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【日記13】うだうだ〜ミュージック・オブ・ハート 島根の旅3

10.14 SAT

「『湖とファルセット』を読む会」の当日。
始まる直前までホテルの部屋でうだうだと過ごしていた。
寝転がったり、椅子に座ったり、テレビをぼんやり眺めたり。ここまでの2日間の疲れが意外と溜まっているようだった。

読む会が始まる30分前にようやく外に出た。
会場は松江テルサ。ホテルから目と鼻の先、松江駅前のガラス張りの建物。
廊下に映画『ケイコ 目を澄ませて』のポスターが貼ってあった。
テルサ7階のシアターで上映されるらしい。
(ちょうどこの日記を書いている10月28日(土)の上映だった)

読む会は非常に面白かった。勉強になることが多かった。僕には読みきれていなかった歌集の隅々の話を、一言も聞き漏らすまいと、じっと耳を澄まし、目を凝らしていた。
1部はパネリストの方々の評や読み、ご意見、議論があり、2部は参加者も発言をすることができた。
事前に歌集の中から3首選び、歌集にキャッチフレーズをつけるならという質問に答えていたので、レジュメに参加者たちの3首選とフレーズが並んでいた。
僕は「湖から海へ」というフレーズにしていた。
以前に「短歌をひらく」で書いたことだ。
最初のうちは指名された人が発言をしていたが、そのうちに挙手制になった。みんなちょっと遠慮して、手を上げずにいたが、司会をされていた『歌集 灯台守になりたかったよ』の小山美保子さんが「高い交通費を払ってきたのだから、これだけは言っておきたいということがある人はぜひ」と仰って、僕はその言葉に背中を押されて手を上げた。

『湖とファルセット』には湖という語が多く登場する。象徴的だ。海とはちがい閉ざされたイメージのある湖というものを、主体、あるいは書き手はずっと意識しているが、歌集の最後を締めくくる最後の連作に「手付かずの海をありったけ輝かせあなたの夏の季語になりたい」という歌がある。
心が開かれたかのようなラストに、主体あるいは作り手の心の変化のようなものを歌集の構成からは感じ取ることができる。自身の中にある新たなものを発見する喜び、思いが、最後の松ぼっくりの歌で「あなたに投げつけ」られるように、あなたへの思いに集約されていく。そこが僕はとても好きです、と汗をかきかきなんとか伝えることができた。

読む会のあと、懇親会までの時間を使って、先週の10月8日にオープンしたばかりの「書架  青と緑」さんへ。
店主は会にも参加されていた日下塔子さん。
自力で塗ったという壁は、壁の色として僕のとても好きな色だった。
ぐるっと店内を一周しながら、ここはこのジャンル、ここはこういう本、ここにはこんな本、と置かれた書架を眺め、手に取り、わくわくした。
明かりの中で、読まれるべき物語や物事、詩を抱えた本たちが、ゆったりと誰かの手に取られる時を待っていた。
僕は「半券 005号」を買った。

懇親会は、ものすごく楽しかった。
短歌の話もそうだし、結社や批評会、短歌界隈の面白い話をたくさん聞けた。普段、あまり塔に所属していることを意識しないのだけれど、塔の大先輩たちの前で僕は割とビビっていた。
ビビっていたけど、吉川宏志さんをはじめ、皆さんちゃんと向き合って喋ってくれて嬉しかった。
塔の会員ではない方々もたくさん参加されていて、他の結社の話や、東京じゃない地域での短歌の活動の話をしていただけたのも幸せだった。

そして、いつかは来るだろうと思っていた「あれ」をいじられる日が、今日だった!
「塔」の誌上に月詠が初めて掲載された時の、あの自分がした赤っ恥エピソードを。
でもそれも、自分の歌が人に見てもらえている証しだなと思って、嬉しくもあった。

結局、0時過ぎまで飲んでいた。
また飲みたい。
また話したい。
参加して本当に良かった。

田村さんも、本当にありがとうございました。
魅力的な歌を作り、歌集を編んで世に出し、読ませていただいたことに感謝が絶えません。
直接お話もできて嬉しかった。
短歌に向かう姿勢や考えを学ばせていただきました。
ありがとうございました。

別れ際、翌日に歌会をやろうかとか、とりあえず「書架  青と緑」に集合ね、と皆さんが言っていて、旅程をもう1日延ばしたいくらいだった。
明日の10時には電車に乗って松江を後にしていることが信じられなかった。

楽しい時間はすぐ終わる。
行きのドライブも、読む会も、懇親会も、二次会も、三次会も。
でも短歌をやっていればまたそのうち会えると思った。
短歌で会いに行こう。
短歌、短歌、短歌!!!
映画『ミュージック・オブ・ハート』でメリル・ストリープ演じるロベルタが黒板に書いた「Practice!Practice!Practice!」みたいな感じ。
それしかないのだ。

3日目のアルバム

会場の看板
へっへっへ、手に入れたのだ

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