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女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存 37

 芝居が跳ねると、誰かが予約した銀座の天ぷら屋で食事をした、理佐はこういう、女性だけの姦しい集まりがあまり好きではない、どちらかというと一人を好む理佐ではあったが、長らくあってない友人もいたので、そこは少し我慢して付き合った。その天ぷら屋は、目の前で上げてくれる店だった、けれども初めのうちは感嘆の声を上げていた、彼女たちも、徐々に自分たちのおしゃべりに夢中になっていく。理佐は、適当に周りに合わせながらも、今度ここへ、娘たちを連れてきてやろうと思った。
 

皆それぞれ、都合があるので、一人二人と抜けていく、ほとんどの人はおしゃべりに夢中でそれに気づかない、デザートが出るころ理佐も隣席の友人に、断って退席した、気が付くと、友里恵もいなくなっていた。
店を出ると、ふぅと大きく息を吐いて少し深呼吸した、食べ過ぎたのか、帯がきつい。
けれど長らく無沙汰の友人もいたので、それはそれで理佐には楽しかった。
時計を見ると、まだ4時過ぎだった、だんだんと着物も苦しくなってきたので早く帰って脱ぎたいと思っていたが、せっかく着たのに少し惜しいような気もする。
 

由香は、今日は実験で遅くなると言っていたし、帰宅するには少し早い時間だった、理佐は、ふとあの絵の事を思い出した、今日これから見に行こうと思った、着物を着ていて歩きにくいし、目立つけど、また都心に改めて出かけるよりはいい、なによりあの晩夏の湘南の海岸以来ずっと心の中に閊えていたことだった。
今日の集まりがそうであったように、古い友人に会うような、そんな気がした。そう決めると、いてもたってもいられなくなり、中央通でタクシーを拾う、来た時と同じように帯を気にして、用心深くタクシーへ乗り込む、少し道が混んでいたけれど、十分くらいで、前の職場のビルについた。


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今夜も、最後までお読みいただきありがとうございました。

理佐は、どんなふうに、自分に決着をつけるのか・・・・・

あの絵は理佐に何を語りかけるのか・・・

もう少し、お付き合いください。

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