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噛んで砕こう世界遺産#0' 「続・世界遺産とは?」

どうも!
水島ひらいちの涼です!

前回の記事はこちら。

前回の記事をまだご覧になられていない方は是非そちらからお読み下さい。

早速日本の世界遺産の紹介をしたいと思っておりましたが、まだまだ世界遺産の基礎知識について伝えたりないなと思い引き続き「世界遺産とは」ということで筆を執らせて頂きます。
申し訳ございません!
長いです。

前置き

今回は世界遺産の基礎知識をさらに詳しく紹介させて頂きます。

世界遺産の存在意義や世界遺産が生まれるまでの流れ、世界遺産に備わっている詳しい特性などお話出来ればと思います。
普通に生きていく上では不要な教養ですので、少し難しい内容になるかもしれませんが
ご了承願います。
世界遺産検定を受験する人向けです。

改めて、世界遺産とは…
世界中の様々な文化財や自然環境を「顕著な普遍的価値」を持つものとして「世界遺産リスト」に記載されている不動産のことです。
これは1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約に記載されています。

ユネスコとは国際連合教育科学文化機関のことで、平和な世界の実現と福祉の促進を目指した組織のことです。

世界遺産条約

全8章38条からなる条約。
どういった内容のものなのか、一部例として挙げますね。

・文化遺産や自然遺産の定義
・世界遺産リストと危機遺産リストの作成
世界遺産委員会世界遺産基金の設立
・遺産保護の為の国内機関の設立や立法、行政措置の行使
・国際援助について
・世界遺産を保護、保全する義務や責任はまず保有国にあること
・締約国は遺産の保護、保全に協力すべきであること
・締約国による教育、広報活動の重要性
・世界遺産に社会生活の中で機能、役割を与える必要性

この条約では、世界遺産を過去のものと考えるのではなく、今まさに生きて意味をもつ遺産として残してゆくことが求められているんです。


世界遺産誕生までの流れ

1972年世界遺産条約が出来るまで、文化財保護と自然保護は別々の枠組みで行われていました。
文化遺産と自然遺産をひとつの条約の下で保護している点が世界遺産条約の大きな特徴です。

さて、そんな世界遺産条約が出来るまでも建造物や自然を保護する取り組みは当然ありました。
それではどの様な流れで世界遺産という概念が誕生していったのか、時系列を追って見ていきたいと思います。

-1872年- イエローストーン国立公園誕生
自然保護を目的とした世界最初の国立公園
手つかずの自然を意味するウィルダネス(Wilderness)という考え方を樹立

-1931年- アテネ憲章採択
歴史的な建造物の維持や保護の重要性を説く
修復時に近代的な技術や材料の使用を認めている点が世界遺産条約と大きく異なっている

-1945年- ユネスコ憲章採択

-1948年- IUCN(国際自然保護連合)設立
国や民族などを超えて自然を守ってゆく方法が整えられた

-1954年- ハーグ条約採択
別名「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約
国際紛争や内戦などの非常時に文化財を守る為の基本的な方針を定める

-1959年- ICCROM設立
文化財の保存及び修復のための国際センター

-1960年- ヌビアの遺跡群救済キャンペーン
一国の遺跡に対して「人類共通の遺産」という理念が生まれた

-1964年- ヴェネツィア憲章採択
アテネ憲章同様建造物の保存・修復の重要性を引き継ぐ一方で、アテネ憲章とは異なる「修復の際には建設当時の工法や素材を尊重すべき」とする真正性という概念が示された

-1965年- ICOMOS(国際記念物遺跡会議)設立

-1972年- 世界遺産条約採択
前項参照

-1978年- 最初の世界遺産12件誕生

-1992年- 日本が世界遺産条約締結
翌年、4件が世界遺産として登録される

詳しく説明出来ていない単語に関しては後ほど説明させて頂きます。
文化財よりも自然遺産の保護の歴史の方が古いですね。
また、文化財保護・修復の考え方が変化してきたことは書きましたが、世界遺産条約が出来てからも概念の変化は続いています。


文化的景観

人間が自然と共につくり上げた景観を指す概念で、文化財に分類されます。
元々世界遺産は記念物や建物がつくられた当時のまま残されていることが重視されていました(ヨーロッパの協会等風化しにくい石の文化に属する遺産ばかり登録されていた)が、それでは世界遺産リストに不均衡(不平等)が生じる為、その是正の為に1992年に採択されました。
この考え方により、今まで以上に柔軟に文化遺産を捉えることができるようになりました。

翌年、1993年にはニュージーランドのトンガリロ国立公園で初めて文化的景観の概念が適用されました。

また、文化的景観を適用する際には3つのカテゴリーに分けて考えます。

-意匠された景観-
庭園や公園、宗教的空間など、人間によって意図的に設計され創造された景観
 
-有機的に進化する景観-
社会や経済、政治、宗教などの要求によって生まれ、自然環境に対応して形成された景観
 
-関連する景観-
自然の要素がその地の民族に大きな影響を与え、宗教的、芸術的、文学的な要素と強く関連する景観

更に、1994年にはグローバル・ストラテジー(正式名称:世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性、信用性の確保のためのグローバル・ストラテジー)が採択されました。
選考基準の見直しや世界遺産を持たない国からの登録強化、登録の少ない分野の遺産の推薦などを推奨する戦略です。


世界遺産基金

さて、いきなりですがここでお金の話をしたいと思います。
世界遺産の保護・保全義務はその保有国にあるということはご理解頂けたかと思いますが、一国が遺産にかけられるお金には当然限界がありますよね。
そんな時にこれ、「世界遺産基金」です。
この基金は世界遺産の価値を守り伝えていく為に、ユネスコの財務規則に基づく信託基金として設立されました。
締約国の分担金(ユネスコ分担金の1%)や政府機関、団体、個人からの寄付金をもとに運営しています。

世界遺産基金を使用できるシーンは決まっており、抑えておきたいのがこの3つです。

-緊急援助- 大規模な災害や紛争被害に対する援助 
 
-準備援助- 推薦書や暫定リストなどを作成する為の援助
 
-保全・管理援助- 専門家や技術者の派遣や保全に関する技術提供の為の援助

分担金の最大拠出国であったアメリカがパレスチナのユネスコ加盟に反対して2011年より分担金の支払いを停止しており、厳しい予算状況が続いている様子です。


広大すぎる!世界遺産

世界遺産は文化遺産が大半なのでお城や宮殿などの建造物のイメージが強いかと思いますが、自然遺産となるとその範囲は時に想像を絶するものとなっています。また、歴史的な背景を考慮すると捉え方が一筋縄ではいかない文化遺産などもあります。

トランスバウンダリー・サイト(国境を超える遺産)
多国間に広がる遺産で、その国々の協力の下で遺産を保全していくことを目指す
もちろん文化遺産でも多国間に跨がっている場合は適用されます
【例】
ワッデン海(オランダ-ドイツ-デンマーク)
ベルギーとフランスの鐘楼群(ベルギー-フランス)
 
シリアル・ノミネーション・サイト(連続性のある遺産)
文化や歴史的背景・自然環境などが共通する資産を、ひとつの遺産として顕著な普遍的価値を有するものとみなし登録するもの
【例】
福建土楼群(中国)
カムチャッカ火山群(ロシア)


世界遺産に関する機関の解説

最後に、ややこしくなりがちな世界遺産に関係している機関について説明させて頂きます。
用語としては既に出てきているものなので、一部重複していますが悪しからず。

-世界遺産条約締約国会議-
世界遺産基金への分担金の決定や監査、世界遺産委員会委員国の選定の他に、世界遺産委員会から提出された活動報告書を受理する
 
-世界遺産委員会-
21ヶ国で構成され、1年に1度開催
世界遺産リストの記載に関する審議や危機遺産リストの審議、世界遺産基金の使途の決定や登録遺産の保全状況の審査などを行う
委員国の任期は6年ですが、各締約国に均等に機会が与えられるように自発的に4年で任期を終えることや、任期終了後次の立候補まで間を6年あけることなどが求められている
 
-世界遺産センター-
パリのユネスコ本部内に常設(1992年設立)
各国からの推薦書の受理や登録、世界遺産委員会の運営、世界遺産の広報活動などを行う
 
-ICOMOS-
国際記念物遺跡会議(1965年設立)
フランスのパリに本部を置くNGO
ヴェネツィア憲章の原則を元に設立
推薦された文化遺産の現地調査を行う
 
-IUCN-
国際自然保護連合(1948年設立)
スイスのグランに本部を置く世界的組織
自然の多様性を保全し、持続可能な自然資源の利用を行う為に、世界中の科学者を支援することを目的としている
推薦された自然遺産の現地調査を行う
 
-ICCROM-
文化財の保存及び修復の研究のための国際センター(1959年設立)
本部をイタリアのローマに置く政府機関
不動産と動産両方の文化遺産の保全強化を目的としている


終わり

最後まで読んで頂きありがとうございました。
長くなりましたが、これにて世界遺産の基礎知識についての紹介は終了です。

次回からは早速日本・海外の世界遺産について記事を書いていきますので、引き続きよろしくお願いします!














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