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「SDGsゲームの板橋版を作る会」に参加したメモ

板橋区のおとなりスタンド&ワークスにて、「2030SDGs」というカードゲームを体験し、その板橋版をつくるための検討会に参加しました。
ひらめきドアの活動ってワケでもないんですが、参加者9人中にひらめきドアのメンバーが4人いましたし、これを書いている松本は主催者の1人で個人ブログもないので。次回以降の実施に向けて、今回の備忘録をまとめます。あくまで松本の個人的な感想です。

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ゲーム全体としての感想
ワークショップでの利用を想定し、よく練られているすごいカードゲームだと思いました。このゲームをプレイすると「価値観がちがっても、互いに協力する視点を持つと世界は変わる」ということを疑似体験できる。そこがいちばんすごいし、大切なのかなと思います。

ユニークなのは「ゴールカード」によって各プレイヤーの勝利条件が別々に与えられること。お金を集めたい人、時間を集めたい人、経験を集めたい人など、いろんな価値観でプレイすることになります。これが面白い。
また、いろんな企業でSDGsに関する研修が実施される現在の状況を想定し、「大人向け・大人数にも対応・研修利用」という点もしっかり設計されていると思います。


板橋版ってどういうこと?
「2030SDGs」では、プレイヤーが「プロジェクトカード」という、この世界での事象や社会的な選択を描いたカードを実行することで進みます。このプロジェクト内容、たとえば「交通網の発達」とか「軍事縮小」とかを地域レベルに小さくすること。もっと身近に話題から持続可能な社会を考えたい、というのが検討会のメンバー間で大まかに共有されている認識です。

個人的には、たとえば、今話題になっている大山の商店街付近の開発が、持続可能性という尺度で見るとどうなのか。それぞれの立場で何が違ってくるのか。そういうものの見方のヒントにできたらいいなと思いますが、具体的に、どのような【板橋版】を作っていくかは、これからみんなで検討していく大切なポイントです。

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大人数にも対応できる設計
「2030SDGs」のプレイヤーは5~20人で調整でき、かつ、1プレイヤーを数人のグループで運営すれば、さらに人数を伸ばせます。自分は未体験ですが、公式によると平行世界を同時に動かせば200人にも対応可能とのこと。

ゲーム内ではどんな「プロジェクト」を実行するにも「資源(お金や時間)」が必要です。人数によって最初の資源配分が変わるので、ゲーム全体の難易度は人数であまり大きく変わらないよう調整されているようです。板橋版となったとき、どういう規模のプレイ人数を想定するかは未定ですが、人数調整しやすいってポイントは大切な気がします。


真似するなら数値上の調整は大丈夫そう
「2030SDGs」は、ひたすら「プロジェクトカード」を実行することで展開します。必要なリソースが多いカードがあるので、ときどき最初から何も実行できないプレイヤーが発生します。
そこで、ゲームの進行を可能にするのは「プレイヤー間の交渉や交換は自由」という設定です。これは「協力の大切さに気づく」体験にも必要な重要事項ですが、同時に、ゲームの硬直化を回避する大きな効果もあります。

なので、板橋版を作るときもカードのバランス調整はそうシビアでなく、ざっくり「低コストのカードを多めに」して、「世界の状況レベルによる条件の配分」に気をつければ、ほぼ問題なさそうに見えます。まずはプロジェクト内容を地域ネタに変えることに注力して良さそうです。


協力プレイへの誘導する工夫がたくさん
「2030SDGs」はとても巧妙に、みんなが協力する展開に誘導します。一番わかりやすいのは、前半プレイ終了後のインターバルで、ファシリテーターが、各プレイヤーの達成目標について気づきを与える部分。「ゴールカード」に隠された本当のゴールを気づかせることで、「自己利益だけ追求していると、その自己利益も損なわれる」という大きな視点を持たせるわけです。深い。

仕掛けは他にもあります。ゴールが「意思カードを集める」となった人は、そもそも独力では達成困難なバランスにあり、交渉を発生させます。また、プロジェクト実行による世界の状況の変化が、他プレイヤーにも制限になりえるので、そこでも交渉や協力が生まれます。一部のプロジェクトはお金が1200とか、1人では実行できない超高コストもあり、しかも投入コストより大きなリターンをもたらすようになっているので、複数人で投資して実行し、利益を配分するといったプレイも可能にしています。

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視覚デザインはもう少し工夫したい
全体としてきれいにまとめていますが、プロジェクトカードやリソース関連のデザインは、もうちょっと整理した方がいいなと思いました。

具体的には、プロジェクトの実行条件と報酬の情報を、目線が前後しないようまとめるとか。お金や時間をアイコン化してコンパクトにするとか。次にもらえるカートの色と、もらえる意志カードの色の表現をしっかり区別するとか。いろいろと気になる。ビジュアルデザインは、板橋版をつくるときにまた考えたいポイントです。


学べる「ツール」か、「ゲーム」か
「2030SDGs」は明確に、ワークショップのツールとして設計されていると感じます。ゲームが目的ではなく、ゲームを通じた体験と、その内容を振り返って共有する。その全体が作りこまれたものです。もちろん、ゲームの中身でも、経済系が先行しやすいといった演出が冴えていて、よくできていると思います。

一方で、純粋に、何度も遊ぶゲームとして考えたときは、そのゲーム性は破綻しています。というのも、プレイヤー間の交渉が無制限ですから一度遊んで、全員が「ゲーム成功には無償の助け合いが重要」と理解したら、2回目のプレイは全員が協力し、場にあるすべてのリソースを使えるからです。

こうなると駆け引きはなく、ただの作業になります。また、各プレイヤーが自分の財産を完全に管理できるという点もポイントで、自分で行動しないかぎり、お金も時間も増減しません。

これは現実世界のSDGsにも無関係ではなく。僕らが、相互協力こそ最善だと知りながらたびたび失敗する理由の1つは、自分の財産を完全に制御できないからです。お金や時間はいつも、ある日とつぜんに、事故・災害・病気などの制御できないものにうばわれる危険があります。
そこで、アクシデントに対しての備えが必要だと感じます。それが真に必要かはさておき、自分や家族の防衛のため、ふつうに満足できる量を超えて、財産を「所有」しようと考えます。しかも、低確率なアクシデントも想定すると必要な防衛量もどんどん増える。結果、できるだけ財産を抱えこもうという非協力的な思考になってしまう。もはや古今東西「ニンゲン、あるある」です。

こうした現実をゲームに反映したければ、交渉に時間を支払ったり、アクシデントカードで不安要素をつくったりもできます。でも「2030SDGs」の制作者さんは、たぶん、そこは分かった上でやってないと思います。まずは「互いに助け合うことの価値」にしっかり気づけるよう設計し、その上でノイズになってしまう部分はバッサリ捨てた。まずは助け合う重要さに改めて気づくこと。たしかに現実はいろんな不安要素もあるけど、そこもみんなで何とかしよう、と。

板橋版はどう考えるか。ワークショップとして使うか、子どもたちが気軽に遊べるゲームとして組み立てるか。ここはけっこう大きな方針にふれる要素です。工夫すれば拡張カードを用意して、どっちにも切り替えられるって方法もあるかもしれませんね。板橋版が目指す対象年齢とか、広げ方とか、そういう点と関連して、今後なんとなく議論が深まるのかなと思います。

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今後は、どんな板橋版をつくっていく?

とりあえず既存のSDGsゲームを、板橋ネタに置き換え、いったん中身そのままでローカライズしていくという方法が1つ。実際の使い方を議論して、ネタだけでなく、ルールなども作り直していくという方法が1つ。

いずれにしても、今後は、「板橋版SDGsゲームを作ったら、どう使いたいか」という点がクリアになると、進め方も見えてくるのかなと思います。

板橋区が誇るネットメディア「いたばしTIMES」の編集長・ちゅうぞうさんが「完璧主義より完了主義」という金言を書いています。大きな目標があるとしても、あまり完璧にこだわりすぎず、まずは真似して形にする。完了させる。そのうえで、あとから改良をしていけばいいのかもしれませんね。

主催の木下さん、小針さん、そして参加者の皆さん、ありがとうございました。今後もとても楽しみです。



板橋区内に、レーザーカッターや3Dプリンターを使って何かを作ったり届けたりしています。また、そうした道具を使える人を増やしたいという思いで、講座などもちょいちょい開催しています。サポートいただけた場合は、こうした機材費や会場費などに利用させていただきます。