怖くない夢

どうやら良く夢を見るほうらしい
実は白昼夢とかも多いのだけれど
これは夜寝ている間に見る夢の話
人より良く夢を見るうえに大抵は
夢の内容まで事細かに覚えている

例えば見たこともない家に住んでいて
どうやら引っ越したばかりの設定とか
例えば夢の中でだけ現れる町があって
きちんとつじつまの合った作りだとか
例えばこれまでの仕事と人が混在して
おかしいはずなのに日常のようだとか
例えばストーリーの中にいる自分自身
立ち位置を俯瞰して理解していくとか

よくあるのは体が動かないという夢だ

一時そのたぐいの夢は見ないときがあった
考えてみればひとり暮らししていたときだ
今はしばしば見ては疲れ果てて目が覚める

体を動かしたいのに何も動かない
ときには押さえつけられていたり
霊みたいなものがやっていたりで
恐怖と苦しさからもがくだけの夢
医学的見地から説明がつくような
いわゆる金縛りなのかもしれない

ある晩もまたそれがやって来て
やはりもがいても体は固まって
何物かに襲われるのだろうかと
力を振り絞り寝返りを打ったら

膝のあたりを優しくしかし力強く
とんとんと数回叩かれた気がした

亡くなったら人は無になって
意識もなければ手も下せない
ずっとそう教わってきたから
考えたこともなかったけれど

もしも もしも そんなことがあるのなら
こういうとき助けてくれる何かしらを人が
亡くした人の手によるものなのだと考えて
古のときから目に見えないものを怖くない
恐れたりなどしなくてもいいものへ自然と
置き換え受け取るようにしていたとしたら

もうそれは怖くない夢になるかもしれない
自分が守られていると感じられるような夢

体が動かない夢を見ているとき
あんなに優しい手が触れるのは
これまで一度もなかったことだ
これから先はどうなるのだろう
また優しい手に守られるならば
目が覚めたときもう怖くない夢