四季と酒03:外出自粛でも春を祝う 「桜香る昆布締め」
あっというまにソメイヨシノも葉桜に変わり、そろそろ八重桜のシーズンに入ってきますね。とはいえ外出自粛のいまはお花見なんてできず……。せめて春らしさを味わおうと、桜餅でおなじみ「桜葉の塩漬け」を挟んで昆布締めをつくったら驚愕のおいしさでした。魚を昆布と葉っぱで挟んで寝かせるだけで上等な一品。春のうちにお試しを!
材料
刺身用の白身魚:柵で15cmほど ※今回はスズキを使用
昆布:柵が覆えるほどの大きさのもの2枚
桜葉の塩漬け:2枚
お好みの塩:適量(もしくは白醤油)
作り方
1:昆布を濡らしたふきんで拭き、刺身を挟めるくらいの柔らかさにします。
2:昆布の上に桜葉を敷き、柵を乗せます。さらに桜葉・昆布でサンドイッチするように挟み、ピッチリとラップでくるんで冷蔵庫で寝かせます。
半日寝かせればふわっと香るくらい、一晩寝かせればより昆布と桜の風味がついて身も締まります。昆布で締めているとはいえ3日くらいで食べきってください。3日目ともなれば身がねっちりして珍味感アップ。またそれもまたおいしいんですよ……。
いっぱい食べたいからでかい柵でつくるで!というときは、昆布や桜の葉を適宜増やしてください。
3:食べやすい大きさに削ぎ切りにし、お好みの塩か白醤油をまぶして完成。
塩か、もしくは味わいの淡白な白醤油が合います。「桜の花の塩漬け」を使えばさらに桜度アップ。
画像は桜の花の塩漬けを刻んで、ほんの少しの米油と一緒に和えました。
相性のいいお酒
これはもう日本酒一択です。
1日目は「萩の鶴 純吟別仕込生原酒 桜猫ラベル」をキュンと冷やして。2日目は「八海山 本醸造 普通酒」をぬる燗で楽しみました。おいしすぎて写真を撮る暇も忘れて飲み食いしてしまった……。
昆布締めが繊細な味になるのでそれを殺さないものが◎。精米歩合が70%を超えてくるとお酒が勝ってきてしまうかな〜と思います。
ちょっとしたコツ
めっちゃ簡単なのでコツもなにもないんですが……。強いていうなら、白身魚の昆布締めに使うには風味と粘り気が強すぎるので、羅臼昆布はおすすめしません。
わたしは、以前お手頃価格で買えた日高昆布を使ってます。あんまり硬くすぎず魚をはさみやすい、ふつーの昆布で十分です。挟むだけで勝手においしくできあがるので、刺身用の柵が安かったらどかんと1本買って3日くらいかけて食べたりします。毎日生魚のある生活……最高……。
あとは桜の香りを消さないために、大豆の風味が強い醤油は使わないことくらいでしょうか。
あまった桜葉をどうしようかと悩む人もいるかもしれませんが、肉を挟んでもおいしいんですよ……。
これは酒粕と塩麹を1:1で練ったタレに豚肩ロースを3日漬け込み(というか単に食べる暇がなかった)、さらに桜葉で一晩挟んだやつを焼き上げたもの。麹の甘い風味と桜の香りが肉に染みてとっても美味でした。
四季と酒の小話
ここ3週間ほど、ほとんど家から出ない生活を送っている。
外に出るのはスーパーでの買い物程度で、半日陰の自宅にこもりっぱなし。そして、とめどなく流れてくる新型コロナウイルス関連の情報を拾い集めては情報の正確さを吟味することに意識は埋没……。
さすがに辛抱たまらず、ある日の午後、無目的に近所を歩いてみた。
見上げると、ソメイヨシノが葉桜へと変わっているところだった。ぽかぽかの陽光をためこんだパステルブルーの青空に、盛りの過ぎた薄紅色が美しかった。
わたしがiPhoneの小さな画面に目線を落とし続けていたあいだ、春はしっかり頭上で咲いていたのだった。
今年は満開の桜を愛でることができなかった。こんな情勢だけど、それでもやっぱり春はいいもんなのだ。せめて食卓から、何度でも春を味わおう。桜葉の甘苦い香りは、いままで春が来るたびに感じていた言祝ぐような気持ちを思い出させてくれる。
こんな情勢だけど、それでもやっぱり、春はいいもんなのだ。
編集したり書いたりお酒に合う料理をつくったりしています。
あだ名はおかんです。
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編集者/ライター/料理人 ヒラヤマヤスコ(おかん)
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