見出し画像

[読書メモ]『THIS IS SERVICE DESIGN DOING』の4章までをざっと読んで面白かったところ紹介!(中編)

※前編からの続きとなります。前編も合わせてご覧ください。
https://note.mu/hiranotomoki/n/nd694ffeef016

面白かったことは、全部で5つあります。
1:好きなように呼べばいいさ!
2:顧客満足度の正体
3:組織エンパワメント型のサービスデザイン
4:サービスデザインの5つの視座
5:サービスデザインの原則が進化

面白かったこと1:好きなように呼べばいいさ!

最近の日本のデザイン業界は、特にその混乱期にあると感じていますが、いわゆるWicked Problem(不確実性を含んだ意地悪な問題)を片付けるデザインに対する名前は、業界・業態によって様々です。Design Thinking、Service Design、UX design、Customer Experience、Experience design、Service Marketing、Entrepreneurship、Business Design、Human-centered Designなどなど、呼び方はたくさんあります。これに対して、

「みんな好きなように呼べばいいさ!私たちはService Design って呼ぶけどね?ところで、名前を分けて、それぞれのデザインをサイロ化することに意味があるの?私たちはないと思うけどね!」

みたいなことが書かれていて、清々しいくらいにかなりイラッとしましたが、その通りだとも思いました。だからこそ、実践(Doing)という本のタイトルにしたのかもしれません。

余談ですが、私もむかし、Future CenterとLiving labとInnovation Centerの違いや定義を知りたくて、フィンランドのアールト大学の先生に問い詰めたら、大事なのは名前じゃなくて、実際にやっていることだとと諭された経験があります。

面白かったこと2:顧客満足度の正体

この本の冒頭に書かれている話なのですが、顧客がサービスプロバイダーが提供するサービスに辿り着くまでには、いろんな体験をすることを、何重にもラッピングされたプレゼンドを例に紹介されています。つまり、顧客が本当に求めるいる結果を獲得するまでは、いくつものタスク、人やシステムとの出会いがあり、そこを舐めてかかると痛い目に合うということです。しかし、事業というのは、ついつい提供する結果ばかりに目が行くので、全体的な視点を得るにはサービスデザインじゃないの?みたいなことでした。ここでは、本に記載されていた病因の事例が分かりやすかったので簡単にシェアしたいと思います。

+++

ある病院の研究で、数万人の患者に病院の滞在について満足しているかどうかの調査をおこないました *1。当初、患者の満足度は「病気がなおった、怪我がなおった」といった医療行為の結果に対して満足度が左右されるのではと考えていました。しかし、調査結果は違いました。患者の満足度の上位15項目に健康状態の向上や改善に関する内容がなかったのです。その代わり、上位を占めていた項目は「苦情処理」「丁寧な看護スタッフ」「患者が治療の意思決定に関わること」といった病院スタッフとのやり取りに関わることでした。つまり、怪我や病気が良くなるといったことは当たり前の話であり、満足度を左右することにはならならなったのです。完治することは前提の上で、そこに至る一連の病院体験によって、満足度は変化することがこの調査結果から読み取れます。その一連の体験を5階層で表現したものが上記の図となります。

※1 参照:Frampton S., Gilpin L., & Charmel P., eds. (2003). “National Patient Satisfaction Data for 2003.” In Putting Patients First: Designing and Practicing Patient-Centered Care. San Francisco, CA: Jossey-Bass.

面白かったこと3:組織エンパワメント型のサービスデザイン

1980年代にシティバンクの副社長だったショスタックに始まる、サービスを図やチャートにするといった「サービス可視化型」のサービスデザインが進化していっていることを読み取ることができます。簡単にまとめますと、まずサービスデザインは、1990年代にユーザとサービスの「インタラクション型」になります。その後、2000年代初頭では、「利害関係者全員参加型」のサービスデザインとなり、その延長線で、現在は「組織エンパワメント型」のサービスデザインに進化したのかなと考えられます。それくらいこの本には「organization(組織)」という言葉が頻繁に出てきます。

大企業にありがちな、組織のサイロ化(他部署と連携せずに自己完結する組織)を壊し、様々な専門性を持った人たちを巻き込み共同作業を可能とし、新規サービス創出や既存サービスの改善をするために、サービスデザインが役立つことが示めされています。

そして、サービスデザインを紐解いていくと、デザイン思考のビジネス転用だということが分かります。つまり、(サービス)デザインのツールをつかい、リサーチして、インサイトを見つけて、試作して、テストを繰り返すといった、デザイン思考の反復的アプローチをビジネスシーンでおこなうのです。
そういったデザインプロセスを通して、クライアントが顧客視点を獲得し、デザイナーのように創造性を発揮して、活動していくことで、サービスをつくり、改善していくことの大切さが述べられています。

組織はサービスデザインを既存サービスの向上のために利用したり、新技術や新しい市場動向に基いて、新しい価値提供を創出することにも利用できます。サービスデザインは、組織に経験的で、運用的で、ビジネスニーズをバランス良くさせる方法を与え、幅広い利害関係者を動かし、プロジェクトをエンパワーさせるための、非常に強力な共通言語とツールセットを提供するのです。

+++++

[読書メモ]『THIS IS SERVICE DESIGN DOING』の前半部分をざっと読んで面白かったところ紹介!(後編)に続きます!▶▶▶▶

サポートも嬉しいですが、twitterフォローでも十分嬉しいです! https://twitter.com/hiranotomoki