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平成最後の夏が終わる

平成元年、当時9歳。平成最初の夏のことはよく覚えていない。
夏休み中は午前のうちに宿題を済ませ、昼食をとって、午後はテレビを眺めおもしろくないと思いながらぼんやり過ごす、という毎日だったのではないかと思う。

平成30年。平成が終わるんだな、と私に実感させたのは、松本智津夫の死刑執行のニュース速報だった。
平成元年に最初の信者殺害事件が発生し、弁護士一家殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件などの凄惨な事件が、平成7年に松本智津夫が逮捕されるまで続いた。
その後教団は解散し、公判、被告の死刑確定となり、事件から20年以上経った今年1月にようやく全裁判が終結。
私は地下鉄サリン事件の前日に現場近くにいたせいか、ニュースを見たときの衝撃と恐怖がとても強かったことを覚えている。

平成7年3月。中学校を卒業して春休みに入った私は、リビングでテレビをつけたまま高校から出された課題をやっていた。始めは課題に集中していたが、だんだんテレビが騒がしくなってきたので目を向けると、地下鉄駅から地上に炙り出されたように出てきたたくさんの人が苦しむ様子が映っていた。
生中継で顔が映っているから、避難してきた人たちの苦悶や憔悴の表情がはっきりと見て取れる。中には嘔吐している人もいた。誰がどう見ても異常事態である。その後しばらく、テレビから目が離せなくなった。
のちに、地下鉄サリン事件は世界的にも類を見ない重大なテロ事件だったということを知る。

事件後、一連のオウム事件についてはニュースで聞きかじる程度で、特に強く意識していたわけではなかった。それでも、死刑執行のニュースは衝撃的だった。7月6日に7人、26日に6人とたたみかけるように執行され、「平成が終わっていく」という感覚と同時に「平成のうちに終わらせようとしている」という意図のようなものを感じさせた。

とにかく刑事事件としては終わった。しかし、今も後遺症に苦しむ被害者や遺族がいて、日々を生きている。死刑執行によって未解明の部分が残されてしまったことは悔やまれるが、平成が終わっても忘れてはいけない事件の一つであるのは間違いない。

明日は立秋。平成最後の夏、私は相変わらずぼんやりと過ごしている。
最後だからといって特別何かするつもりはない。いつもどおりでいい。
ひとつ違うことがあるとすれば、これから来る新しい時代が穏やかであるように強く願っている、ということだけだ。

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