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「小京都」多すぎ問題

はじめに

宮崎から岐阜まで下道で旅をした.( #ヒラマサ引っ越し2021 )

各地で観光しながら移動するため,楽天マガジンで「るるぶ」を漁り読んでいて気が付いたことがある

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「小京都」があまりにも多いのである.

九州の小京都

僕が住んでいる宮崎は日南市:飫肥を擁しており飫肥は「九州の小京都」を標榜している.僕は時たま飫肥に足を運び,「小京都とか言ったもん勝ちだよねえ」などと毒づきながらも,「九州」を背負って小京都を名乗っていくその姿勢に恐れ入っていた.

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(画像は https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000036513.htmlより拝借)

僕はこの記事を熊本で書いているが,熊本県人吉市も「小京都」だったし,「るるぶ大分」にも日田市が「小京都」として挙げられており,九州小京都渋滞が起きている.「るるぶ山口」にも山口市,萩市が「小京都」としてノミネート.もはや我慢がならなくなり筆を執った次第だ.

そもそも小京都とは

ここまで小京都が乱立してたら収集がつかないし,だんだん小豆に見えておしるこが飲みたくなってしまう.「小京都」について調べてみると,どうやら本家・京都市を胴元とする「全国京都会議」に加盟した地域が「小京都」を名乗っているらしい.「言ったもん勝ちだよねえ」と言っていた飫肥は,しっかり認められた小京都だったのである.加盟条件は
・京都に似た自然と景観(碁盤の目のような街など)
・京都との歴史的なつながり
・伝統的な産業や芸能があること
の3つのうち1つ以上を満たすこと.意外と緩い.

さすが京都.遷都さえすれどゆるゆるの条件で小京都の称号を与えて,全国の街を囲い込み,牛耳ろうとしている.これあれやろ,卑弥呼に「漢委奴国王」の印を与えて喜ばせてるやってるのと一緒やろ.山口なんかは県庁所在地まで服従させられているし,栃木は元気よく3つもノミネート.影が薄い県はなんでもやるな.ちなみに栃木市は埼玉県川越市と千葉県香取市との持ち回りで「小江戸サミット」を毎年開催している「小京都」かつ「小江戸」な街である.

小京都はいくつあるの?あと商標権の話

結論からいうと,全国京都会議公認の小京都は41個ある.

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(全国京都会議HP : https://shokyoto.jp/ml/ja/top/ より引用)

何とも言えない数字.公認されていない「自称」小京都も含めるとどれくらいになるんだろう.

ところで「小京都」は株式会社日田天領水が商標権を維持しており(登録5275235),小京都の名称は株式会社日田天領水が独占排他的に使用することができる.しかし日田天領水では小京都と冠した商品を販売していない.気になったので日田天領水ことグリーングループ株式会社に

 この度は御社が商標権を取得された日田天領水の「小京都」についてお伺いいたしたくご連絡差し上げております(商標:5275235).

 1. 日田天領水は「小京都」と冠した商品を販売されていないようですが,なぜ「小京都」の商標を取得,維持しているのでしょうか.
2.全国京都会議という団体が,加盟した地域を「小京都」と呼び広報しているほか,全国各地で小京都を名乗る地域があります.全国京都会議もしくはその他の地域について,使用許諾(通常もしくは専用実施権)をしておられるのでしょうか.

と問い合わせたところ

商標「小京都」(登録番号 第5275235号)に関してですが、こちらの商標は第43類 類似群コード42B01で取得しております。よろしければご確認ください。

とご返信を頂いた.

43類は飲食,宿泊に関する商標で,42B01は飲食物の提供に関するもの.つまり,各地の「小京都」に関して差し止めを請求する権利などはなさそう.(これは登録情報として公開されているので確認してなかった僕がアホ)

しかし,「なぜ継続しているのか」という質問にはお答えいただけなかった.日田天領水のHPでは

今、ミネラルウォータが世界レベルで注目をされています。その一つに北部九州の小京都と呼ばれている「清流の郷・大分県日田市」が産んだ「日田天領水」があります。

という記載こそ見つけたものの,「小京都」という商品名は見つけられなかった.ちなみに日田市は現在も全国京都会議に加盟している.

小京都の隆盛

全国京都会議には,ピーク時の1999年度に56市町が加盟しており,京都市を除いた62自治体が加盟した経験がある.再入会を除くと19市町が退会したが,退会理由としては

財政難や観光客誘致へのメリットが乏しいことのほか、歴史的に城下町として発展した歴史などに鑑みて「小京都」としてではない独自性をアピールすることを挙げる自治体も複数ある。(Wikipedia ”小京都"のページより)

だそう.ちなみに年会費は5万円らしい.これが払えないなら財政難すぎる.

「遠くから来てもらってもガッカリされる」(徳島県那賀川町)
「そもそも小京都と呼ばれていなかった」(長野県松本市)

わかる.

小林ら(1)によると,『旅』『旅行読売』『旅の手帖』の創刊から2016年の間(『旅』はJTBから出ていたが,2004年以降は新潮社より刊行.本調査では2004年1月号までが対象)に「小京都」に関する記事は192件あり,1969年が最初で2002年が最後である.この理由は以下のように考察している.

日本国有鉄道によって「ディスカバージャパンキャンペーン」が開始された1970年ごろを皮切りに「小京都」の掲載ブームが始まったが、2000年ごろから露出が減少しており、「小京都」への注目度が低下していることを示すものと考えられる。

そのうえで,「小京都らしさ」に対する認識が一貫されておらず,「伝統的な街並みが残っている」というステレオタイプに引っ張られる危険性もあることから,「小京都」は新しいコンセプトを打ち出す1ステップになり得るが,ある程度の期間が経過した後には独自性を打ち出す必要があると指摘している.

わかる.

ちなみにるるぶトラベルbyJTBの最近の小京都特集記事があったので貼っとく.

全国の小京都を牛耳る全国京都会議がある.トリビアにならなさそうなので筆を執った次第だが,原稿用紙6枚分の文字数になってしまった.僕は京都に行ったことがあるので,「小京都」というフレーズには全く訴求されないのだが,ブランディング戦略として切実な面もあるらしい.

各地がそれぞれの魅力やアイデンティティを曇らすことなく,行ったときに美味い地物を出してくれれば僕はそれでいい.

*引用の条件とかお作法に当てはまっていないことを承知で,参考にした読み物を掲載しておきます.本記事は論文でも何でもないただのブログなので,大目に見てください.

(1)小林 良樹,十代田 朗,津々見 崇,”全国京都会議の加盟自治体による「小京都」を用いた地域ブランディングの変遷に関する研究”,公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.52 No.3 2017年 10月

・Wikipedia "小京都"

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E4%BA%AC%E9%83%BD

・JCATS テレビウォッチ

https://www.j-cast.com/tv/2011/02/04087294.html

・全国京都会議

https://shokyoto.jp/ml/ja/top/



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