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【じーじは見た!】 後編:複雑系のマネジメント ~根性論と属人化が好きな日本人~

ばーばに処分されそうな古い図書3冊を引っ張りだしてきて役に立つところを見せるために読み返してみました。

①「複雑系による科学革命」(講談社 1997年5月28日初版)
②「複雑系の選択」(ダイヤモンド社 1997年12月11日初版)
③「複雑系のマネジメント」(ダイヤモンド社 1998年2月13日初版)

今回は後編です。前編をさっと3分で読んでからどうぞ。


✅複雑系を経営に取り入れたソニー⁉

③「複雑系のマネジメント」のまえがき「はじめに」は、ソニーの出井(伸之)社長(1998年当時)の紹介から始まります。

出井氏は、かなり米国流経営を先駆的に取り入れた経営者として社長時代はマスコミにポジティブに取り上げられました。

しかし、退任後にソニーの業績が落ち込んだ際には、その原因がさも泥臭さのない出井氏にあるかのように叩かれました。

しかし、本書を読み返してみて日本の経営者が手本にすべき点が多々あるのではないかと改めて思いました。

また、今のソニーの好調さを考えると「経営を科学すること」を30年前から磨いてきたソニーと他社との間で差がついてきているのではないかとも思いました。

本書には、1992年7月当時、取締役マーチャンダイジング総合戦略本部長・広告宣伝本部長であった出井氏がニューヨークで行った講演の抄録が掲載されています。

★☆【収穫逓増に関する1992年の出井氏講演】★☆

我々の産業を支配する二つの法則を見てみよう。
まずは、「収穫逓減の法則」がある。
ある事業規模を超えると収益は急速にマイナスへ向かう。

(中略)

もう一つは「収穫逓増の法則」である。
事業規模が拡大していくと収益がそれ以上に増えるという法則である。
その特徴として、例えば、半導体産業の利益は量の追求とリンクしているということがあげられる。コストダウンは量とリンクしていて、量が増えれば増えるほど利益は拡大する。
したがって、我々の産業は、半導体の利益追求、いわゆる収穫逓増と、収穫逓減という矛盾する二大原則に支配されている。

(中略)

我々がいかに対応していかなければならないかについて考えると、まず、イノベーティブで、ソフィスティケートされた商品をつくる必要がある。さらにソニーが世界的にどういう会社であるのかという、新しいコーポレート・ビジョンを鮮明に打ち出して、コミュニケートしていくことである。
ハードメーカーとしてのソニー、音楽会社としてのソニー、映画会社を含めてのソニーというものを、どのようにアピールしていくかを整理していかなければならない。

(中略)

量の追求だけに終始してしまうと、収穫逓減の法則に飲み込まれて、ソニーは普通の会社になってしまう危険性を感じ、私の提案を述べた。

出井さんの講演、30年前ですよ。
全然古さを感じませんよね。

GAFAM( Google + Apple + Facebook + Amazon + Microsoft )が世界を席巻した「プラットフォーム」ビジネスを言い得て妙な講演内容だと思いました。もしよろしければフルで読んでみてください。


✅経営者に求められるセンス⁉

本書の前書きでは次のようなセンスが経営者の要件の一つになるのではないかと書いてありました。

それまでは、企業組織を生命体としてとらえる経営者は数多くいたが、複雑系と考える経営者は、私たちの知る限り、マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏と、シティコープ会長兼CEOのジョン・リード氏くらいで、日本では出井氏が初めてだった。

しかも本当にびっくりさせられたが、出井氏は92年にアメリカ・ニューヨークで「収穫逓減の法則」と「収穫逓増の法則」を用いて、ソニーのAV商品の今後について講演したことがあるというではないか。

先のP・クルーグマン教授はその一連の著書の中で、遠回しながらも「経営者はもっと経済理論を勉強すべきだ」と述べているが、グローバルなビジネス活動が本格化する一方、将来の不確実性がますます深まる中、まさしく出井氏のようなセンスが経営者の要件として挙げられるのかもしれない。


✅結局、複雑系って何?

本3冊ひっくり返してきた最後の1冊、①「複雑系による科学革命」は、結構専門的で他の2冊が「収穫逓増の法則と経営」にフォーカスしているのに対して「意外性を科学する」ことにフォーカスしています。

みなさんは、魚の大群が海で移動中にどのように進路変更しているのか?
鳥の大群がどんな風に集団で進路変更しているのか?
どの魚やどの鳥ががリーダーシップを取って危機回避の全体行動をとっているのかに興味がありませんか?

遺伝的な突然変異や環境変化による種の絶滅、、、世の中は複雑です。

ある条件下では一つの組織が他の組織を絶滅に追いやるが、別の条件下では二つの組織が結びついて、より大きな自己維持集団を形成する場合もあるといいます。何と世の中は複雑なことか⁉

これら複雑系の研究対象では4つの原理が導かれています。

①偶然が原因となること
②勝利が必ずしも勝利でないこと
③構造及びプロセスとしての組織
④合理性に限界があること

②の「勝利が必ずしも勝利でないこと」は、ホームビデオの規格が技術的にはベータが優れていたとしてもVHSに軍配が上がったように、複雑系は、そんな偶然を科学しているんですね。

こういったことを科学し、経営に活かそうとしているのが米国人なのです。

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四半世紀も前の図書ですが、古臭い感じがしないと思いませんでしたか?

古臭く感じないのは、逆に言うと我々昭和人の発想が25年前から進歩していないということかもしれません。

つまり「科学で話をする人を煙たがり」「根性論(あいつは毎日遅くまで頑張っている)」や「情緒(あいつは協調性がある)」をマネジメントの柱に据えて「頑張ることはいいことだ」で頑張ってきた25年だったからこそ真新しく感じるのかもしれません。

米国人にとっては既に古臭く感じている話かもしれません。

どうでしたか?

「もうすこし噛み砕いた事例を紹介してくれないと複雑系がどうして重要なのかよく分からない。」と思われた方、ご安心ください。

今回は「おまけ」を準備しました。来週は「おまけ編」をお送りします。

おまけを読む

これからは根性論よりも科学です! 
頑張れよZ世代!

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明日の「じーじのボヤキ」シリーズは、「フライトキャンセルの苦い思い出⁉」の後編です。こちらもよろしくお願いします。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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