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対馬は時空を超えたインパクトのある島

長崎県出身の自分だが、壱岐・五島には行ったことがあっても、対馬はなぜか足が向いてなかった。何故か、遠い、荒々しい、下手したら少し暗いイメージもあったのかも。でも食わず嫌いはいかんと、釜山も併せて行ってきた。福岡~対馬~釜山~福岡 いろんなルートはあるが、船には是非乗りたい。そこで時間も考え、福岡~対馬 釜山~福岡は飛行機で、対馬~釜山は高速船にした。
司馬遼太郎の「壱岐・対馬の道」「韓のくにの道」を手に、午後2時、福岡空港からほんのひとっと飛び、離陸して、北上し壱岐を見たらもう着陸。でも小さなプロペラ機は風に揺られ左右に揺れる。荒々しそうな島の山肌が見える、対馬やまねこ空港も山の上で少し怖い。
対馬はとにかく南北に広い島だ。島の真ん中あたりにある空港でレンタカーを借り、まずは北に向かう。本によれば対馬は日本で卜占が大陸から伝わり、日本の神社・神道の源になったところとか。とにかく神社が多いのだ。五島は教会が多い、ロマンチックな情景だったが、真逆。観光パンフなどでもいつも出てくる「和多都美神社」、ここは外せない。が、その前に少しマイナーだが相当に古く、天照にもつながるかもと言われる「阿麻氐留神社」(あまてるじんじゃ)。道路わきの階段を上ったところ、誰も来なさそう、かなり朽ちている。この辺りの川沿いは昔入り江から船で大陸の人が来てたらしい。「和多都美神社」は本殿から海に続く鳥居が美しい、とても静かなパワースポット。そこから少し山を登ると烏帽子岳、浅茅湾の溺れ谷が一望できる。五島や壱岐とも違う独特の景観だ。まだ日暮れまで時間があるので、もう少し北へ向かい「海神神社」、ここも静か、海に関わりのある神様を祀っている。境内に入り、少し急な階段を上っていくと立派な社殿がある、木の隙間から海が見える。宝物殿はしまっているが、ここに朝鮮半島・新羅から伝わると言われる如来像があるのだろうか。そういえば、対馬のお寺から盗まれた仏像も朝鮮半島由来だった、昔から大陸との密につながっていたのだろう。今日はこの辺にして、南下し厳原を目指す。途中観光スポット「万関橋を通る」、風が強いので落ち着いて見れない。
厳原市街に近づくと、賑やかになってくる。今日の宿は東横イン、小さな島に似合わず大きい、向かいにはスーパーマックスバリュ。夜は、ホテルの裏手から港へ向かう飲み屋街をふらふら。昔はにぎわっていたのか、スナックが多い。対玄というお店に入る。名前からして期待できそうだが、期待を裏切らない美味しさ。お刺身はどれもとても新鮮で脂がのっている、中でも穴子は別格の美味しさ。本土ではなかなか食べれない穴子の刺身は、白身のとても上品な味。醤油でもポン酢でも美味しい。ふぐ刺しみたい。お酒は島で唯一の蔵が作る白嶽、すっきりとても美味しい、名前は対馬のシンボル白嶽山から来ているのかな。


浅茅湾 溺れ谷

#旅のフォト

海神神社
全て美味、穴子は別格

対馬二日目。今日は島の北端、韓国への船が出る比田勝を目指す。その前に厳原の街を巡ってみる。「対馬博物館」、対馬らしさが表現されたなかなか素敵なデザイン、展示もイラスト動画を使い、対馬の地勢・朝鮮通信使の歴史がわかりやすく展示されている、ハイクオリティ。3年前に市と県が作ったらしい、素晴らしい。博物館を出て、「金石城跡」(城といっても平城)宗家の菩提寺、「万松院」。鎌倉時代から明治まで600年以上対馬を治めた宗家の歴史を感じさせる代々の大きなお墓が並んでいる、日本三大墓所の一つとか。殿様・正室のお墓に加え、少し離れて側室のお墓も並んでいる。ちなみに、宗家はもう対馬には存続しないが、子孫の方が千葉県にいるらしい。よく知らなかったが、日本の名家の一つだろう。また少し歩いて、「朝鮮通信使歴史館」、小さいが充実した内容、学芸員の方からいろいろ対馬の話が聞けた。対馬の人口は3万人、それに対して40万人の韓国人観光客が来るらしい(よって半日運動、コロナの時はこれがなくなり大打撃)。とはいえ、今でもそうだが、島に昔から朝鮮の人が住み着いたことはないらしい、あくまで通信使が江戸へ向かう中継点。朝鮮と日本との外交関係を、誠実さを基本に築いた雨森芳洲の話は現代の韓国との外交にもつながるものがあり面白い。


対馬を感じさせる博物館

対馬は蕎麦も上手い、もともと島内で稲作はメインではなかったらしい。昼は郷土食、いりやきそば(田舎風のそばに野菜や鶏肉、懐かしい味)を食べ、レンタカーを返して、対馬交通のバスで比田勝を目指す、約2時間。島内フリー切符を買えば、これがなんと1000円。車窓から眺める風景、対馬とても山が多い、その間に小さな集落・里が点々と続く、とてものどかな風景。小さな川がいくつか、入り江につながる。山沿いの道に入ると、”ヤマネコに注意”の看板があちこちに(交通事故がヤマネコ減少の一つの要因らしい)5時過ぎ、比田勝湊へ到着、近くのホテルへ。最初何人かいた乗客も比田勝に着く頃には私一人に。比田勝はとても静かな漁港であり、釜山への船が出る国際ターミナルがある。夕暮れ時の静かな港町。小さな商店街。夕方になると、音楽がなり、子供へ早く帰りなさいと促す、懐かしい。今日は地元のお寿司屋さんに立ち寄る、ここも文句なく美味しい、また穴子を天ぷらで、これも普段食べてるのと大違い、ふっくら美味。
対馬3日目。快晴。港近くでレンタカーを借りる。ここのお客さんのほとんどが韓国からの観光客だそう。先ず、対馬ヤマネコを見に、「対馬野生生物保護センター」へ。山の上にある。対馬ヤマネコの生態をいろいろと展示してある。残念ながら観察棟が改修中で実際のヤマネコは見られなかったが、いろいろとセンターの方からお話が聞けた。実際対馬ヤマネコ自体は、全国の動物園で見ることはできる(うちの近くの井の頭動物園にもいる)対馬は広い島なので、対馬ヤマネコの種の維持のためには、400頭は必要だが、今は推定100頭。同じような例で言えば、西表島の西表ヤマネコの場合、島が対馬ほど広くないので100頭ほどでも存続可能らしい。尚、交通事故などで傷ついたヤマネコを保護するが、それらを自然に返すために、厳原の近くに「野生順化ステーション」があり、怪我などが治ったあとは、ここで狩りの本能を鍛えるとのこと(非公開)。環境省も細かないい仕事をしてるなぁ。
保護センターから少し山を登ると、韓国が見える(かも)展望台。天気はいいがかすんでいて、釜山は見えない。

釜山は見えなかった!
古代を感じさせる神社


比田勝に戻る前に、また面白い神社を発見。「天神多久頭魂神社」、シンプル、社殿がない古代の祭祀の様子を感じる海のそばの神社。やはり対馬の神社は深い。誰もいないが地元の人が信心を受けついで守っているのだろう。比田勝の近くに、昔の「棹崎砲台跡」がある。1938年に海上防御のために作ったとか、確か戦艦の大砲を移築したという説も。薄暗い、中には色々な部屋があり、砲台を囲む。少し不気味。でもこういうところにも韓国の観光客がレンタカーやレンタサイクルで来ている、立派。
港まで戻り、レンタカーを返し、「比田勝国際ターミナル」に向かう。ここから釜山行の高速船が出る。ターミナルに入るとそこはもう韓国!おそらく乗客の95%は韓国の人。何かちょっと東京から伊豆に遊びに来ましたみたいな、感じ。中高年が多いが、意外に若い人もいる。1時間とは言え、外国へ行くわけだから出国の手続きがあり、少し緊張。PanStarという韓国の会社の大きな船だ。釜山を目指す。1時間ちょっと、11000円。対馬は想像以上に面白い、インパクトのある島だった!

釜山へ向かう高速船

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