【読書記録】サージウスの死神 佐藤究 著
ギャンブルをする理由。この本の主人公は身を呈して示してくれたように思う。
なんでだろう。わからない。なんとなく初めて依存して、あとは衝動なのかな。
この主人公は、徹底して自分の行動に理由を持っていた。もちろんギャンブルをするのにも理由があった。曰く、
らしい。
ギャンブルと薬にどっぷり浸って身をやつしながらも、最後まで冷静な主人公。自分は正気だと思ったまま堕ちている様子は、読んでいてぞわぞわする。
語り手は正気?
賭け事を正面から考えた心理なのかもしれないし、賭け事の沼から抜け出せない自分へ言い訳するを内省的に描いたのかもしれない。途中、ニーチェの言葉に心を動かされたり、ふと昼間の仕事をしたりするシーンが出てくる。あれは自分がまだマトモだと言い聞かせているようにも感じた。「客観的に自分を把握できているし、論理的に判断できる。まだ大丈夫」と。
ルーレットの数字を当て続ける特殊な能力は、インカ文明のスピリチュアルな伝説と結びけたりもしていたが、フィクションの印象が強い。それでいて、現実の世の裏側を生きる人々のハードボイルドは、リアルで生々しい。自分が生活するすぐ近くには、こんな世界があるのだろうかと感じさせられる。
力強い世界観と文章とが素敵な本でした
短く端的に言い切る文章が素敵
この作品は、「テスカトリポカ」で直木賞を受賞された佐藤究さんが最初に書かれたものだ。書店で直木賞のでっかいポップにほいほい引かれて手に取った。本書の軽快で格好いい文体がとても好きになったので、受賞作も文庫版の発売を待って読みたい。