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20240411 豊岡市旧本庁舎のロビー、てしごとの生地は翻る

自分の団体で参加することは叶っていないものの、ありがたいことにお手伝いする機会を頂いて連れていってもらっているのが豊岡演劇祭である。コロナ禍の只中にあった2020年にCigarsの藤谷みきさんにお声掛けいただいてはじめてお手伝いに伺い、昨年(2023年)もy/nさんのお手伝いで豊岡へ足を運ぶことができた。

▼あるとき利賀村のサマーシーズンでなんの前触れもなく鈴木忠志さんが「平田の青年団も豊岡に移ることになったようだし…」とぽろっとこぼしたのを聞いて「えっ!!?」と驚き、その後すぐに青年団の公式からアナウンスがあって青年団が豊岡へ移転するというのを知った。目黒区駒場東大前の劇団・劇場が東京を離れて関西へ行ってしまうということのインパクトはかなり大きかった。それから今年のアゴラ劇場の閉館まで、思えばあっという間だった。

風雲オリザ城こと芸術文化観光専門職大学
y/nのお二人と。

▼豊岡演劇祭のみならず、y/nさんのKIACでの滞在製作にくっついていく機会もいただいたりしたおかげでここ数年で何度か豊岡、城崎を訪れる機会があったのは幸運なことだった。御所の湯を堪能し、年々破竹の勢いで拡大していく演劇祭の勢いも感じることができ、Q市原佐都子さんの『バッコスの信女-ホルスタインの雌』(2021年)の当日券チャレンジに挑戦してマジでギリギリで観劇できたのも楽しい思い出である。

▼私にとって豊岡演劇祭といえば忘れられない出会いがある。豊岡稽古堂 市民ギャラリーで上演されていた奥野衆英さんの『BLANC DE BLANC -白の中の白-』という作品だった。
https://twitter.com/1st_x_ep/status/1703035334198718948?t=RH5Dt3DkXk28T0Gq_YLQVw&s=19
「撃ち抜かれる」とはおそらくああいうことで、奥野さんの一挙手一投足、頭から指先までひとつひとつの動きのディテールと密度感にうっとりとしてしまった。もともと昨夏利賀村に滞在していた折、とある舞台スタッフの方から「もし今年豊岡へ行かれるなら奥野さんの作品をぜひご覧になるとよいかと…」と勧めていただいていたのがきっかけだったのだが、自分自身の憧れる濃密な身体表現、神が宿る細部、時間と空間が美しく歪んでいく感覚が60分の中にはっきりとあった。ヨーロッパの街並みの建築を思わせるクラシックで、ものすごく上質な時間だった。

豊岡稽古堂のロビーに設えられた舞台セット
舞台セット
当日パンフレット

▼終演後、「うわぁ、すごい、すごい!」と興奮しながら制作の方と話し込んで詳しく作品のこと、奥野さんのことを聞いてもっともっと作品のこともアーティスト自身のことも好きになって、ファンになってしまった。演劇祭が終わってからも奥野さん自身が作品のことはもちろんフェスティバルに参加してみて動員のことについて率直に問題提起をされていたりするのを拝見して、「演劇祭のお客さんはどこにいるんだろう?」「魅力的な演劇祭とは一体なんだろう?」ということについて考えを深めるきっかけももらうことができた。

▼演劇祭終了後、とある日本の俳優さんが豊岡演劇祭の運営について悪口を書き散らしてSNS上で悪態をついて暴れまわっておられるのを横目でそっと見ながら、奥野さんの制作の方たちと一緒に豊岡演劇祭の素敵だったところをXの「#豊岡に行って良かったこと言いたい」というタグでひとつひとつ言葉にしていったのも忘れがたい思い出だったりする。

Jordane Tumarinson-Aime
https://open.spotify.com/track/7CKURRTo875X3MPD5dSWwm?si=a8bb9d0b23234d87

▼豊岡から帰ってきてからも、この曲を聞くたびに豊岡稽古堂で見たワンシーンが鮮やかに脳内に蘇っていた。奥野さんたちのインスタをフォローしたことで、私のInstagramにパリの風が吹くようになった。大好きな作品、素敵な人たちと出会うことができた。人が好きだという気持ちで、私の生活はすこし豊かになった。そういう出会いが一つでも多く生まれるのなら、課題は多くても演劇祭ってやっぱり素敵だよなと、そう思わせてくれる豊岡演劇祭なのだった。

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