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フリーランス新法について解説/発注側への法的義務7つのポイント

大手検索エンジンで「フリーランス」という言葉を打ち込むと、関連キーワード上位に「やめたほうがいい」という言葉が出てきます。そんな言葉が上位にくる背景としては、フリーランスの地位が社会的にまだまだ不安定であるという意識が強いからでしょう。フリーランスの地位向上のため、国は2024年11月、フリーランスの取引に関する新たな法律を施行します。「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス新法」とも呼ばれるこの法律の中身はどのようなものでしょうか?現在フリーランスの方、フリーランスを目指している方など気になっている人も多いでしょう。この記事は法律の適用対象者や主な中身をわかりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。


フリーランス新法の目的は?


「自分一人で頑張らないと」「会社に守ってもらえない」。そんな不安な思いを抱えるフリーランスもいるはずです。
実際、フリーランスは働き方の自由度が高いというメリットがある一方で、労働基準法の適用範囲外で「不安定な立場」という面もあります。そのため、成果物・サービスの取引の際にトラブルを抱えることもしばしば。2020年の内閣官房調査では、37・7%のフリーランスが取引先とのトラブルを抱えたことがあるという実態が浮き彫りとなりました。
このため、フリーランス新法は、「フリーランスの人が安心して働ける環境を整備する」ということを目的に成立、施行されることとなりました。

「環境を整備」とは、大まかに分けると2点を意味します。
①    フリーランスと発注事業者(企業)との取引の適正化
②    フリーランスの就業環境を整える

フリーランス新法が適用されるのは?


「発注事業者(委託事業者)からフリーランス(受託事業者)への業務委託契約」を対象に、委託側にさまざまな義務を課します。
語句を詳しく説明すると、この場合の「フリーランス」とは、業務委託を受ける事業者で、従業員を使用しないものと定義されます。法人格をもっていても、社員や役員以外に従業員がいなければ、適用対象になります。実態は個人事業者と同じだと考えられるからです。
今回のフリーランスの定義の中には「従業員(週20時間以上かつ31日以上の雇用)を使用している人」「消費者個人を相手に取引を行っている人」は含まれていません。
フリーランスとして働く個人、つまり特に企業と交渉力に格差があると考えられる人たちの保護に重きを置いているといえます。
また取引の態様としては「BtoBの取引」を対象にしています。「toC」の取引は対象外です。


フリーランス新法の内容は?発注企業側へ7つの義務

フリーランスの人と契約する際、発注事業者はさまざまな義務が課されるようになります。

①    書面等による取引条件の明示

さまざまな条件を書面や電子データ(メール)などで提示する必要があります。具体的には「業務内容」「報酬額」「支払期日」「発注事業者とフリーランス双方の名称」「業務委託をした日付」「給付を受領、また、仕事を行う(役務提供を受ける)日付」「給付を受領、また仕事を行う(役務提供を受ける)場所」「成果物についての検査完了日」「現金以外の方法で支払う場合は、報酬の支払方法に関する必要事項」を明らかにしなければなりません。取引条件を明確に、かつ形として残す必要があります。

②    報酬支払期日の設定・期日内の支払

発注した物品等を受け取った日から60日以内のできるだけ早い日を期日とし、期日内に払わなければなりません。フリーランスの取引では金銭のやり取りに関するトラブルも多いそう。こうした規定が不払いなどを防ぐことに繋がると考えられ、フリーランスの収入の安定を保証します。

③    禁止行為

フリーランスに対し1か月以上の業務委託をした場合、以下のような行為をしてはいけません。
1、 受領拒否
2、 報酬の減額
3、 返品
4、 買いたたき
5、 購入・利用強制
6、 不当な経済上の利益の提供要請
7、 不当な給付内容の変更・やり直し

④    募集情報の的確表示

フリーランスに対して仕事を募る際、
虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならない
・内容を正確かつ最新のものに保たなければならない

となっており、より正確な業務内容を知ることができるようになります。

⑤    育児介護等と業務の両立に対する配慮

6か月以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと仕事を両立できるよう、フリーランスから申し出があれば配慮しなければなりません。フリーランスが子どもの急な発熱や両親の体調不良といった事態に対応しなければならないとき、納期の変更(延長)やリモートワークへの変更といった“配慮”を受けることができます。フリーランスもプライベートの変化に応じて、継続的に、多様な働き方を選べるようになります。

⑥    ハラスメント対策に係る体制整備

当然ながらフリーランスへのハラスメント行為は一切容認できません。ハラスメント対策の措置として、①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発、②相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応などを行わなければなりません。

⑦    中途解除等の事前予告・理由開示

6か月以上の業務委託契約を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合、
・原則として30日前までに予告しなければならない
・予告の日から解除日までにフリーランスから理由の開示の請求があった場合、理由を開示しなければならない

としています。契約を終了する場合もある程度の予定を知ることができれば、次の仕事の目途なども立てやすくなるということで、急激な収入減の防止にもなります。

発注企業への厳しい罰則

もし法律に書かれた義務に反した場合、企業側には厳しい罰則が与えられます。
立ち入り検査や指導・勧告、命令、命令違反の場合は50万円以下の罰金というケースも考えられます。

専門家に相談を

フリーランス新法が施行されると、フリーランスを取り巻く環境は大きく変わっていくはずです。この法律は、理不尽な報酬支払の遅延や減額、ハラスメントといったトラブルに巻き込まれた際、フリーランスを守る矛とも盾ともなるでしょう。
フリーランスの方が実際にトラブルに見舞われた際は、フリーランスや個人事業主の労働問題に詳しい●●事務所■■弁護士にご相談ください。正しく法律を理解した専門家が、フリーランスの方のトラブルに対応いたします。一方、事業者の方もフリーランス新法の義務を順守できるような体制を整えるため、弁護士の的確なアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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