海のミルク

この季節になると牡蠣が食べたいと
毎年のように話しているように思う
二人一緒に食べに行くなんてことは
もちろんあり得ないし期待もしない
あなたは家族と連れ立ってだろうし
わたしは思い立てばひとりで行くし
それぞれがそれぞれで食べたいもの
たまに一致したりもするというだけ

あなたが好むような食べ物を食べたとか
わたしから自慢することもときどきある
影響を全く受けていないわけではなくて
もちろんわたし自身が欲しないものまで
自慢のために無理して食べたりはしない
あなたが好む飲み食いははっきり言って
年齢を考えればもうちょっと節制すべき
ただたまに一致したりもするというだけ

わたしがどうにも元気が出ないとき
牡蠣を使ったメニューを外で食べて
食べ過ぎると鼻血出そうと思いつつ
写真を送り付けたりするとだいたい
生がいちばんだと言う 牡蠣の話だ

今年もこの季節あなたとわたしは
牡蠣が食べたいなと話したりして
わたしは外で牡蠣料理を食べては
写真をあなたに送りつけてそして
また同じような会話を繰り返して
予定調和に変わらない安心を得る

牡蠣って海のミルクって言うよね
などと言おうものなら間違いなく
あなたは言葉尻をとらえてまたも
ミルクなら とか言い始めるのだ
今も同じような会話を繰り返して
予定調和に変わらない安心を得る

今年もこの季節になって牡蠣を食べる
心と体がちょっとでも元気になるよう
安心するように予定調和を繰り返して