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お米って種なんだよなあ

こんにちは。ヒライユウキです。
家族の創業地である100年の時が流れる家「日詰平井邸」に残された醸造所の復活を目指しています。

お酒造りをしていた時「お米って土みたいだなあ」ということをよく考えていました。

日本酒とはお米からできているということは、もはや言わずもがなという感じなのですが、お酒造りの工程でいろんな菌を米に植え付けます。

たとえば麹菌

これはいわゆるカビの一種で、麹菌の胞子(種)を蒸したお米に振りかけてわざとカビを生やすのです。麹菌が生育していく過程で必要な栄養分はお米から供給されるのですが、でんぷん質やたんぱく質をエネルギーとアミノ酸に分解するために酵素(こうそ)というものをつくります。

言ってみれば、酵素とは麹菌にとってナイフのようなもので、でかいデンプンやタンパク質を食べやすい大きさに切り分けるような働きをします。正確には、酒造りに必要なのは麹菌そのものではなく、この酵素を利用しています。

しかし、この酵素は麹菌の成長のさせ方や環境によって量や種類が大きく異なります。

農業でたとえると、土(米)によって作物(麹菌・酵素)のでき方が変わってくるわけです。そういう意味で、酒造りにおいて「米って土みたいだなあ」というわけです。

酒造りではアルコール発酵の主役である酵母(こうぼ)や介在する乳酸菌などたくさんの微生物が登場しますが、やはり同様で、環境によって動き方や代謝物(香り、味)が変わるのです。

土の土を知ること

うっかり忘れてしまいそうになるのですが、お米って稲のタネなんですよね。

お酒造りにとっていい「土」をつくるためには、お米にとっていい「土」を田んぼに準備してあげなければいけません。お米自体の品質がどうとかいう話ではなくて、私は以前お酒を造っていた時、目の前のお米がどんな土で育ってきたのか知りませんでした。

どんな農家さんも自分の田んぼや畑の土がどんなものかを理解して、肥料計算や水の加減をするはずです。でなければ、作物が急に元気が無くなったり病気になったりするリスクを予防できないからです。

醸造家にとって農業とは、単なるストーリー作り、販促ポーズでは決してなく、お酒を造る上でとても大切なことを教えてくれると考えています。

農業を語るには到底、まだまだ浅すぎますが、醸造家としてお米づくりはこれからも楽しんでいきたい大切なテーマのひとつです。

お米って種なんだよなあ

日詰平井邸の醸造所で造るクラフトサケ

米、米麹、水のもろみに、もち米発芽玄米麹を使ったサケ過ぎるコンセプト「Re:vive」

と、

Re:vive のもろみに、フルーツやスパイス、ハーブなどを使った自由過ぎるコンセプト「layer」

を計画しています。

Re:vive の副原料として発芽玄米を使用するアイデアは、お米の「種」としてのパワーを酒造りに活かす発想から生まれました。

植物の種には、芽を出して、葉っぱが開いて、根っこが張って、成長に必要な栄養を吸収する・作り出すまでの当分の間に必要なものがギュッと詰まっています。

もちろん、お米も例外ではありません。

しかし日本酒を造る時、ほとんどの場合はその何割かを磨き落としてから使います。当然ながら精米をする理由はあるのですが、種が持っているパワー=酒造りの土壌としてのチカラを少なからず捨てていることになります。

種が持つエネルギー

じゃあ100%のお米、つまり玄米でお酒を造ればいいかというと、たくさんの課題があります。

たとえば、お米というのは種なので、発芽できる環境が整うまで種のDNAを保存する役割があります。外敵や環境の変化から種を守るため、玄米の表面は果皮に覆われており、冒頭で紹介した麹菌は根を伸ばすことが困難。つまり酵素が効かず、酒造りに利用することは難しい。

そこで、発芽させるわけです。発芽させることによってお米は、

「よっしゃ芽を出してぐんぐん成長したるで」

というモードに切り替わります。すると、蓄えられていた栄養分が保存状態から消費されやすい状態に変化します。さらに芽が出ることによって表面を覆っていた果皮に隙間が生まれ、物理的にも麹菌が活動しやすい状態になるのです。

一般的に磨き落とされがちな表面付近にはタンパク質や脂質、ミネラル分、ビタミン類など生物の活動に必要な栄養分がたくさん含まれています。これを程よくもろみ、つまり酒造りの土壌に供給することで、酵母などの動きが活性化します。

しかも技術的に厄介でありつつもエネルギー源として優秀な、紫波特産もち米の玄米を発芽させて麹にします。

酵母が元気になるということは、香りや味わいの表現の幅がより広くなるということです。よりジューシーでふくらみのあるお酒を造ることができるのではないか。そういう魂胆です。

余すことなく使うこと、感謝すること。

こういう発想は、もしかしたら自分で酒米づくりに2022年初めて挑戦し、多少農家さんの気持ちが分かったからかもしれません。

お米づくりは土づくりからだし、真夏の炎天下に畦道の草刈りして大切に育てた酒米たちは一粒も無駄にしたくない。

※とはいえ私は決して低精白信者ではありません。酒蔵みんながお米を削らなくなったら田んぼが埋まらない農家さんはたくさんいます。

種が持つエネルギーを酒造りの土壌として余すことなく利用して、そこに息衝く微生物たちによる営みを豊かに表現すること。私がずっと大切にしていたお酒造りの「画」が、奇しくも、無意識に、今に繋がっていることにたまらなくワクワクしています。

クラウドファンディング挑戦中!

醸造所の復活に向け、 Makuake にてクラウドファンディングに挑戦中です。日詰平井邸に復活した醸造所で最初に造られるお酒や仕込体験会などのイベントをご用意。

​ぜひ一緒に新しい歴史の一歩を踏み出しましょう。

このnoteは日詰平井邸 醸造所復活に向けた宣言であり、その過程をまとめるものです。ぜひ ♡ で応援いただけますと幸いです。

■日詰平井邸 醸造所復活へのミッション

□ 酒類製造免許を取得せよ
□ 原料を確保せよ
□ 作品と製法を確立せよ
□ パートナー酒販店を集めよ
□ 設備を整備せよ
□ お金を集めなさい

▼日詰平井邸 公式サイト
https://www.hiraroku.com/

▼日詰平井邸 インスタグラム
https://www.instagram.com/hiraitei1921/


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