続・工場経理のリアル(経理マンの職場)
2年以上前の投稿ですが、今でも「なぜか」読まれ続けているnote記事があります。この記事がコチラです。今回は続編を書いてみようと思います。
1.いわば「プロフィール」を意識して書いたのがよかったかも
改めて、なぜ「工場経理のリアル(経理マンの職場)」が2年以上経った今も読まれるのか。理由は「プロフィール」を意識して書いたのがよかったのでは、と振り返っています。出版に詳しい方が「出版企画書において、出版テーマも大切ですが、これ以上にプロフィール欄が大切です」と言っているのに通じるのかもしれません。
テーマは「原価計算」。資格予備校の講師や大学教授の先生も当テーマで執筆等されますが、分りやすさを重視してか、原価計算を料理に例える等「リアルさを犠牲にした説明」がされたりします。おそらく現場を見る経験がなかったためでは・・・。もちろん名著も沢山ありますが、中には「絵に描いた餅」の書籍もあったりします。反対に、実務家出身の論文や書籍。実務経験をグッと深掘りした「専門書」のため、なかなか学校で教えている「原価計算」と結びつき難かったり(分かりにくかったり)します。
私自身はメーカー経理のサラリーマン。士業資格も持っているので、最低限の専門知識も持ち合わせているはず・・・よって将来的に、これら「実務」と「学問」の美味しいところどりを出来たら良いなぁ~と漠然とした思いで「工場経理のリアル(経理マンの職場)」をnoteに残した記憶があります。
2.コスト調査に係る「他部門との人間模様」を舞台にします
工場経理の業務は、決算実績数値や予算数値の元ネタとなります、原価計算業務がメイン。それら周辺業務も諸々ありますが、比較的「心理的インパクト!?」があるのが「コスト調査」ではないでしょうか。
コスト調査とは、社内の他部門からの依頼により、「完成品」になる前の、部品表でいう「部品・仕掛品」レベルのコストを調査することです。
コスト調査依頼の背景には、例えば、①物流部門が部品等を税関に通すため、②購買部門が内外作品の切り替え検討のため、③営業部門がサービス・パーツ発注のため等、様々な依頼部門ごとの背景があります。
あとで説明します「工場経理のトホホ・・・(涙)」の3つのケース。これらいずれも工場経理で行うコスト調査の「手間」が他部門に伝わっていないところが大きいのでは・・・。下図②のイメージ通り、他部門からコスト調査依頼を受けたとき、経理部門内で部品表上の「構成レベル上どの位置づけか」確認し、さらに「何の目的でいつの時点の原単位が必要か」を明らかにした上で「積上原価」をコスト調査結果として回答することになります。
「何の目的でいつの時点の原単位が必要か」・・・原価は製品のフェーズによって「目標原価」や「標準原価」と計算の前提条件(つまり「原単位」)が異なってきて、さらに「実際原価」を使うときには、その時の生産量や物価変動に大きく影響を受けます。よってコスト調査では、依頼部門の目的と前提条件の擦り合わせが何よりも大切なんですよね。
なのに他部門の人によっては、コスト調査結果はスーパーやコンビニのレジのように「ピッ・・・」とバーコードを通せば「パッ・・・」と簡単に自動的に出てくるモノと勘違いしている人がいる。さらには工場経理部門を「便利屋扱い」程度にしか見ていない等、いろんな人がいるんですよね。
そこで「工場経理のトホホ・・・(涙)」の視点から、3つのケースにタイプ分けしてご紹介していきます。
3.逆質問された・・・と勘違いして逆ギレされる【ケース1】
特に他部門の方で、今まで経理部門とやり取りした経験がない人に多いケースです。分からないので「ピッ・・・」と質問をしたのだから「パッ!!」と調査結果が出てくると思いきや、工場経理から「目的は?前提条件どうしましょうか?」と逆に質問されてしまう・・・。これでキレてしまい、経理担当も呆れてしまうケースです。
4.短納期のムチャぶり・・・実は至急でなかった【ケース2】
コスト調査の担当者は当然、決算の時期は決算業務を行います。年度の決算、月次の決算と決算業務は時間とプレッシャーとの闘いです。この時期は、他部署も気を遣って、問い合わせしないように配慮いただきます。・・・が、決算の忙しい真っただ中に「コスト調査依頼」をぶっ込んでくる担当者がいます。当然この部署によっては急用の場合もありますが、時には「担当者個人の”ただのお勉強”のため」に依頼される場合も・・・。
これら【ケース1】や【ケース2】は、依頼してきた「部門内での引き継ぎの問題」が殆どだったりします。つまり初めて経理部門とやり取りする役責になった・・・でも前任者からのフォローも得られていない(相手にされていない)。そこで「えぇ~い!優しそうな経理部門に聞いちゃお♪♪」みたいな。
もちろん経理部門は「社内の便利屋」ではありません。問題となった部門長に「再発防止のお願い」をすることになります。
5.ただの仲介屋?・・・最後は「中抜き」で対応【ケース3】
言い方が悪いですが、小悪党の名セリフ「上からの指示で仕方なく(コスト調査を依頼)・・・だから俺は悪くない!」です。経理は会社内の数値を集める役責上、他部署の担当者と良好な関係を保つことに注力しています。しかしこうなった場合はお互いのため。この担当者を飛ばして(「中抜き」して)、上職と直接やりとりすることになります。
以上、「続・工場経理のリアル」、いかがだったでしょうか。工場経理に限らず、最終的には「部署間のコミュニケーション」のお話に落ち着くテーマだったかと思います。ただあえてnoteに明文化しているのは「経理マンの職場(生態?)」を予め広く知っていただき、少しでも「工場経理上のコミュニケーション・トラブルを減らせれば良いなぁ」との思いで、小難しい原価計算の説明を交えてしてきました。
・・・あっ、小難しいと言えば、最新の原価計算理論の用語「ABC(活動基準原価計算:Activity Based Costing) 」って何?との意見も頂いていましたので、ABCを用いたコストマネジメント活動のである「ABM(活動基準コストマネジメント:Activity Based Management)」と併せて解説します。
☆補足説明:ABCとABMとは?【用語解説】
6.ABC(活動基準原価計算:Activity Based Costing) とは
ABC(活動基準原価計算)とは、Activity Based Costingの略で、会社の活動をベースにした原価計算という意味です。登場当初は「製品原価の歪み」を無くして、正しい製品/サービス原価を計算するシステムとして注目されました。ABCが登場する前の伝統的原価計算の一番の問題は「段取りに要した費用が新たな価値を生まない」としていることでした。
それに対しABCでは、活動に集計された原価を製品に配分するための配賦基準に、多様なコストドライバーを利用します。下図④のような「発注回数」「段取り時間」「検査時間」「出荷回数」を配賦基準にすることで、より正確に原価を計算することができます。
7.ABM(活動基準コストマネジメント:Activity Based Management)とは
そしてABCを用いたコストマネジメント活動のことをABM(活動基準コストマネジメント:Activity Based Management)といいます。上図④において、製品Aと製品Bを生産している中、「段取り時間」が製品Aで長く発生しているケースを見てきました。そこで下図⑤をご覧ください。
改めてABMは、原価計算手法であるABCをコスト分析する、業務効率の改善手法のことをいいます。「段取り時間」が製品Aで長く発生していましたが、ABMを適用することで業務改善を実施、結果、製品Aの原価が下がることになります。
あと注意したいのが製品Bです。単に「工場全体の製造間接費の配賦の問題」であれば、今まで負担していた製品Aの製造間接費がそのまま製品Bに「転嫁されただけ」になります。しかし製品Bが「デブ~な原価」になっていませんよね。これはABMによって(段取り業務の)業務効率が改善し、工場全体の効率UPしていることを意味します。
<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>
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