではないからです。
僕もまさにそう。ただ自分が着たい、似合うと思うから選んでいるだけで。ジェンダーレスな服がイデオロギーと結びつき過ぎると、理念が強く出すぎたりそこを選ぶ人をまた選ぶことになる。それは広がっていく上で勿体ないのではないかと思うのです。
スタイリストがこういうことを言うと身も蓋もないかも知れませんが、個人的にはデザインや品質だけが評価の対象なのです。
オーガニック素材だろうがサスティナビリティ認証を取っていようが、プロダクトがダメだったら0点。着て素敵じゃなければ、着心地が悪ければ評価に値しない。
ブランドの背景やコンセプト・想いも大事ですが、それはプロダクトの完成度を上回るものにはなりえない。良いプロダクトがあってこそ、その理念も伝わり受け入れられていくのが正しい姿。ところが得てしてコンセプトが素晴らしいんだから、理念が正しんだからそっちを評価しろ、と印籠のように出してくるブランドが出てくる。えーまず商品をじっくり見てみようか?と思うわけです。
思いを込めたオーガニック料理も不味かったらお金を払って食べるに値しません。僕はジェンダーレス服にはそうなってほしくない。あくまでデザインの新たな可能性として、性差を選ばず素敵に見える服の追求として発展していってほしいなと個人的には願っています。
選択肢のひとつとしての「ジェンダーレス」
男性には男性ならではの、女性には女性ならではの良さや見せ方というのは普遍的な価値として存在していくと思っていますが、好きなものを着るという自由、その選択肢が増えたというのは純粋に喜ぶべきことです。
僕も仕事でキリッと成分強めな方がいいときはそういうスタイルを、ゆるっとふわっとでいいときはそんなスタイルを、という感じで使い分けています。自由業ということもありますが、選択肢や自由度は格段に増したと感じている。社会全体がそういうのを「いろんなスタイルがあっていいじゃん!」と流す雰囲気になってきたというか。
もちろんクィアとしてジェンダーレスを選ぶ人もいていいし、そうではないけど服の好みとして選ぶという人もいていい。どちらも認め合える、服の好みとしては同好の士であえたらいいなと思っています。
ちなみに、こう書くとどんなスタイルなんだと思うかも知れませんが、渋谷センター街にいたセーラー服おじさんみたいな系統ではありませんのであしからず。まごうことなき一般成人男性でございます。
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オーダーメイドスタイリスト 神崎裕介
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