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素敵な靴は、素敵な場所へ連れていってくれる。29

 すると、南村は、理解したのか、そうだったのと言って、少し落ち着いた様子だった。
 有美は、少し、南村のその態度の変化に驚きつつ、
「大津部長と、南村さんって、親しいんですか・・・・。」
 と聞いてみた、彼女が、「あいつ」と言ったことも、少し気になった。
 南村は、少しためらったような、顔をすると、視線を外すようにして、
「別に隠す事でもないからね、私、彼と少しの間、付き合っていたのよ・・・」

 今度は、有美の方が、驚いた、たしか、大津は既婚者だったように聞いていたからだ。
「ちょうど、彼が離婚した直後くらいかな、私と彼ちょうど入社が二年ちがうのだけど、そのころ、なんとなく、気が合って付き合いはじめたの。
彼も離婚した直後だったし、寂しかったのかもしれないわね。」
「大津さんって、離婚してるんですね、今どうなんですか?」
「まだ、再婚はしてないでしょ、この前もそう言っていたし。」
「別れても、二人だけで、会ってるんですか?」
「たまにね、春から同じ部署になったし、それに上司と部下だし、私あんまり、前にどうだったかなんて気にしないし、食事くらい誘われれば、そんな無碍な事はしないわ・。」
 さっぱりとした性格の、南村にとっては、そんな些細な事は気にもならないのだろうと、有美には思えた。
 

 そこまで、話すと南村は顔を有美の方に向けて、
「そうそう、あなたの質問にこたえないとね・・・・・・。」と、思い出したようにそう言うと。
「彼がどんな人かって、というとね、人間的には誠実だし、仕事は出来るし、判断は早いし、適格だし、配慮はあるし、第一、すごくやさしいし・・・」 
 
 そこまでで、少し言葉を切ったあと、
「けど、どうだろう?・・男としては、少し物足らないし、いい意味での強引さの様な感じはしないし、少し野性味にかけるかも。」
南村は、少し溜息まじりに、そういうと、
「人としては最高、男としては最低ってことですか?」
有美が不思議そうに、南村へそう呟くと、、南村は少し笑って、
「・・・・・ふふっ、まあ簡単に言えばそうかもしれないけど、まあ、彼は彼でいい所もあるんだしね、そこは人によって好き好きね」
 少しだけ、大津を庇うような事を言った。


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今宵も最後までお読みいただきありがとうございました。

物語は、これから少し複雑な展開を迎えます。

お楽しみに


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