唇のはし

唇のはしに何年かぶりに
吹き出物が連続でできた
もうニキビとは言えない
吹き出物としか言えない

ふとあのひとのことを思い出した
ストレスがたまるとすぐ体に何か
支障があらわれてくるひとだった
表面上は人当たりよく見えたけど
知れば知るほど心の奥に底なしの
沼を抱えているようなひとだった

何もないところで突然こけかけたり
急に膝から力が抜けがくんとしたり
食欲が失せ食べる元気も失くしたり

まるで今の私のようで疑っている
もしかしたらだけど根拠もあるし
あのひとも私と同じ病気なのかと

その中でもよくあらわれていたのが
唇のはしが切れるという症状だった
血が滲むくらいひび割れてしまって
場所が場所だけに治りも遅くなって
かなり長いこと痛々しい唇のはしを
見ては気にかけて労わったりもした

あのひとと最後に話したときにも
あのひとの唇のはしは切れていて
指摘するとなかなか治らんねんと
いつものように指でさすっていた
あのときのあのひとのストレスは
私に関係することだっただろうか

私は唇のはしが切れるタイプではないらしい
でも吹き出物が出来てしまったからなんだか
自分が疲れ果てている癖にあのひとのことを
思い出して元気にしているのかを気にしてる

唇のはしは今も切れたりしてるのかな
あのひとはとにかく繊細なひとだった
もっと優しくできたかもしれないとか
自分が疲れ果てている今も考えている