結婚式
「あら、ちょっとあれ見て。すんごい背中」
「ほんと。まぁ、ぱっくり開いて」
「お尻まで見えちゃうんじゃないの」
「ちょっと真っ昼間からする格好じゃないわね」
「しかもすごいミニだわ、水商売かしら」
「ゲストは花嫁より目立っちゃダメっていうじゃない?」
「ちなみに、白もご法度って言うわよね」
「花嫁の色だものそりゃそうよ」
「友達が白なんて着てきたらちょっと疑っちゃうわよ」
「ねぇ」
「ねぇ」
「あら。あの人、スカートの裾からガードル見えてない?」
「あらっ、やだ、本当だ」
「ほら、ちょっと前に屈んだだけでチラチラと」
「いやーー。気づいてないわね。黒いモノがのぞいてるわ」
「ちょっと、わたし、言ってくるわ。」
…
「ほほほ。『ガードル見えてる』って教えてあげた時の顔!」
「びっくりしてたわね」
「あ、ちょっと姿勢良くなったんじゃない?」
「屈むと途端に見えちゃうもんだから気を抜けないのよ。ほほほ」
「しかし花嫁はまだなの?」
「お色直しくらい、待ってあげてくださいな」
「さっきのウエディングドレスの裾、長かったわねぇ、しかもすんごいボリュームだったわ」
「着たかったのよ、いいじゃない」
「長すぎてチャペルのドアが閉まらないんじゃないかと思ったわよ」
「しかし誓いキスのぎこちないこと」
「やっぱり笑っちゃうわよね」
「大体、結婚式の時だけ神父さん出てくるのおかしくない?」
「ホント。死んだらお坊さんが来るのにね」
「そうよ」
「そうよ」
「ねぇ、そういえば、聞いた?」
「何」
「佐藤さんの話」
「あ、亡くなったんでしょ?」
「54歳だって」
「まだ若いじゃない」
「それがね、おかしいらしいのよ」
「何が」
「お風呂で亡くなってたらしいんだけど、その前に酒を飲んでて」
「あー、大酒飲みだったって有名ね」
「それがね、殺されたんじゃないかって話よ」
「誰によ?!」
「笑ってたんだって。奥さん」
「笑ってたって…お葬式で?」
「自宅葬だったらしいんだけど。奥さんが台所に引っ込む時、振り向きざまに一瞬、笑ってるように見えたって話」
「そんなことある?」
「でも、旦那が毎晩深酒して、湯船で寝る癖があったとしてもおかしくないわ」
「泥酔した旦那が湯船に浸かったのを見計らって、上から押さえつけた…とか…?」
大変長らくお待たせいたしました。
新郎新婦様の入場です。拍手でお迎えください。
「あ、やっと戻って来たわよ」
「二着目はブルーね」
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