かっみぃ

サンフランシスコ在住の漫画編集者。よみものや実用書の編集も。アメリカで日々感じたことの…

かっみぃ

サンフランシスコ在住の漫画編集者。よみものや実用書の編集も。アメリカで日々感じたことのほか、こちらの出版事情も綴れたらと思っています。

マガジン

最近の記事

ほんとうの自分 ー最近の読書から

最近立て続けに「子どもの頃の自分に読ませたい」と思う、素晴らしい本を手に取る機会がありました。長らくそっとしていた(放っておいた…ともいう)noteですが久しぶりに、その一冊の感想を記してみたいと思います。 シャロン・M・ドレイパー作、横山和江訳『キャラメル色のわたし』(鈴木出版) 黒人のパパ、白人のママを親に持つ11歳のイザベラ。離婚した両親が「共同親権」を保有するため、週替わりで双方を行き来する生活を送っています。イザベラは「今は、家がある実感がない。自分の家じゃなく

    • 漫画編集者がオススメする API Heritage Month に読みたいグラフィックノベル

       アメリカ合衆国に暮らすアジア系の人々は2019年時点で2000万人、また19の国々にルーツを辿ることができると言われています (Pew Research Center調べ)。  一方、現在アメリカ国内では、アジア系を狙ったヘイトクライムと見られる事件が立て続けに起こっています。今年1〜3月の間に95件と、去年の同時期より2.6倍に増えています (数字はNHKニュース記事より)。  5月は、Asian American & Pacific Islander Heritag

      • My Bookshelf (2) 本をつなぐこと

        本を作る会社に入社したのは、震災直後の2011年4月のこと。計画停電の影響で会社の廊下が真っ暗だった光景が、あの時分の記憶として、今もはっきり残っています。 私が最初に配属されたのは制作部という部署でした。編集部が本の「中身」を作る場所なら、制作部は「外側」を作るところ。コストを計算し、用紙、印刷、製本、加工など、あらゆる資材と作業を手配し、取次に納品するまでを管理します。 当時の上司の口癖は「自分が担当する本のことを、世界中の誰よりも詳しくなろう」。担当本の用紙がどこで

        • My Bookshelf (1) アメリカとの出会い

          就職して以降、今年のように読書に時間を充てられたことはなかったなと、2020年を振り返って思います。ひとえに在宅時間が増えたからではありますが、本を読む純粋な楽しさを、期せずして久しぶりに思い出しました。 さて先日読んだ小説の中に、大人になった時に好きなものの「根」は、幼少期に辿れるとありました。子供の「好き」はより本能に近く、時の流れの中で忘れることがあっても、ふとした瞬間に顔を覗かせるもののようです。 私にとってはそのひとつが、今生活している「アメリカ」です。自分の好

        ほんとうの自分 ー最近の読書から

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        • My Bookshelf
          2本

        記事

          漫画編集者が選ぶ BLM運動時代に読みたいグラフィックノベル4選

          5月25日にミネソタ州ミネアポリスで起きた、警察官による黒人男性殺害事件。人種差別や偏見がアメリカ社会に通底していることを、改めて浮き彫りにしました。この痛ましい出来事をきっかけに「ブラック・ライブズ・マター」運動(BLM運動)が米国内にとどまらず、世界中で巻き起こっています。 私は大学、大学院時代とアメリカ史ーー中でも黒人史に興味を持って勉強していました。就職以降は歴史やアメリカから離れていましたが、好きなこととはまた巡り合う運命 (?) なのか、現在アメリカで駐在生活を

          漫画編集者が選ぶ BLM運動時代に読みたいグラフィックノベル4選

          そのものがたりを語ることができるか

          サンフランシスコの出版社で働くため、駐在して半年が経ちました。うち2ヶ月は外出禁止令下で暮らす、思いがけぬ生活に…。それでもひとたび散歩に出ると、そこはアメリカ。カリフォルニアの眩い太陽、人びとや街並み、スーパーに並ぶ珍しい野菜やフルーツなどーーささやかではありますが、日本との違いを楽しんでいます。 さて、私がアメリカに長期滞在をするのは今回が2度目です。前回は南部ジョージア州アトランタに、大学時代約10ヶ月ほど留学していました。 その時のことを少し、書いてみたいと思いま

          そのものがたりを語ることができるか

          自己紹介

          はじめまして、カミカミ編集者と申します。まんが編集者です。出版社で働いて10年ほどになりますが、ご縁あって2019年の11月から、米カリフォルニア州サンフランシスコにオフィスがある出版社で働いています。文化の違いや言語の壁に苦戦しつつも、日本にいた時とちょっと違った視点でのまんが作りを、新鮮な気持ちで楽しんでいます。 まだまだ力不足の編集者ですが、自分なりに編集の仕事ってなんだろうと考えてみると、ひとつは「誰かの力を借りること」かなと思います。編集はアイデアは出せてもひとり

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