「型式指定」申請の基準は厳しすぎたのではないか?
トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの5社で「型式指定」申請の不正が発覚しました。
一昨年の日野自動車、昨年のダイハツ工業、豊田自動織機。2010年代後半には三菱自動車、日産自動車、スバルなどでも不正がありました。こうして見ると、逆に不正をしていない自動車メーカーを探すのが難しいレベルです。
このようにこぞって不正をしている業界を見ると、真面目に頑張ったことで過去に淘汰されてしまった企業が不憫でなりません。そういう意味でも不正を行った企業を擁護するつもりは毛頭ありません。
しかし、このようにほとんどのメーカーが不正をしているということを客観的に見て思うのは、現在の基準が現実的な運用に耐えられない水準のものではないかということです。“ハードルは高すぎるとくぐる”という言葉がありますが、悪意を持ったコンプラ意識の低い企業のみならず、日本を代表する大企業がこぞって不正を行っているという事実が元々無理のある基準だったのではないかと感じます。今回の自動車メーカーに課せられているルールの詳細はよく分かりませんが、基準を設定する官庁は何か問題が発生するたびに一つもう一つとルールを作り、厳格に煩雑にしていきがちです。私も金融関係の企業のコンサルを長年していますが、本当にここまでやるのですか?と驚くような煩雑なルールを課されています。今回の不正は多くの企業が手を染めていたにも関わらず、長年明るみになっていなかったのも内容が複雑すぎて全体を把握できていなかったということが根本にあるようです。
コンサル先の企業の中でも、全く守られないルールが時おり存在しています。ルールが守られない理由はいくつかあります。ルール自体が周知されていない、重要性や目的が浸透していない、現場メンバーの意識の低さ、管理職メンバーの徹底度の弱さetc。しかし、そもそもそのルール通りに実施することが心身共に負担が大き過ぎて守られていないということもしばしばあります。このような本当の理由は状況を観察し丁寧にヒアリングすることから見えてきます。ただやりたくないための言い訳なのか、現場の運用に耐えられないような厳しすぎる基準なのか、そこを見極めながら進めていく必要があります。
基準やルールというのは最低限の安全や品質を担保する上で必要なことは間違いありません。しかし基準ありきではなく、本当に必要なのか、どの程度のレベル感の基準が必要なのかということを考えて設定しないと、企業や国の生産性を落としかねません。
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