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YouTuberで自営業はアリか?~診断士2次試験の視点から考えてみた~

 キャリアコンサルタントの方から、”中小企業診断士の立場から見てYouTuberはどのように発展するか” の所見を求められました。とても光栄で嬉しいですね。ただ、”中小企業診断士の立場から見て” がネック。そもそも中小企業診断士は、サラリーマンにとって人気資格の一つだと思いますが、実は謎の多い資格でもあるのですね。そこで、この謎を紐解きながら、”中小企業診断士の立場から見てYouTuberはどのように発展するか” について私見を述べていこうと思います。

 では最初に、キャリアコンサルタントの方からのメッセージをご紹介致します。noteクリエイターのお一人。つのだこうじさんのコメントです。

つのだこうじさん

 昔からテレビで、専門家的な意見を求められるコメンテータの姿に憧れを抱いていました。これに一歩近づいた(!?)気がして、嬉しかったですね。しかもプロのキャリアコンサルタントの方から。ただ、”中小企業診断士の立場から見て” がネック。そもそも、中小企業診断士は何の専門家なのか?この立場を明らかにしないと・・・と、改めて考えるきっかけとなりました。よって、”中小企業診断士の立場から見てYouTuberはどのように発展するか” に対する見解は、当記事の後半に記載されていること、ご了承ください。

謎の多い資格 中小企業診断士とは?

 中小企業診断士という資格。この資格によって皆さんは何を想像されますか? 例えば、税理士は税の専門家。社会保険労務士は人事労務・社会保険の専門家。では、中小企業診断士は何の専門家? ということです。

 中小企業診断士は ”コンサルティングに係る唯一の国家資格” と言われます。コンサルティング業務をするのに特に資格が無くても出来るので、中小企業診断士には、独占業務はないのですね。事実、中小企業診断士には、私のように財務会計を強みとする人もいれば、マーケティングや情報システムを強みとする人、金融業界出身で融資制度を強みとする人等、多種多様です。一般的に”様々な専門分野と顔つなぎする立場”とも言われますが、まだスッキリしません。試験制度でどのようなスキルが期待されているか、を見ていった方が、核心に近づけるのではないでしょうか。

 では試験制度について、簡単に見てみましょう。1次試験と2次試験があり、1次試験は、経済学、企業経営理論、運営管理、財務会計、経営情報システム等と7科目からなる択一式試験と、事例Ⅰ~Ⅳの4科目からなる論述試験から構成されます。1次試験は、経営全般に関する幅広い知識を学習することから、”日本版MBA”として、サラリーマンにとって人気資格になる理由は良く分かります。では2次試験って何?ってことです。受験生の皆さんを苦しめるのは、2次試験の正体が不明だからではないでしょうか。書店の中小企業診断士受験コーナーを見ても殆どは1次試験対策本。2次試験対策本はほとんどありません。この中、メジャーな参考書は、私もお世話になりましたが ”ふぞろいな合格答案(2021年版は2021年6月21日発売)”。合格答案がふぞろいって・・・。謎は深まるばかりです。

 具体的な2次試験対策の記事は、事例Ⅲの攻略法(執筆中ですが)等、別の記事に割愛するとして、事例Ⅰ~Ⅳそれぞれ、”自分の型”を持つことで、2次試験攻略につながるのではと考えています。例えば事例Ⅰの場合、組織や人事の事例企業が出るので、組織構造上の問題は何か、従業員のモチベーションを上げるための有効な施策は何か等、予め組織・人事上の課題を想定して与件文を読み、質問文に丁寧に答えるという、答案作成のプロセスに対する”自分の型”を持つことが求められています

診断士模試結果

(上図は、受験生時代の全国模試の結果。数回受験のうえ平成22年度に合格。2次試験対策を語る上での参考資料として掲載させて頂きました。)

 中小企業診断士の資格を取得する人は、全て共通して”自分の型”を持っていること、それに各個人の仕事上の経験を上乗せして強みとしているものだと理解しています。よって、中小企業診断士として意見を求められた場合、”自分の型” に照らし合わせて回答し、この後の具体的な相談事項に寄り添っていくものだと考えています。もちろん”自分の型”は複数用意しておきます。実際に企業診断する際にも、最初の社長インタビューで複数の”自分の型”を用意し、一番適した”自分の型”を選び、中小企業白書等、様々な情報を取捨選択して社長に提案する流れが一般的ではないでしょうか。

YouTuberで自営業はアリか?

 では表題の、”YouTuberで自営業はアリか?” について、あてはめていきましょう。今回特に事例企業はありませんが、YouTuberの労働市場を紐解いていくわけですね。2次試験対策上は、マーケティングに係る事例である事例Ⅱに相当します。そこで中小企業診断士は考えます。市場を分析するにはどうするか?あってはいけないのは、偏った見方をしてしまって、市場の本質を見誤ってしまうこと。これを避けるために、”多面的な評価”が、実務でも2次試験対策上(事例Ⅱ)でも求められてきます。要は、モノの見方の切り口が大切ということですね。

 私個人は実際のマーケティング事例を見る際や2次試験対策上(事例Ⅱ)は、”3C分析” を自分の型にあてはめていました。

3C分析

(出典:3C分析とは? 活用のポイント、SWOT分析との違い、企業事例 2021年1月22日掲載

 3Cとは、Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競争相手)の頭文字を取ったもので、3C分析とは、マーケティング戦略を考える際に用いるフレームワークの1つで、大前研一氏が「ストラテジック・マインド ─ 変革期の企業戦略論」(1982年、翻訳本は1984年、プレジデント社)で提唱した概念です。以下、”YouTuberで自営業はアリか?” について、3C分析で、あてはめていきましょう。

  まず結論で言うと、YouTuberで自営業は”アリ”だと考えます。つまり、現在のYouTuberは収入を得る手段として確立しつつあり、今後の職業選択の一つとなり得ると考えます。以下の観点でも、YouTuberは労働市場として成り立つと思うからです。ただし留意点としまして、情報技術的にYouTubeにとって代わるアプリが開発される可能性もありますので、ブロガーやインスタグラマーなど、情報配信している職業全体として括って考える必要があると思います。

 第1にCustomer(顧客)の観点では、個々の視聴者の関心ごとが細分化されてきており、これに対応して広告主である企業もビジネス戦略の一つとしてインターネット上での動画によるPRや広告配信が増えることが予想されます。

 第2にCompany(自社)の観点では、一つの会社で勤め上げることは難しくなり、副業の手段としてもYouTuberとしての収入が期待できます。しかも機材等の初期投資もそれほどかからない。配信できるコンテンツがあれば、YouTuberとしてデビューする参入障壁が低いと考えます。

 第3にCompetitor(競争相手)の観点では、あくまで配信するコンテンツが勝負の世界なので、法人格を持った大手事務所が価格競争によって個人事業主を淘汰することも考えにくい。むしろ法人格を持った事務所が少なく、個人事業主が乱立する状態が予想されます。競争は厳しいですが、YouTuber市場自体が縮小という事は考えにくいです。

YouTuberはどのように発展するか?

 以上より、YouTuberは収入を得る手段として確立しつつあり、今後の職業選択の一つとなり得ることが予想されますが、大手法人がしのぎを削る産業までには至らず、多くが個人の副業収入の手段であり、この中で強力なコンテンツ配信できる個人が本業とするものだと思います。士業のビジネスに似通っているのではないでしょうか。以降、中小企業診断士としての所見というより、個人的な考えである点、ご了承ください。

 例えば税理士資格。昔は、資格を取得し、顧客の記帳代行さえすれば生計を立てて行けたと聞いています。他の士業も同様ではないでしょうか。資格を持って一般企業で勤めることは珍しく殆どが開業し、これ一本で生計を立てる時代が続いていました。しかし今では、資格を持って一般企業で働くことも珍しくありません。YouTuberの場合、昔の士業のように、”資格取得すれば一生安泰” の時期はありませんでしたが、今後を見据えると、士業とYouTuberの働き方は、コンテンツ配信によって自己をブランディングする点、似ているのではと感じています。

 他方巷では、副業解禁する企業の取り組みがニュースになっていますが、未だ時間が掛かる。現時点では副業禁止の就業規則が、足かせになっていると考えます。2021年6月現在、一般の大企業では先3年から5年の中期予算を見直している時期ですが、コロナ影響で大幅に削減された出張旅費や会議費の予算前提を見直しているところも多いと思います。人事評価に連動した人件費まで見直しているところもあるのではないでしょうか。事実、就業規則もこの人件費見直しと連動させると理解していますが、一般の大企業の間でも今は”様子見”の段階かと思います。ひょっとしたら、もっとスピード感をもって就業規則を改定してくる大企業も出てくるかもしれませんね。

 最後のポイントとなりますが、士業のビジネスを語るにあたって、避けて通れないのが、”ひよこ食い”。YouTuberの場合に当てはめるとどうでしょうか?

ひよこ

 最後にいきなり ”ひよこ食い” と、穏やかでないワードが出てきました。士業のビジネスにおけるひよこ食い とは、資格を取ったばかりの新人や、開業したばかりで食えない人たちを対象に、先輩の士業の連中が、例えば、高額セミナー等で新人からお金を巻き上げる行為です。高額であったとしても、貴重なノウハウが身につくのであれば良いのですが、たいていはそうはなりません。その背景には資格を取ったけども食えない膨大な数の士業の存在があります。そうした市場をターゲットにしてひよこ食いが行われ、将来的にはYouTuberの場合にも当てはまってくるでしょう。

 持論ではありますが、士業のビジネスで ”ひよこ食い” はあってはならないですが、YouTuberの場合は、ある程度仕方がないものだと考えています。もちろん、YouTuber個々人、ひよこ食いの存在を知り、わが身を守ることが一番大切ですが。

 少し青臭い話をしますが、士業の場合、国から資格をもらっているのは、その資格の社会的な使命や公益性があるからであり、ビジネスは二の次だからです。例えば、中小企業診断士の場合は、日本の99%を占める中小企業を支援することで日本を元気にする使命がありますし、税理士にも課税の公平性を守る社会的使命があります。なのに資格を取ったことを良いことに、後輩たちをビジネスの対象にする(食い物にする)のは、力の使い方を間違っていますよね。他方で、YouTuberの場合、公益性は士業と比べて低い。”炎上系YouTuber”はダメですが、ある程度仕方がないものだと考えています。

~この記事のまとめ~

✓ 中小企業診断士、特に2次試験は謎が多いが、”自分の型”をもっていることが大切。この上で、自身の経験を上乗せして強みとしているのでは。

✓ マーケティングの3C分析の視点からも、YouTuberは収入を得る手段として確立しつつあり、今後の職業選択の一つとなり得るのでは。

✓ 今後の副業解禁等で、YouTuberと士業のビジネスと通じるところがあるのでは。 ただし、”ひよこ食い”には要注意!

<以上、最後までお読み頂き、ありがとうございました。>

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