フィールドワーク2日目(本当の1日目)

4つの単語しか聞くことができず,2つの単語しか記録に残せなかった1回目の5月調査から2週間ほど,やってきました2回目の調査です。実質的なフィールドワーク1日目。

今回は電車+レンタカーで移動

今回の調査は,前回とは違う場所(協力者の方のご自宅)で。山奥のダムの方まで行かなくて良いのと,移動時間の計算がしやすいということもあって,岐阜駅までは鉄道で移動して,そこからレンタカーで向かった。

電車の中で,予習。先行研究に改めて目を通したり,今回やるつもりの調査項目の確認をしたり。ちなみに,今回は身体部位を表す語彙の調査を予定。

前回,なかなかOKがもらえなかった「私たち」を表す単語についても,聞き直しをしたり,Praatで音声波形を見たりして,練習しまくってきた。OKもらえるかなぁ・・・と思いながら。

岐阜駅から50分くらいで,調査地に着。前回,全行程を車で来た時に,朝と休憩で立ち寄った公園の近くだった。

ということで,調査開始。

まずは前回の復習から

さて,何はなくとも,まずは前回の復習からである。
全然OKもらえなかった「私たち」という語の発音。「練習してきたので,聴いてください」と申し上げて,2〜3回発音。あっけなく「OK」をもらえた。拍子抜けして,心配になって,何度か繰り返したけれど,やはり「OK」。どうやら,コツを掴んだようだ。

私は通常,まず,聞き取った音声をIPA(国際音声記号)を使って,ノートに記録し,その書いた通りの発音を繰り返して,確認を取る。
それでOKがもらえたら,改めて自分の発音した通りに,自分の調音器官の動きの通りに,ノートに記録しているかを確認して,表記を調整。IPAがすぐに思い浮かばなかったり(特にdiacriticの類とか),気になるところは,「日本語」で書く。

この「書いた通りに発音し,それでOKをもらえるかを確認する」というのが,私は大事だと思っている。そこにはいくつか理由があるけど,今日はその中の1つを紹介。

IPAも絶対ではない

IPAは,原理的には,同じ記号であれば,誰が発音しても,同じ発音になるもの。でも,実際にはそうではないと思う。[i] という母音は,その原理では,限界まで口を狭くし,限界まで舌の最高点を前の方にし,そして,唇は一切まるめない。
 もちろんそうすれば,ほぼみんな同じ発音になるけど,微妙な違いはある。[i]のように,IPA母音図の四隅にあるような母音の場合,その「微妙な違い」の違いは大きくないだろうけど,間にある[e][o]などは,それこそ「人によって」違うはず。ある人が[i̞ ]と書くものを,[e]と書く人があってもいいし, [e̝ ]と書くものを [i]と書く人もいるかもしれない。
 つまり,同じIPAを使って表される発音でも,全く同じ発音が表されるわけじゃないということ。IPAも「絶対」ではない。

自分の発音を基準にする

IPAはある程度の指標とはなるけど「絶対」ではない。もちろん,ちゃんとした原理を抑えることは大事。ただ,実用的には「絶対」でないことを前提に,ある種の基準として使うように,私はしている。そして,この記号で書いたものはこの発音,というのを自分で決めておいて,そこからどれくらいズレているか,という形で,実際発話されたものを記録する。邪道かしら。
 とにかく,そして,そうして書いたものについて,それが自分でどのような発音を表したはずなのかをちゃんと自覚し,その書いたものの通り(だと自分が思うように)発音する。そのうえでOKをもらえれば,ノートに書いたものから,少なくとも自分は,元の音声を再現できるはず。
 そんなふうにして,今回もやってみた。皆さんはどうしてるんでしょうか。いろんな人らの「実践」方式を知りたいな。