ひらこたつや

南山大学人文学部日本文化学科の教員(三流研究者・下っ端教員)。日本語諸方言(文献資料に…

ひらこたつや

南山大学人文学部日本文化学科の教員(三流研究者・下っ端教員)。日本語諸方言(文献資料に反映されたものを含む)を対象とした,記述言語学的研究と歴史言語学的研究を専門としている(つもり)。

最近の記事

日本語の歴史言語学の教科書を作りたい(妄想的構想)

この記事は,言語学な人々 Advent Calendar 2023 の12月22日の記事として書かれたものです。 ついこの前の土日,12月16日(土)と17日(日),南山大学で日本歴史言語学会の2023年大会がありました。1日目(16日)には,公開シンポジウム「日本語の歴史的研究と歴史言語学」が行われました。私が企画と司会,趣旨説明を務め,講演者は漢語アクセント史の加藤大鶴先生,文字表記史の尾山慎先生,文法史の小柳智一先生,の御三方(発表順)でした。オンラインと現地の同時開

    • 食品ロスと給食の残飯

      給食のご飯(お米)が残る量と,その日のおかずの種類には関係がありそうだ。ご飯にかけて食べる牛丼の具や,パンに挟んで食べるカツサンドのカツ,ソフト麺を入れて食べる汁物がおかずの時は,ご飯やパンやソフト麺の残る量が少ない。つまり,主食とおかずを一緒に口の中に運べるようなおかずの時に,主食の残りが少なくなる。 そんな考察を聞いたのは,上の子の小学校での学習発表会と呼ばれる会でのことでした。妻と連れ立って出かけ,「自分は食品ロスについて調べた。給食の話をすんだ」と言っていた子の発表

      • 比較言語学のススメ(?)

        この note は松浦年男先生が企画されたアドベントカレンダー 2022「言語学な人々」の24日目の記事として書かれたものです。 自己紹介私,平子は,日本語の諸方言の記述と,それに基づいた歴史変化に関する研究をしています。特に興味は,音韻の記述と歴史,もっと狭く言えば,アクセント(史)研究を専門にしている(と思われている)者です。 私がアクセント(史)研究に従事するようになったきっかけ,いろんな方言の調査をするようになった経緯などについては,以下の記事で書きました。ご参考

        • 必要なことは,求めていればやってくる?

          少しだけ,余裕が出来たところで。 今の職場に移ってから,英語に触れることが多くなった,という話です。 1年目は,英語で研究発表2件。そのうち1件は,英語論文化(まだ出版されてない)。 2年目は・・・特になかったか。 3年目も,特に何もない気でいたけど,6月くらいに,英語論文を書けとの依頼。そして,9月からは英語母語話者を大学院生に迎える。さらに,1月には,次年度に英語で授業をするように依頼を受ける(←いまここ) うちの大学は,元々外国語学部,というか,英米学科が売りの一つ

        日本語の歴史言語学の教科書を作りたい(妄想的構想)

          研究者としての成功って?など

          あるところで「分野にもよりますが、研究者として成功するかしないかは、指導教員が早期に見分けて別の分野に転向を促すって、良し悪しは別として「選択と集中」ですよね」というツイートを見かけました。 そこで,ふと,「研究者として成功する」って,どういうことなのだろうと考えたのです。考え方は色々あると思いますが,私は「いつどこで成功するか」を含めて,「成功する」の定義はそれぞれじゃないかなぁと思います。 大学院卒業後,比較的すぐにアカポスに「就職」できること。これは,分かりやすい「

          研究者としての成功って?など

          発表を終えて

          昨日,日本言語学会のWSで発表をしてきました。 東京外大の風間先生にお声かけをいただき,風間先生・伊藤英人先生と共に「日本諸語の形成に関する総合的アプローチ ―大陸倭語・八丈型基層語・アクセントの分布と機能の 3 つの観点から―」というWSをしました。私は「アクセントの分布と機能からみた日本諸語の歴史」として発表しましたが,新しいことはなく,なんか自分のアクセント史研究のまとめ,みたいになってしまいました。 さて,久々のnote。今日はその中身の話ではありません。実は,F

          発表を終えて

          想像力について

          大学のお勉強は社会で役立たない!という人に対して,私はちゃんと反論できる気はしません。ただ,もし「大学のお勉強」と言われるものの中に「研究」が入るなら,大学では,ちゃんとした知識と経験に基づいて,より妥当に「想像」できる力を養うことができて,それは社会でも役立つと思います。 研究では一般に,先行研究や予備的な調査・実験からあり得る仮説を導き出し,それを検証するということをしますが,その「先行研究や予備的な調査・実験からあり得る仮説を導き出」すということが,研究においては,実

          想像力について

          新年度

          新年度となりましたので,抱負というか,計画のようなものを。 【研究】 基本的には,これまでの延長としてやっていきます。いくつかの研究が複線的に走ります。 1:科研費プロジェクト 「日本語比較音韻論研究の新展開:東国系諸方言の調査研究から」(若手研究,2021-24)  新規の科研費課題ですが,私の研究全体の中では,出雲の話からのつづきものです。「新展開」とかうたってますが,手法とかについて新しいことはありません。各方言の音韻論をちゃんと記述して,厳密に比較方法を用いる。

          2020年度の振り返り

          今年度の振り返りです。(noteって,こういうこと書くとこじゃない!?) 【業績】 1:出版・公刊されたもの 「出雲方言アクセントの分布と歴史−−2拍名詞4類と5類のアクセントをめぐって」『筑紫語学論叢Ⅲ:日本語の構造と変化』(風間書房) 100-135,2021年3月. 「丸山徹著『キリシタン世紀の言語学−−大航海時代の語学書−−』『南山大学日本文化学科論集』21:37-43,2021年3月. 「奥出雲のことばから「日本祖語」の姿を探る:伝統方言の記述と日本語の歴

          2020年度の振り返り

          アキャーさん!!

          やると言っておきながら,やらずにいたコナンの話です。 https://youtu.be/59qM7uU-apI まず,最初の「アキャーさん。どえりゃーときが,きてまったみたいだわ」(赤井さん,とんでもないときが,きてしまったみたいだ)というセリフから。 冒頭の「アキャーさん」(赤井さん)で,こりゃかん!と思ったところもありますが,まぁ良いです。尾張方言では,日本語(標準語)の-ai(ae)-にあたる母音連続は,2つの母音が融合して,æ(の長母音)という発音になります(英

          アキャーさん!!

          【個人的な補足】Covid-19の影響下に おける方言研究のあり方を模索するWS 第二弾

          九大の下地さん(下地ゼミ)主催のWS,第二弾。昨年5月の第一弾に続いて,私が関わった卒論研究の事例紹介をしました。相変わらず強調したのは「仮説とその検証が大事」ということだけで,なんか半ば,精神論に近いところもあって,自分で発表してても,実践的じゃないなぁと思いながら話していました。まぁ私の前のお二人,さらに私の後のお二人,そして,学生さんたちの発表で,その点は補われたものと思います。 今日の発表で最後言えなかったことが2つ。 1つはTwitterにもチラッと書きましたが

          【個人的な補足】Covid-19の影響下に おける方言研究のあり方を模索するWS 第二弾

          節目の2本

          2021年3月23日,偶然にも同じ日に手元に届いた拙論所収の雑誌1つと論文集1つ。どちらも,私にとっては節目になるものです。 学科紀要(『南山大学日本文化学科論集』第21号)に掲載されたのは「丸山徹著『キリシタン世紀の言語学ー大航海時代の語学書ー』」。前任の丸山徹先生の御著書の紹介文です。 私が南山大学に着任したのは2年前,2019年4月。御定年後,再任用の3年を終えられた丸山徹先生の後任としてでした。 丸山先生は,言わずと知れたキリシタン文献語学書研究の第一人者,言語