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【続編】宅習を取り組ませてみた

 この記事は続編です。前記事をご覧になってない方は以下のリンクより記事を読んでおくと、この記事の内容が入りやすくなっておりますので是非ご覧ください。

 さて、今回は宅習に疑問を呈してから3年ほど経過し、宅習について試行錯誤しながら考えている中で、実際に私の学級で実施してみました。その中で多くのことを実感したので、実施前から現在の状況までお伝えしします。
 予め知っていただきたいのが、私の勤務している学校は小規模校で1学年1クラスです。つまり、学級担任の決定がそのまま実行しやすい事情があります。クラスが複数ある学年では他クラスと歩調を合わせる必要があるので、十分に話し合いをする必要がありますのでご注意ください。


1.宅習を実施するまで

 まず、宅習を実施するにあたり、さまざまな工夫を施しました。前記事でも話している通り、ただ生徒にやらせているだけでは効果がないと思っているので、私の実践をご紹介します。

⓪ 宅習実施までのスケジュール

 まずは、宅習を実施するまでの流れをご紹介します。

まず、4月の家庭訪問で家庭学習について尋ねます。当然ですが、中学生はまだまだ子供ですので、ほとんどの生徒が自ら積極的に取り組めているわけではありません。特に宮崎県は田舎ですので、学習塾はまだまだ少なく個人の家庭学習力が身についてない生徒が多いです。そのような事情もあるので、先手を打つ必要があります。まず宅習をする意義を生徒に納得させるために根回しを行います。具体的には、生徒に「家庭学習を充実させたいか」を尋ね、保護者の口から「もっと家庭学習をさせてほしい」という言葉を引き出すようにします。心理テクニックみたいな言い方ですが、実際は学力は生徒も保護者も気にしていますので、ほとんどの人が同意してくれます。こうすることにより、宅習をするのは生徒の願いと保護者の願いを聞き入れて実施するという大義名分が得られます。

 次に1学期中に宅習を実施することを伝え、ゴールデンウイークまでに学級会を開いて生徒の意見を集めます。ここでは「学級全体が納得できる意見を集めること」「生徒全員の意見を集めるが、決定するのは学級担任」という原則を崩さないようにします。この2点については、のちほど詳しくお話しします。

 最後に、決定したことを試行期間として一定期間実施し再び意見を集めることです。ここで出てきた改善点はすぐに修正し、改めて全体に提案し、最終決定をします。

この流れで意識していることは「全員が納得して宅習に取り組めるようにする」ことです。教師主導で進めてはいるものの、大義名分や決定の根拠を生徒や保護者が納得できるよう工夫しています。

① 学級会は「提案者」の立場で臨む

 学級会といえば通常、学級委員長や副委員長、書記など学級の中心となるメンバーで会を進行させますが、宅習に関することは教師の提案ですので、学級会では教師主導で進めていくことが必要になります。
 このとき、教師は「提案者」という立場で学級会に参加します。つまり、反対意見を押しのけて自分の考えるとおりにするのではなく、生徒から出た意見をなるべく取り入れ、反論も根拠のある納得した意見にするよう努めます。

② 宅習の「お手本」を大量に用意する

 前記事でも話した通り、宅習の大きな問題点は「どのようにノートに取り組めばいいか分からない」という点です。特に低学力の生徒は口をそろえて言います。
 そこで、教員が宅習ノートを実際に作りお手本として披露するのがとても有効な方法です。子供から見ると先生が宅習ノートを書くことは珍しいことですし、関係を築けていれば興味を持ってくれます。ここでは、私が自作したお手本を以下に示します。あくまで一例ですので、参考になることがあればそのまま活用してください。教科ごとにポイントを併せて紹介します。


2.宅習ノートの手本例

 ここでは、私が書いた手本を示します。各教科に共通するポイントは「基本は鉛筆で書き、赤ペンで補足説明を書く」ことと「余白を持たせて見やすくし、約30分で終わらせられる内容にする」ことです。これは、後から見返しやすいようにすると同時に、ただでさえ勉強・部活・生徒会活動で忙しい中学生に、宅習ノートに時間をかけさせないよう負担を軽減することを目的として作成しました。

1.英語


英語(単語と例文)

 まずは英語です。先生によっては英語ノート(英語用の罫線のあるノート)を活用する場合もありますが、ここでは通常の大学ノートでまとめる例をご紹介します。
 これは単語と例文にプラスαの知識をまとめたものです。左側に英単語で右側に例文を並べ、補足の知識を赤ペンで書き足しました。英単語は1単語に1つの意味を紐づけるだけでは効率が悪く、例文で活用の仕方を理解しやすくしたり1つの単語や例文で様々な予備知識を蓄えたりすることで効率的に学習を進めることができます。

2.国語

国語(ノートを横向きに使う)

 次は国語です。写真はあえて横を向かせています。これは国語をする際はノートを横向きに使わせるということです。他教科とは異なり、国語は縦書きで読み書きするためで、漢字や文の構造、古文(歴史的仮名遣い)の3種類をまとめたものです。注目してほしいのは漢字です。漢字は2行使って大きく書く練習をさせることがとても重要です。大きく書くことで部首や漢字を構成するパーツを理解しやすくなり、漢字の書き間違いを減らすことが出来ます。

3.社会

地理(九州地方の農業ほか)
歴史(表や組織図を使って複数の時代を比較)

 社会は暗記教科と言われますので、歴史では重要語句とその意味を紐づけて理解しても構わないのですが、ノートにまとめる時は情報を比較して、知識を整理しながらまとめると効果的です。地理も同様に、簡単な地図を書いて場所をおさえながら地図の周囲に知識をまとめていくと、一気に整理して覚えやすくなります。

4.数学

数学(スペースに余裕を持って)

 次は数学です。数学は知識をまとめるだけでなく、実際に計算練習をしてノートを埋めることになりますが、余白を詰めて書くと後から見返しにくくなります。スペースに余裕をもたせて書くといいです。また、英語と同様に補足の知識や説明を赤ペンで書くとさらに充実した学習になります。

5.理科

理科(分類や表を活用)

 最後は理科です。理科も社会と同様に、表や分類をしながら複数の知識をまとめて覚えるといいです。また、手本にはありませんが、理科は知識だけでなく「実験」も習います。実験でわかること、道具の名前や実験の手順などを整理して覚える必要があります。

3.宅習をマンネリ化させない小ワザ

 宅習を実施してみたものの、結局は提出するだけなのでマンネリ化しがちです。生徒のやる気を維持するために、実際に私が実践していることを紹介します。

1.宅習コンテストの実施

 まず1つ目はコンテストの実施です。生徒の宅習をコピーして掲示し、アンケートを取って順位を決めます。コンテストを行うことを事前に予告し、一定期間宅習をチェックしながら良い取り組みをしているノートのコピーを取っておきます。コンテスト当日は、生徒の名前を伏せるのが効果的です。名前が全員に分かると、学力上位者や人気者に票を入れてしまうからです。これらの取り組みを通してモチベーションを上げることが出来ますが、これらのコピー用紙をお手本として再活用することが出来ます。教師のお手本も効果的ですが、生徒のお手本はより身近なので真似をしやすく、効果的です。一石二鳥にもなる宅習コンテストはオススメの取り組みです。

2.中学生でも嬉しいシール作戦

 成果物にシールを貼って返却することで、モチベーションを上げさせる教育方法があります。専門用語で「トークンエコノミー」と呼ばれるこの手法は小学校で良く使われていますが、中学生も意外と喜びます。
 宅習の取り組みでは、さまざまな活用方法があります。例えば「3人だけ他のみんなとは違うシールを貼る」という取り組みはとても良かったです。これを不定期で行うのが効果的だったと思います。定期的にしてしまうと、その時だけ頑張るようになってしまい、目的をはき違えてしまいます。
 また「ノートを終えた時専用のシールを貼る」のも効果的です。最後のページまで取り組んだご褒美を与えると次の宅習ノートも意欲的に取り組んでくれます。


4.まとめ・今回のオチ

 今回は、宮崎県独自の取り組みである「宅習」について、私の実践を中心に紹介しました。宮崎ならではの独特な取り組みを全国の方に知って頂きたい思いと、宮崎県で学校の先生をしている人の参考になってほしいという思いで今回の記事を作成しました。特に、自分の学級で取り組む前の導入段階から、実際の取り組みを意欲的に継続できる方法を紹介しました。
 ちなみに、私は宅習推進派でもありませんし、宅習以外の家庭学習法もたくさんあると思います。今の学校では、学習塾が少ないという地域の事情を踏まえて、宅習の取り組みをしています。
 前の投稿で、教員を1年後に辞める宣言をしましたが、いざ退職後に何をしようかと考えてみると、スキルがなく何をしていいか分からないので、少し焦っています。書店に立ち寄ると、副業やYoutubeで稼ぐみたいな本に目が行きがちで、つい立ち読みしてしまいます。Youtube投稿を続けることの大変さは実感済みです。大学4年生の卒業前にノリで始めた登録者20人のチャンネルが未だに存在しています。そろそろ動画投稿もこのnote記事みたいに定期的に投稿した方がいいですよね。でも、食欲の秋ということもあり、チャンネル登録者より体重がどんどん増加しそうです。ほなまた。


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