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桜が咲く前に


今日は思うことが多くてうまく言葉が出てこない。

まあそれは今日に限ったことじゃあないのですが。

9年前のこの日のことはもうあまり振り返りません。
それよりもこれからをどう生きるか、を考えることが多くなりました。

それは別に忘れたわけではありません。

その時聞いていた音楽や懐かしい匂いを嗅ぐと
その当時に引き戻されるように、

今後のことを考えようとするたびに
あの日のことや、生き残った周りの人が教えてくれたことを思い出します。

岩手で生まれ育ったわたし、
宮城県亘理町のばあのおうちの裏には最近までずらりと並んでいた仮設住宅が
いつの間にかなくなっていました。

なんでわたしが生きたんだかね。

なんでうちは家も残ったんだろうね。

震災後連絡が取れなくなったばあとじい。
一生懸命岩手に逃げてきてくれた時、おばあが言っていたことば。

ばあはもう言わなくなりました。


心も地域もすこしずつ、すこしずつ、元に戻ることはなくても
復興しているので、東北に遊びにきてください。

震災を思い出してくれることは本当に嬉しい。

その人がきっと、大切な人にちゃんと気持ちを伝えておこう、
もしくは別にそういう人がいなかったとしても
今日を生きてみようって思えるのではないかなと思うからです。

でも欲を言ったら、やっぱり東北に来て欲しい。

岩手に来て欲しい。

それは震災だけでなく、未だ男尊女卑が続く集落を見て欲しいからでもあるし、
リモートワークが推奨される中、その現場が岩手になり得るとも思うから。


よく、親しみを込めて
ここの人はあったかい。という人がいるけど

岩手の人は必ずしもそうじゃないかもしれません。

恥ずかしがり屋で、どこかぶっきらぼうに見える。けど本当はとっても優しい。

そんな人たちなのです。


わたしは「くどうれいん」さんという岩手の作家さんが好きなのですが
れいんさんのPOPYEでの今月の連載に
きのこ帝国さんの『桜が咲く前に』の歌詞が引用されていました。

「桜が咲く前に

ここを出でゆくことにしたよ

10年後の君は、どこで誰と笑っているのだろうか」

わたしがいる頃、岩手の桜は5月のゴールデンウィークが見頃だった。
(いまはあったかいから4月末あたりらしい)

だからすべての人は、桜が咲く前に出てゆくのが常なのだ。


ゴールデンウィークに岩手もいいですよ。
こんな時だからこそ、岩手に来てみてください。


れいんさんは最後にこう言っている。

今年も一人、盛岡から友達が上京してしまう。してしまう、なんて言わないほうがいい。いつでも桜前線を行ったり来たりして会いたいほうが会いに行けばいい、
それだけのことなのに。桜が咲くまでの春に、わたしは涙をこらえてばかり。


わたしもそうだ。

岩手にいない今も。3月はやっぱりどこか寂しい。






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