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グルテンフリーだとビールは飲めない?(2/3)

こんにちは。

前回は、ビールにはグルテンが入っていること、その量は最大で645ppmと見積もられていること、などを説明しました。セリアック病でグルテンフリー食を指示されている人や、小麦アレルギーで大麦にも交叉耐性がある人でない限り、通常のグルテンフリー生活で、少しビールを飲むくらいなら、問題ないというのがわたしの意見です。
でも、どうしてもグルテンを摂りたくない、でもビールは飲みたい、という人のために、グルテンフリービールというのがあります。

グルテンフリービールって、なに?

海外では、グルテンフリービールが売られています。でも、日本にはありません。そもそも、グルテンフリービールって、どんなものなのでしょうか。
グルテンフリービールには、大きく分けて2種類あります。一つはもともとグルテンが入っているビールからグルテンを除去したもの、もう一つはグルテンが含まない材料から作ったものです。それぞれ見ていきましょう。

ビール飲み比べ

グルテンを除去したビール

通常ビールは、大麦麦芽、ホップ、副原料となるでん粉(米、コーンスターチなど)から作ります。またホワイトビールは、小麦麦芽を使います。大麦と小麦には、グルテンが含まれますので、ふつうのビールには、グルテンが含まれています。

グルテンはたんぱく質なので、たんぱく質分解酵素で分解することができます。製造過程でグルテンを分解することで、グルテンの濃度を20ppm未満にしたものが、グルテンを除去したビールです。

グルテンを含まない原材料から作ったビール

グルテンを含まない原材料って、なんでしょうか。次のようなものがあります。
・ソルガム:モロコシ、タカキビ、コーリャンとも呼ばれる、イネ科の植物。
・キビ:イネ科の植物。
・ヒエ:イネ科の植物。
・アワ:イネ科の植物
・キヌア:ヒユ科の植物
・ダイズ
・エンドウマメ
・米
・ソバ
・トウモロコシ
海外では、キビ、ヒエ、アワをまとめてMillet(雑穀)と表記してある場合と、キビのことをMilletという場合があるようなので、具体的にどの種類の穀物を使っているのか、わからない場合もあります。これらはもともとグルテンが入っていないので、出来上がった製品は間違いなくグルテンフリーです。海外ではこのタイプのビールの生産が増えており、そのための研究も盛んに行われています¹⁾。

ソルガムキヌアアワ

ところで、これらがビールかどうかということですが、日本の酒税法上はビールではありません。ですので、日本ではこれらの製品を「グルテンフリービール」という名前で販売することはできません。

グルテン除去ビールはグルテンフリーではなくなった?!

ところで、グルテンフリービールの一つとして紹介したグルテン除去ビールですが、アメリカではグルテンフリーとは名乗ることができなくなりました。

ビールに含まれているグルテンを、たんぱく質分解酵素で分解・除去したのが、グルテン除去ビールです。ただ、本当にグルテンが分解されたのか確認が難しいため、アメリカでは10月13日以降、「グルテンフリーという表示はしてはいけない」ということになりました。整理すると、

①ビールに含まれる分解されたグルテンの濃度を、正確に測定する方法がない
②食品に含まれているグルテン濃度が20ppm未満なら、グルテンフリーと表示することができる。
③20ppm未満であることを証明する方法がないので、グルテンフリーと表示してはいけない。。

ということなのです。

また、グルテン除去ビールの中に、一部のセリアック病の患者さんに対して、自己免疫反応を引き起こす可能性があることが明らかになりました²⁾。さらにグルテン除去ビールは同じ方法で製造しても、製造ロットによって残存するグルテン量にばらつきが生じることもわかっています³⁾。

グルテンフリービール

グルテンフリー(Fluten-free)という表示は、「セリアック病の人が摂取しても安全」であることを示すものです。グルテン除去ビールについては、グルテンの濃度は下がっているものの、安全であることを保障できないので、一律にグルテンフリーの表示はできなくなりました。しかし、Gluten-removed (グルテン除去)または Gluten-reduced (減グルテン)という表示は認められています。このタイプのビールは、ふつうのビールと比べると、グルテンの濃度は低いはずです。ですから、セリアック病で、医師から厳格なグルテンフリー食を指示されている人でなければ、グルテンの摂取量を少なくする目的で飲むのはアリだと考えます。

グルテンフリービールについてのお話、いかがでしたか。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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次回は、グルテンフリー生活では、どんなお酒をチョイスしたらよいのかについて、ご紹介したいと思います。

参考文献
1) 溝口正晴ほか、新解説 グルテンフリー穀物による麦芽とビール醸造(2) New Food Indust., 61 (7) 1-8 (2019)
2) Laura K Allred et. al., The Celiac Patient Antibody Response to Conventional and Gluten-Removed Beer, J AOAC Int, 100 (2) 485-491 (2017)
3) Katherine L Fiedler et. al., Detection of gluten in a pilot-scale barley-based beer produced with and without a prolyl endopeptidase enzyme, Food Addit Contam Part A Chem Anal Control Expo Risk Assess, 36 (8) 1151-1162 (2019)

まとめ

・グルテン除去ビールは、ふつうのビールに含まれているグルテンを分解・除去したもの。グルテンフリー(グルテン濃度が20ppm未満)でない場合がある。
・グルテンを含まない原材料から作るビールは、正真正銘のグルテンフリー。ただし国によってはビールとは呼べない。
・グルテン除去ビールは、アメリカではグルテンフリーと表示できなくなったが、ふつうのビールと比べるとグルテンの濃度は低い。


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