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平野啓一郎|小説『マチネの終わりに』後編

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平野啓一郎のロングセラー恋愛小説『マチネの終わりに』全編公開!たった三度出会った人が、誰よりも深く愛した人だった―― 天才ギタリスト・蒔野聡史、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十…
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2016年1月の記事一覧

寄稿:『マチネの終わりに』連載を終え 自由意志巡る物語に挑戦

 十カ月余りにわたって朝刊で連載してきました「マチネの終わりに」が、一月十日を以て、無事…

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大空祐飛・平野啓一郎 小説『マチネの終わりに』出会いの夜のシーンを朗読!

元宝塚歌劇団宙組トップスターの大空祐飛さんが、自由に表現を楽しむ人にお話を聞く朝日カルチ…

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『マチネの終わりに』第八章(52)

 広々とした砂浜は、午後も日光浴を楽しむ人々で賑わっている。しかし、水はもう冷たいようで…

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『マチネの終わりに』第八章(53)

 しかし、そのための資金提供者の中に、チトーと対立した私を、民族主義者だと信じていた国外…

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『マチネの終わりに』第八章(54)第九章 (1)

「大事なのは、お前たちを愛していたということだった。理解し難いだろうが、愛していたからこ…

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『マチネの終わりに』最終章へ

こんにちは。 長らくお楽しみいただいてました『マチネの終わりに』も、いよいよ最終章です!…

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『マチネの終わりに』第九章(2)

 蒔野は、生まれてきた子供のか弱い健康に強く心を打たれた。  自分たちが世話をしなければ、生存することさえままならないというその頼りなさと、やがてはその生存を自らのものとすることとなる肉体の精緻なシステムとが、彼の内側に、新鮮な興奮を喚起した。  優希と名付けられたその子供は、蒔野の生活を数々の新しい音で満たした。  泣き声は勿論、寝息や微かな発声、ちょっとした衣擦れやベッドのきしみ、子守歌のCD、鳴り物のオモチャ、そして、母親としての早苗のやさしい声、……そうしたすべ

『マチネの終わりに』第九章(3)

 ようやく寝ついた我が子の寝顔を見ながら、この子には、両親が真に愛し合って生まれてきたの…

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『マチネの終わりに』第九章(4)

 四月初旬には、三年弱ぶりとなるリサイタルが横浜で予定されており、決行か中止かの判断を巡…

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『マチネの終わりに』第九章(5)

 復帰リサイタルが、こうした状況であったことは、蒔野の感情を複雑に高揚させた。固より克服…

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『マチネの終わりに』第九章(6)

 ドイツの人口を半減させたとも言われるその凄惨な戦争後に、バッハの音楽が生まれた必然性を…

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『マチネの終わりに』第九章(7)

 洋子は、東日本大震災をジュネーヴで知った。すぐに日本支部のスタッフは固より、長崎の母親…

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『マチネの終わりに』第九章(8)

 普段は震災関連の記事ばかりなので、些か唐突で、一体どういう人なのだろうと話題になった。…

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『マチネの終わりに』第九章(9)

【あらすじ】蒔野(まきの)は妻の早苗から偽メールの件を告白されたが、いとしい娘が誕生したこともあって後戻りは考えられない。東日本大震災直後のリサイタルを成功させ、翌年発売したバッハのアルバムは世界的な評価を得る。一方、洋子は難民支援のNGOで精力的に働き始めた。 ………………………………………………………………………………………………………  蒔野は、二〇一二年の夏にはキューバとブラジルで演奏することになっていたが、その前に、ニューヨークのマーキン・コンサート・ホールでの