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素敵な靴は、素敵な場所へ連れていってくれる。 15

 終業近くになると、依田はいつも近くの社員を呼びつけ、二三件ほど指示を出した後、ピッタリ定刻に、大仰に有美たちに、お先にと言って悠然と出ていく。
依田の帰り際、有美はいつも、ちらっと、彼のその造作の薄い顔立ちを見るたびに、何か汚いものでも見るような視線を投げかけるようになった。
有美が帰り支度をしていると、紗季がやってきて、
「今日、行くよっ・」とポンと有美の肩をたたいて、部屋を出っていった、
「えっ?なに?」と問いかける間もなく、紗季の姿は出口の方に消えてしまった、有美はわけがわからないまま、紗季の雰囲気に圧倒されるがごとく、あわてて支度をすると後を追うように、お先とほかの人たちに声をかけ、あわてて席を立った。 
 

 急いでエレベーターに乗り、下まで降りると、ロビーの端の方で、スマホを見ている紗季が立っていた。
「ごめん、なんだった?どこいくって?」少し息を弾ませて有美が言うと、
「ほら、前に言ったじゃん、美味しいとこみつけたって・・・」
そう言えば、以前紗季がそんな事を言っていたことを思い出す、確かあの時は、気が乗らずに断ったことも思い出した。
 有美には、紗季の誘いが、最近の有美と依田の関係がうまくいっていないことを見透かして、有美に気を使ってくれていることが、すぐに分かった。
 

  有美が、少し躊躇したようなそぶりを見せると、まるでそれを見透かしたように、紗季が「ほら、グズグズしないで、いくよっ・・・・」
 有美の返事を、待たずして紗季は先に、どんどん歩きだした。
「ちょっと、まってよ・・・」と有美が言うと、紗季が笑顔で振り返りざま
「ちゃんと、ついいておいでよ・・・」と笑顔で有美に言った。


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今宵も、最後までお読みいただきありがとうございました。


今回は、話の関係上少し短くなっています。

この物語は、もう完成しているのですが、現在全面校正をかけています。


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