【噛んで砕こう】ビールの歴史#4「中世のビール③」
前回はこちら。
今回のお話でかなり現在のビールに近づいていきます。
「こうやって今のビールができていったのか」としみじみと感じながら飲むビールもまた乙なものですよ。
グルートとホップ
現在ビールにはホップが使われているというのは至極当然なことですが、そうなったのも中世のことです。
ビールが誕生したのは紀元前3000年なので、4000年以上に渡ってホップのないビールが飲まれていました。
そこで、中世ヨーロッパでホップの代わりに使用されていたのが『グルート』です。
グルートは薬草などを独自で配合したもので、ビールの腐敗防止や香味づけの効果がありました。
主な材料はヤチヤナギ、アニス、フェンネル、コリアンダー、セイヨウノコギリソウなどとされていますが、配合は企業秘密だったようで文献には残されていません。
また、グルートの製造は領主、修道院、都市などが独占しており、グルート権としてビール醸造業者に販売して利益を得ていました。
グルートを使ったビールしか販売出来ない決まりを設けたりと、グルート権はビール醸造権と並んで都市の大きな財源となりました。
一方その頃ホップはというと、存在自体は確認されていました。修道院にホップ園などもありましたが、当時はただのハーブの1種でありビールに使うということはありませんでした。
ビールにホップを使用するのが主流になったのは15世紀のことです。
ドイツのハンブルクではこの頃ビールの輸出が盛んになり、ホップを使用したビールの腐敗防止効果が抜群だと広まっていきまたし。
味、香り、耐久性の面などからホップビールが一般的になっていき、グルートビールは衰退したんです。
ビール純粋令
世界最古の食品の品質保証の法律としてしられるビール純粋令です。
1516年ドイツ南部のバイエルン公国君主ウィルヘルム4世によって発令されましま。
『ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし』という内容です。
北ドイツのアインベックで醸造されるビールの質が高く、そのビールに追いつく為の法令です。
余計なことをせず、安定した品質のビールを作るというのが目的なんでしょうね。
そしておわかりの通り、グルートはここでビールに一切使用されなくなり、ホップは必要不可欠な存在となりました。
ビール純粋令には安定した品質のビールを作ること以外にもう一つ目的がありました。
食糧政策です。
小麦やライ麦がパン作りに優先されるようになり、不作の年を乗り切ることができました。
一方、ヴァイツェンというビールには小麦を使用しますが、領主直営の醸造所だけが例外としてヴァイツェンを醸造していました。
その為、ヴァイツェンは「貴族のビール」と呼ばれるようになりました。