20240227 みっともない話
みっともない話だけれど、自分の中で一度言葉にしておいた方がいいと思ったので書いておこうと思う。自分が演劇をやっているということに対して、誰にともなく申し訳ないことだと思っている節がある。才能がないし、つまらないし、大したものもつくれないのに演劇なんかやっていて申し訳ないというようなことを、思っている。罪悪感を感じているという感じにも近い。
▼なにかものをつくろうとする時には無敵の状態とよわよわの状態が交互にやってきて心の浮き沈みがそれなりに大きくなる。つくっている時には「絶対におもしろい」と思って創作を進めているし、わざわざつまらないものをつくっているつもりもないのだけれど、作品についてネガティブな感想を目にしたりすると「生きていて本当にすみません」という、どうしようもない自己嫌悪を感じることがままある。
▼ものをつくる人間として腰が座っていないといえばその通りで、そんなことではアーティストとして全然ダメだろ、というのも頭ではわかるのだがとっさに凹んで自己嫌悪を感じてしまうので如何ともしがたい。初めて会う人に「あなたの作品を見たことがありますよ」と言われたりすると「ありがとうございます」とかよりも先に「すみません、大それたことをしてすみません!」という謝罪が口を衝いて出てしまう。申し訳なさが音速でやってくるのである。
▼自分でも「なんでこういう風に感じるのだろう?」とふと考えてみた時に、昔参加したコンクールで大コケしたことがトラウマになっているのではないかと思い当たった。劇団を立ち上げたばかりで稽古の仕方も定まっておらず、私が準備不足で俳優たちにも無理なつくり方を強いてしまったために稽古の最中から揉めに揉め、二転三転して何がおもしろいのかわからないまま本戦を迎えて大コケしたのである。6団体出場した中で私たち以外の5団体には賞が与えられて、舞台上で受賞者の人たちが集まってライトの中で記念撮影をしているのを、私たちだけが暗い客席から見ていたのを今でもよく覚えている。
▼全部自分が悪いのだが、そのコンクールの結果を受けて「おもしろくない演劇をつくる人たち」というレッテルがぺったりと貼られてしまって、それを剥がす術も全然わからないという気持ちだった。だから申し訳ないというのは第一に一緒に演劇をやってくれる人たちに申し訳ないという気持ちだった。自分に才覚がないばっかりに、つまらない演劇の大事故に巻き込んでしまって本当に申し訳ないという気持ちがまずあった。そしてもう一つ最悪なことには、私はそのコンクールの審査員を務められていた方にものすごく憧れていたのだった。
▼演劇についての書籍も出されていてSNSでも頻繁に見かけ、その方が地方で演劇についての講座をもたれた時には自分が従事している演劇のことをよく知ってもらおうという気持ちで自分の母親にも勧めて受講してもらったりしていた。その憧れの人の前で、自分はつまらないものを見せてしまって大コケしたのだ、という取り返しのつかない事実が何よりも苦しかった。消えてなくなってしまいたかった。つまらない演劇しかつくれないくせに、その人に認められて第一線で活躍するような劇団になりたいと大それたことを願っていた自分があまりにも恥ずかしくて、耐えられなかった。
▼そんな経験をしてもなお、今でも演劇を続けているのは単に演劇が好きだからということに加えて、本質的に鈍感なのと、ありがたいことにこんな自分にも「頑張って」と言ってくれる方々が現にいてその方達に温かく支えてもらいながら、演劇を通じて叶えたい夢を見つけたからではある。誰かに認められたいという不確かな気持ちは今でもあるし、各種助成金やレジデントや演劇祭に応募したりして落選したりするとそれだけで「やっぱり才能ないのかな…」「私はそっち側ではないんだな…」とみっともなく落ち込んだりもする。でも評価の軸が他人にあるままだと永遠に地獄を彷徨うことになりそうだと、ようやく最近気がつき始めてきたような気がする(自己啓発とかではなくて)。それよりも自分自身と真摯に向き合うことの方がよほどたしかなことだと、教えてくれたのは自分の身体なのだと思う。
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