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中小企業においても勇気を持って賃上げすべき

昨今、インフレと共に賃上げのニュースを目にしています。
経団連が5月20日に発表した2024年春季労使交渉の1次集計によると、大手企業の定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は5.58%、平均引き上げ額は1万9480円でした。賃上げ率は1991年の5.60%(最終集計)以来33年ぶりの高水準で、引き上げ額は現行の集計方法に移行した1976年以降で最も高い水準です。
これまで賃上げというとグローバルに展開している大企業が上げているだけでしょ?と思われがちですが、帝国データバンクが実施した調査によると9割弱が中小企業であるアンケートにも関わらず77.0%の企業が賃上げを実施したという回答でした。最多は3%台と大企業中心の経団連と比べて上昇率は低いものの、これまでにないほど賃上げが浸透しています。私の顧問先も中堅中小企業が中心ですが、ほとんど全ての企業が何かしらの形で給与を増額もしくは増額予定となっており、ここにきて中小企業においても賃上げが進んでいることを実感します。

昔から費用の中でも給与は一度上げると下げられない代表的なものであり、経営側とすると上げるのに一番恐怖を感じる費用です。私の知っている企業でも先代の経営者が上げすぎた給与のため低収益体質に悩んでいる経営者が居ました。一時的に利益が出たとしてもずっと続くは分からない中で安易に上げられないものがやはり給与です。
しかし昨今の社会情勢を見ると、ある程度の水準の給与にしておかないと優秀な人材を確保するのは難しくなっています。新たな採用が難しいばかりでなく、既存の社員の離職にも繋がります。現在の人手不足は一時的なものでなく、この時期を乗り越えれば解消するというものではありません。人口構造的なものが原因であるため今後も更に人手不足が加速するのは間違いありません。
逆に言うと今後、特に人手不足の業種において人材を確保できているということがそれだけで競争優位に繋がります。顧問先の物流会社の経営者は競合他社が人手不足が原因で仕事を絞る動きがあり、人さえ居れば仕事は増やせると話していました。勿論、計画性もなく人材を増やしていくことは経営リスクになりますが、いざ増員したい局面であってもかつてのように簡単に人材を増やすことは出来ない時代になったと感じます。

また低賃金で新しい人材を確保できなくなった際に懸念されるのは人材の高齢化です。ベテランが中心の組織は短期的には生産性が高く収益性も高くなりやすいですが、10年後を見据えて人員計画を進めておかないとジリ貧になります。若い人材が居なくなると、同じような若い世代が入社を躊躇するようになり、元に戻すには多大なコストと時間が必要になります。

長期的に事業を反映されるためにも、この局面では勇気を持った賃上げが必要だと思います。

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