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【じーじは見た!】 前編:人材版伊藤レポートをご存知ですか?
皆さんは、キーエンスという会社をご存知ですか?
センサーや測定器、制御・計測機器を企業に提案・販売している会社ですが、日本一高い給料で人を雇っている会社としても有名です。
有価証券報告書から見た従業員一人当たりの平均年収日本一の会社です。
平均年収 1,752万円/名、30歳時の年収 1,507万円/名。
じーじもこんな給料をもらってみたかったです。
キーエンスホームページから抜粋した業績推移は下記のとおり👇です。
2021年3月期の売上高 5,381億円、営業利益 2,768億円(営業利益率 51.4%)
凄いでしょ⁉(もうすぐ2022年3月期の業績が出てきますね。)
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投資家たちは、こんなキーエンスみたいな会社ばかりになれば、社会も従業員も投資家もみんながハッピーになるので、どうすればそうなるのかをいろいろと投資家なりに考えている訳です。
どうもそんな会社を見極めるには財務情報(決算や事業計画)だけの開示情報を見ていたのでは無理だと気が付いてきました。
そのため投資家は、最近では「環境と調和」した持続的な経営(サステナビリティ)ができているかどうかの情報開示を求めたり「人材」を活かしているかどうかの情報開示を求めるように変わってきました。
つまり企業が「人材」を活かしているかを開示情報から横並びで比較して、いい企業の人材育成をベンチマークして、どの企業も人材を活かす経営に向かってもらった方がみんなが幸せになるんじゃないか?という発想です。
こういう発想は官僚社会の先輩ヨーロッパが長けていてISO30414(2019年)に情報開示のフレームワークが示されました。
それに遅れるなと米国証券取引委員会(SEC)が「人的資本」に関する情報開示を義務化、日本でも世界の流れを受けて企業に非財務情報の開示をコーポレートガバナンス・コードに規定して「人的資本」の情報開示も求め始めました。
この流れを上手に説明してくれているのが人材版伊藤レポート(2020年9月)です。これまでのように「人を安く雇う」自慢の会社は、持続的発展が期待でない会社であることがバレバレになる、そんな人材版伊藤レポートのポイントを見ていくことにしましょう。
✅人材版伊藤レポート 3P・5Fモデルについて
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3P(3つの視点:Perspectives)と5F(5つの共通要素:Common Factors)で人材戦略を見ていきましょうというのが伊藤レポートの骨子です。
3Pとは
1)視点①:経営戦略と人材戦略の連動
2)視点②:As is‐To be ギャップの定量把握
3)視点③:企業文化への定着
5Fとは
1)要素①:動的な人材ポートフォリオ
2)要素②:知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
3)要素③:リスキル・学び直し
4)要素④:従業員エンゲージメント
5)要素⑤:時間や場所にとらわれない働き方
さて前編では3Pを見ていくことにしましょう。
✅視点①:経営戦略と人材戦略の連動
経営戦略として「グローバル化」を掲げておきながら人材はドメスティックな昭和人の集合体では人材戦略になりませんよね。
日本一高い給与を払うキーエンスの場合、顧客が困っていることを見つけて課題解決とメリットを顧客にもたらせる人材を育て、顧客が得るメリットを折半する価格で販売できる人材の集合体を目指しているようです。
そんな人材を育成するのにはOJTを基本にして育てる必要があります。
しかし、多くの企業がOJTの名のもとで現場任せの放任で教育しているのに対して、しっかりとした実効性のある制度を回しています。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69080364/picture_pc_f836e5302852973c1eb4cbb23f5f2d3c.png?width=800)
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69080380/picture_pc_8af63c3b1dea07ecf346c89aaecf6dab.png?width=800)
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69080395/picture_pc_52b7437a43afde39f2ca6464cd91f5f5.png?width=800)
上記はキーエンスのホームページの「人材育成」からの抜粋ですが、注目すべきは、若手社員に教える「ロジカルシンキング研修」や教える立場に立つ中堅社員に教える「コーチング研修」更にはMDP(Management Development Program)やCDP(Career Development Program)、マルチアセスメントによって人材を育成するサイクルを回している点です。
こういった情報を投資家が見て企業を評価しています。
✅視点②:As is‐To be ギャップの定量把握
いわゆる※KPIの設定です。
※KPI: Key Performance Indicatorの略で「重要業績評価指標」と訳されます。目標を達成する上で、その達成度合いを計測・監視するための定量的な指標のことを言います。
自社の経営戦略上重要となる人材アジェンダ(課題設定)を特定した上で、アジェンダごとに KPI を用いて目指したい姿(To be)の設定と現在の姿(As is)の把握を行い、そのギャップを定量的に把握することが求められています。
日本政府や企業は「べき論」でこうあるべき未来を描きがちですが、最近のTo be論は、未来のありたい姿(理想論)を描いて現状とのギャップをバックキャスティングで縮めていこうというものです。
「当社は多様性を大切にしています。」と書いている会社が女性管理職比率が1%で、毎年の新卒採用の95%が男性だと「多様性を大切にしているフリ」をしている、言うだけ番長の会社だとすぐに分かります。
だけどこれまではそういった情報の開示がなかったので気が付きませんでした。しかし、これからは求められるのでバレてしまいます。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69081275/picture_pc_5e4398e3348ebfa64a9faf9b63fd4fc5.png?width=800)
何故そうさせるようになってきたかというと、そういった情報を開示してKPIを高める努力をしている会社の方が業績好調で株価も高くなるからです。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69081183/picture_pc_737e416bba19aef4e718cf96eb0fce1a.png?width=800)
✅視点③:企業文化への定着
伊藤レポートには「企業文化は、所与のものではなく、日々の活動・取組を通じて醸成されるものであり、企業理念、企業の存在意義(パーパス)や持続的な企業価値の向上につながる企業文化を定義し、企業文化への定着に向けて取り組むことが必要である。」と書かれています。
キーエンスのトップメッセージを抜粋してみましょう。
1974年の会社設立以来、付加価値の創造こそが企業の存在意義であり、また、そのことによって社会へ貢献するという考えのもと、全社一丸となって事業活動に取り組んでまいりました。
世の中にない価値を生み出すことに取り組み続け、新商品の約70%が世界初、業界初の商品となっており、世界のさまざまな業界のお客様に当社商品をご採用いただいております。
(中略)
当社の経営において大切にしていることは、「経営にとって当たり前のことを当たり前に実践する」ということです。これを実践するうえで「目的意識」を持つことを常に意識しています。
たくさんの人数で仕事を進めると、その手段が目的となり、結果として当たり前のことが徹底できなくなってしまいます。
「何のためにその仕事を行っているのか、何に役立つのか」を考え、本来の目的を見失わないように心掛けることで、当たり前のことを当たり前に実践することが可能となります。
(中略)
大きく成長余地のある海外市場において、当社ビジネスモデルであるダイレクトセールス体制をしっかりと根付かせることで、売上を大きく伸ばしていけると考えております。
社員一人ひとりが生み出した付加価値が社会の皆様のお役にたてますよう、全社員一丸となって真摯に業務に取り組んでまいります。
トップのメッセージを読んでいるだけでキーエンスの企業文化が分かったような気がしませんか? これを投資家は読み取って投資尺度にしているのです。
つづきの5Fは後編で見ていきましょう。
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▼20年以上前に聞いた正垣さんの講演内容を思い出して👇
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