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【東京島酒『嶋自慢』の飲俗學<3>】 東京島酒が地理的表示(GI)に指定さる!

農林水産省指定のGIマーク

前回<2>の末尾に、「次回は蔵元である株式会社宮原と新島酒蒸留所の”Once upon a time”を紐解いてみる。」と書いたのだが…….

トピックスが飛び込んできた。

■本稿制作中に吉報届く! 伊豆諸島の島酒が地理的表示に指定。

2024(令和6)年3月 13日、国税庁長官より、「東京島酒」が地理的表示(GI)に指定されたことが発表された。まさに吉報である。

焼酎そのものがGI指定になるのは、2005(平成17)年以来18年ぶり。日本では「壱岐焼酎」「球磨焼酎」「薩摩焼酎」「琉球泡盛」に次いで、「東京島酒」が5件目となった。

■まずもって、「地理的表示(GI)」とは何か?

農林水産省のサイトにはこう書かれている。

「地理的表示保護制度」は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。

ビジネスにおいては、その地域ならではの要因と結び付いた品質、製法、評判、ものがたりといった、産品の強みや魅力が見える化され、国による登録やGIマークと相まって、効果的・効率的なアピール、取引における説明や証明、需要者の信頼の獲得を容易にするツールになります。

農林水産省は、本制度によって、国内外における模倣品対策によりGI産品の名称・ブランドを保護するとともに、GIマークという統一ロゴの下、成功事例の横展開、市場展開を通じ、GIそのものの認知を高め、「GIブランド」を確立してまいります。

農林水産省「地理的表示(GI)保護制度」

固有の産地、原料、製法、歴史、社会的評価を有する産品を、地域の知的財産として保護する制度で、『東京島酒』の名のもとにブランドとして認められたということ。

世界に対して堂々と「東京島酒」としてアピール出来る、そんな”葵の御紋の印籠”が手にできたわけである。

島さん、酒さん、懲らしめておやりなさい。

■株式会社宮原/新島酒蒸留所のGI対象商品とは?

本稿の主人公、株式会社宮原/新島酒蒸留所のラインナップの中で、GIの対象となる商品はどれか。

その前に、まず「東京島酒」として指定された条件を東京七島酒造組合のページから抜粋し引用してみる。詳細は当該ページをご参照。

(1)酒類の特性について
 「麦こうじを使用した芋焼酎」
 「麦こうじを使用した麦焼酎」
 「麦こうじを使用した芋・麦のブレンド焼酎」

(1)原料
◆ 芋類に国内で収穫されたさつまいものみを用いたものであること。
◆ こうじに麦のみを用いたものであること。
◆ 水に伊豆諸島の島内で採水した水のみを用いたものであること。

(2)製法
◆ 伊豆諸島の島内で発酵、蒸留及び貯蔵が行われていること。
◆ 原酒及び製品の貯蔵は常温で行うこと。
◆ 麦又は芋類、こうじ及び水を原料として発酵させたもろみを、単式蒸留機をもって蒸留したもの及びそれらを混和したものであること。
◆ 消費者に引き渡すことを予定した容器に伊豆諸島の島内で詰めること。

東京七島酒造組合「地理的表示(GI)「東京島酒」が指定されました」

この条件に合致する新島酒蒸留所のアイテムとして、下記が該当する。

1.『嶋自慢』 原料:麦、麦麹

2.『嶋自慢 樫樽貯蔵』 原料:麦、麦麹

3.『羽伏浦』 原料:麦、麦麹

4.『嶋自慢 芋』 原料:芋(ベニハルカ)、麦麹

5.『七福嶋自慢』 原料:芋(あめりか芋)、麦麹

■新島酒蒸留所で最もGIを体現するアイテムとは?

これら5製品ついては、どれも地理的表示の指定条件に合っているもので、GIマークの表示が可能である。

”地理的”という点にさらに拘るなら、他島のアイテムにはない”新島ならではの特殊性や希少性”を有するものとして、上記の『七福嶋自慢』がGIを体現する最たる存在と言っていいのではなかろうか。

サツマイモの品種としては旧農商務省、現在の農林水産省が登録したのが、1900(明治33)年と日本では3番目に古いもの。かつて大正末から昭和にかけて新島のみならず各地で栽培され、日本の食生活を支えた品種でありながら、現在では国内でも新島と他県でごく僅かしか見られない。そんな稀少な芋、「七福薯(あめりか芋)」を原料に使った焼酎なのである。

『七福嶋自慢』を含めた各アイテムについては、後の稿で詳細をご紹介したいと思う。


とにもかくにも、『東京島酒』の地理的表示(GI)指定、本当におめでとうございました!

ということで、次回は蔵元である株式会社宮原と新島酒蒸留所の”Once upon a time”を紐解いてみる。

<4>に続く



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