本棚

病気がいちばんひどかった頃
ベッドから本棚が見えていて
並んだ文字にすら眩暈がして
布をかぶせて覆い隠していた

布を取り払うことにしたのは
偶然だけど今年の初めだった
もしかしたら気持ちも新たに
靄を取っ払いたかったのかも

本棚に並んだ本は今ではほぼ
整理も済んで自分の思うまま
気に入ったものだけが並んだ
眩暈のしない整然さがあって

布で覆い隠していた理由には
誰にも見られたくないという
ちょっと複雑な思いもあって
守るべき小さな世界があった
だけど今では見られたならば
むしろ勝手に覗き見たことを
咎めてやるくらいにはたぶん
強くなれている気がするから

何も疚しいところなどないのに
委縮してきたこれまでの覆いは
きっともう取っ払えばいいのだ

本棚にはお気に入りのものが
整然と並んでいて色とりどり
でももう眩暈なんてしないし
眺めているだけで満足もする
わたしだけの小宇宙がここに