【極私的】2020年ドラフト指名寸評【パ・リーグ編】

■ソフトバンク
チームの育成力を信じた余裕の高校生狙い撃ち指名

野手の高齢化が進んでいるため、4位までをすべて野手で固めたのはチームのウィークポイントはちゃんと押さえている。佐藤輝明(近畿大)を外した後に高校通算50本塁打の井上朋也(花咲徳栄)を指名するなど、将来性豊かな選手指名は好感が持てた。

ただ、レギュラーの大半が20代後半、37歳の松田宣浩、35歳のグラシアルらは来季も同じパフォーマンスを発揮できるかが疑問なだけに、佐藤以外でも即戦力になりうる大学生野手を獲るべきだったのでは?とも思う。現在の戦力によっぽど自信があるんだろうけど、今年指名した選手たちが伸びなかったら大きなロスになるだけに、チームの育成力にもよほど自信を持っているんだろうね。

ポスト甲斐拓也の期待ができそうなのが牧原巧汰(日大藤沢)。甲斐のように一芸に秀でたタイプではなさそうだけど、打撃技術は数段上。打てる捕手として大成するかもしれない。


■ロッテ
名も実も兼ねた上位2投手指名で大満足

二木康太、種市篤暉らの若手で先発ローテを任せられる投手が出てきたものの、大物感のあるエース、左腕が欠けていた印象なだけに早川隆久(早稲田大)を競合覚悟で指名したのも、ハズレ1位で鈴木昭汰(法政大)を獲りに行ったのも納得。早川ほどではないにしても三振が取れるスライダーはプロでも大きな武器となるはず。

即戦力型を獲った後の2巡目指名(ウェーバー9番目)で中森俊介(明石商)が獲れたのはハッキリ言ってラッキー。甲子園をはじめとした大舞台での経験も豊富で昨年の目玉、佐々木朗希とは違った強さがある。吉井理人コーチはじめ、若手投手の育成に定評のあるスタッフが揃っているので近い将来先発ローテを担う存在になると考える。

掘り出し物っぽいのが河村説人(星槎道都大)。190センチを超える長身からのボールは角度があるので打ちづらく、スケールの大きさを感じる。制球のバラつきがあるのでそれを克服できれば面白い。

■西武
補強ポイントはホントにそこ?な1位指名に疑問

今季は打線が停滞しているとはいえ、辻発彦政権になって以来、ほとんど整備されていない投手陣を立て直せるような素材の獲得は必至だったはず。それで早川隆久(早稲田大)を競合で外した後に選んだのが渡部健人(桐蔭横浜大)というのは正直、首をかしげた。山川穂高や中村剛也など、あんこ型のスラッガーを育成するノウハウを持っているチームだけに渡部も育てられると踏んでの指名だろうけど、正直1巡目でなくても獲れそうな選手だし、補強ポイントからもズレている感が。

それでいて獲らなきゃいけないはずの投手は2人だけ。2位の佐々木健(NTT東日本)は西武お得意の富士大学時代からマークしていた選手で、先発リリーフ問わない起用ができるのもプラス。ただ5位の大曲錬は準硬式の選手で即戦力どころか、全くの未知数なのも不安がある。

ぶっちゃけ、渡部も佐々木ももっと下の順位で行けたろうから、置きに行った感じの指名でなんか物足りないかなーと。それにしても渡部と佐々木って並びが…ねぇ笑。

■楽天
数年後よりも来季の優勝を目指す即戦力指名

昨年、小深田大翔を獲れたことで内野のレギュラーがしっかりと固まり、向こう数年は即戦力の内野手は不要になったので、今年の指名は投手に偏ると思っていたけれど、予想通りの投手重視の指名に。来季以降のことを考えると涌井秀章や岸孝之にこれ以上の上積みは期待できないから、早川隆久(早稲田大)を競合覚悟で獲りに行ったのは大正解だった。

155キロ左腕の早川が期待通りに先発ローテを回す存在になれば、松井裕樹を先発に転向しようという発想がなくなり、終盤の投手リレーが森原康平→松井にアップグレードするため、よりチームは盤石になるはず。

ただ、早川以降に指名した選手がどうにも小粒。左打者ばかりでバランスが悪いので右のスラッガーを指名したいところだったが、獲ったのは5位の入江大樹(仙台育英)だけ。早川以外の投手でもう1人、来季から使える投手が出てくれば成功と言えそうだが…。


■日本ハム
ナンバーワンよりオンリーワンを獲りに行く!?

賛否両論あるものの、栗山英樹政権は来季で10年目に突入。投手野手問わず、その年の1番の目玉を獲りに行くのがこのチームの方針だっただけに早川隆久(早稲田大)や佐藤輝明(近畿大)に特攻すると思われたが、地元出身の伊藤大海(苫小牧駒澤大)を単独指名。らしくないとは思いつつ、リリーフが整備できていないチーム状況を考えると妥当なところか。

藤川球児の全盛期を彷彿とさせるストレートが最大の武器で、大学日本代表でもクローザーを務めていたことを考えると、リリーフとして使うことは間違いないはず。地元北海道出身の選手でチーム初のドラフト1位選手という肩書きも今後のことを考えるとプラスになりそう。結構イケメンなのもポイント高いし笑。

そして2位で五十幡亮汰(中央大)を獲ったのは、西川遥輝が来オフにもメジャー移籍を希望していることを考えるとピンポイントで補強できているのがプラス。「サニブラウンに勝った男」というキャッチもエンタメ性の強いチームにはいい材料だ。

■オリックス
中嶋聡政権の長期化を予感させる将来性重視の指名

過去10年でAクラス入りは1度だけ、2年連続最下位濃厚のチーム状況を考えれば即戦力の選手を獲りに行くと思われたが、佐藤輝明(近畿大)を競合で外すと、1位~3位まで高校生で固めるという将来性全振りの指名にスイッチ。それも中森俊介(明石商)や高橋宏斗(中京大中京)のような完成度の高いタイプではなく、素材型の選手ばかりというところが意外だった。

オリックスと言えば毎年のように監督の首を挿げ替えてきたことで方針がまとまらなかったが、来季から正式に監督になるであろう中嶋聡にある程度の長期政権を約束し、チームを土台から作るという想いが今回の指名から見えてくる。

ハズレ1位の山下舜平大(福岡大大濠)はゼロか100かの超素材型。先を見据えて高校時代はストレートとカーブしか投げなかった投手に今後どんな色を付けるか。チームの育成力が問われるところ。井川慶、ダルビッシュ有、田中将大らを育てた佐藤義則をぜひとも招聘したい。球団OBだし笑。

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