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20240510 心の中に、どどーん!!

photo by Eri Iwata

「この人と出会ったことで、もうこの人と出会う前には戻れないほどに深く影響を受けてしまった」というような人や作品というものが、誰しも一つや二つはあるものかなと思う。私、そして私たちの劇団にとってその一つが、他ならぬひげ太夫さんである。

▼ひげ太夫さんに出会ったのはコロナ禍の只中の2021年のことだった。感染症の影響で思うように公演を行うことができなくなったこと、その中断によって劇場を通じた世代間の表現の継承が途切れてしまうのではないかということを考えて、難しい状況下ではあったものの私たちに考えうる理想的な観客席をつくろうと思って開催したのがAudi-toriumというイベントだった。

▼イベントは1日がかり、朝の部と夜の部の二部制で、朝の部のヘッドライナーを飾ってくれたのがひげ太夫さんだった。そうしてヘッドライナーたりうるだけの風格とエネルギーが、ひげ太夫さんには迸っていた。

▼私たち平泳ぎ本店はたまたま男性だけのカンパニーなのだけれど、ひげ太夫さんは女性だけのカンパニーである。それでいて稽古場で初めて通し稽古を見て度肝を抜かれるほどにこれでもか!と身体を使いまくるのだった。物語の中に出てくるおおよそすべてのものは身体で表現される。バイクも、雲も、木々も花々も、船も川もすべて人の体によって次々と表現されていく。

▼そうして次々と身体であらゆるものを表現していきながら、ここぞというタイミングでは「どどーん!!」という決め台詞とともに、「ん、これはなんなんだろう…?」と頭で考え始めるよりも先に目の前の絵面の力強さと出し物師の皆さんのエネルギーとが渾然となって客席の私の鳩尾にまで響いてくるのだった。

▼稽古場で初めて通しを拝見したとき、したたかに感動しながら「ああ、出会ってしまった」と思った。私(たち)の創作の選択肢の中に一つ「ひげ太夫さんだったらどうする…?」という可能性がかなり濃いめの文字で記されてしまった。創作の中で苦しい瞬間というのは何度でも訪れる。シーンを組み立てていこうにもどうやったらいいのかわからない、打開策が見つからない。そんな時に私たちの心の中にひげ太夫さんが「どどーん!!」と現れ、「全部からだでやったらいいじゃない…」と、進むべき道のりを教えてくれるのだった。

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】
https://hiraoyogihonten.com/2024/02/24/hiraoyogi8th_info/

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