氷魚(ひお)

中小製造業で総務・経理→カフェスタッフなどを経て今は夫の仕事の経理担当。誰かのお手伝いが基本的使命。うつ歴14年。パニック発作も少々。趣味は読書と短歌、たまにチェロ。好きな飲み物はコーヒー、ワイン、日本酒。

氷魚(ひお)

中小製造業で総務・経理→カフェスタッフなどを経て今は夫の仕事の経理担当。誰かのお手伝いが基本的使命。うつ歴14年。パニック発作も少々。趣味は読書と短歌、たまにチェロ。好きな飲み物はコーヒー、ワイン、日本酒。

    最近の記事

    【短歌】鬱

    *かなしみが驟雨のごとく訪れて傘を開くも役に立たずに *目の前に靄がかかって横になり隣の掃除する音を聞く *張りつめた心のうつわなみなみと涙溜まるも溢れさせじと 「うたよみん」で詠んでいます。「うたの日」もはじめました。 https://www.utayom.in/users/18718

      • 【短歌】持たざる者

        *何ひとつ持たざる者の我なれば対抗意識を燃やすあてなく *子どもなし健やかさなし所得なしこれから何をよすがに生きる *物語るほどにもならぬわが悲劇弔うために短歌(はこ)に詰め込む 「うたよみん」で詠んでいます↓

        • 【短歌】渚

          *足首を撫でるさざなみ感じつつ空の心で見る海の果て *触れないと心に決めて幾星霜 星砂となり浜に着くまで *いつの日かきみの渚にたどり着くもし見つけたら小瓶に入れて これらの歌は「うたよみん」に出したものから選んでいます。

          • 【短歌】春の夜

            *春の夜つめたい風に桜舞うそばにいるのに触れられもせず *春の宵散った花びら踏みしめてきみと語れば甘い痛みする *春嵐吹くたびきみは現れて遠く霞の中に消えゆく

            【短歌】花

            *春空に白木蓮の枝伸びて無数に無垢の翼羽ばたく *道端にぼてぼてと落つ紅椿見向きもされず朽ちてゆくのみ *終雪が舞うなか桜の花ひらくいま常識を問いただされる 短歌にはまっています。

            短歌っておもしろいと思った話

            近ごろ短歌にはまっています。おもしろいです、短歌。文学部出身ではなく、そういえば学校で習ったような記憶が…というくらい短歌に関心がなかったのに、どうしてはまってしまったのか、自分なりに考えてみました。 短歌ってすごく生々しい2年くらい前、たまたま図書館で目に入った俵万智さんの「あなたと読む恋の歌百首」を借りて読みました。たぶん自分の意思で短歌を読んだのはこのときが初めてで、「短歌ってなんて生々しいんだろう!(いい意味で)」と思いました。恋愛の歌を集めた本だからというのもあり

            【創作】散る桜のレール(2/2)

            アラフォー男女の小さな物語です。 ひとり高熱に浮かされながら由香里が思い出す「あのとき」とは。 第1話はこちら *** 春らしい暖かく穏やかな日が増えたが、夜になると冬を思い出せと言わんばかりに冷えてくる。仲間の輪の中にいたときはそれほど寒いと感じなかったが、ひんやりした空気を肌に感じた。 吉岡は危なげない足取りで駅とは違う方向に歩きはじめた。まるでどこが目的地か分かっているようだった。由香里はうつむいて黙ってついていく。こういうときに何を話せばよいのかわからなかった。

            【創作】散る桜のレール(1/2)

            アラフォー男女の小さな物語です。 *** 「インフルエンザだね」 年配で小太りの医者は紙のカルテを見ながらだるそうに言った。顔が上気し、倦怠感を滲ませている由香里のほうをまだ一度も見ていない。 「もう4月なのにインフルエンザですか」 由香里はつい抗議してしまう。抵抗したところで判定が覆るわけがないのだが、そうせずにはいられない。近ごろ気温の変化が激しかったから、風邪を引いたのだろうと思っていた。処方薬を飲んで新年度のばたついたスケジュールを乗り切るつもりだったのに、インフ

            「ファーストデートの思い出」で掘り起こされた、捨てられない記憶

            林伸次さんの「#ファーストデートの思い出」企画に参加したところ、「#ファーストデートの思い出で面白かった話」にまとめていただきました。ありがとうございます。自分が書いたものが誰かにいいなって思ってもらえるのは嬉しいですし、林さんにそう思ってもらえるとなお一層嬉しいです。 20年以上前の思い出なので記憶がおぼろげだったのですが、このことで作り話はしたくないと思い脳みそを振り絞った結果、なんとか話になるくらいには思い出せました。 noteを書き終えると「結局その後はどうなったん

            アマチュアチェリストにとってのオーケストラは音楽だけじゃなかった

            わたしはアマチュアのチェロ奏者で、約20年間オーケストラで弾いていた。年に2,3回のペースで演奏会をこなしてきたが、ここ数年は年1回、しかも本番前に数回しか練習に顔を出さなかった。 前回の本番が約1年前。それからずっとチェロを弾かなかった。その前2年間もほとんど楽器に触れていない。オケに参加しない時期があっても、定期的に楽器に触るように心がけていたので、こんなに長い間弾かないで過ごしたのは初めてだった。以前は平日に学校や仕事のあとで個人練習し、週末にオケの全体練習という習慣

            ファーストデートの思い出

            お互いの立場上、あまり大っぴらに書ける話ではないかもしれない。でも付き合うことはなかったし、もう20年以上たっているから語るのを許してほしい。 わたしは高校生で、彼は高校の教師だった。新卒で赴任した彼は、わたしのある教科の担当教師になった。ありがちなことだと思うが、新任の先生は生徒の注目を集めやすく、比較的年齢が近いため生徒からいじられやすい。彼も例にもれずそのように扱われていたし、わたしと友達との会話でも彼が話題になることがあった。もうだいぶ昔のことで記憶があいまいだけど

            紅茶のある風景ーー初冬の学校で

            校舎から出た途端に震えがきた。スカートから伸びた素足に北風が容赦なく吹きつけてくる。食堂につながる外廊下には赤や黄色の落ち葉が散りばめられていた。 小走りで食堂の前にある自動販売機に向かい、硬貨を入れて迷うことなくボタンを押した。無遠慮な音を立てて出てきたペットボトルを取り出す。オレンジキャップのボトルは冷えた手にとても熱く感じられた。ブレザーのポケットからハンカチを取り出しボトルに巻くが、完全に温かさを打ち消してしまうのが惜しい。ハンカチを広げて包みなおし、それを両手で包み

            金木犀のかなしみ

            ショートストーリーです。 この季節はやっぱり金木犀。 *** 僕と彼女は道すがら喫茶店に入り、コーヒーを注文した。 「近ごろ金木犀の香りがするようになってきたね」 僕が首をかしげると、彼女は呆れた顔で嘘でしょとつぶやいた。そのあと、小さなオレンジ色の花をたくさんつけて、いい香りを放っている木が金木犀だと教えてくれた。そう言われれば、道を歩いていると強く甘い香りがすることがあるな、と思い出す。昔トイレの芳香剤によくあった香りのような気がするのだが、口にすると怒られそうだった

            わだかまりが解けるとき―内田也哉子さんの葬儀挨拶から思うこと

            わたしが幼稚園児だった頃、兄は中学生で不登校だった。なんとか学校に行かせようと、母は兄にひどいことをした。たぶん、学校に行かない息子をどうしていいのかわからなくなっていたのだろう。わたしはその場面を見ていたが、いつの間にかすっかり忘れていた。しかし中学生になってから、些細なことがきっかけでフラッシュバックしてしまう。友達に「ごはんがおいしくて優しいお母さんでいいな」と事あるごとにうらやましがられ、母を誇りに思っていたのに、裏切られたような気持ちになった。それから母のことを信じ

            ショートストーリー「電話ボックス」

            昼から降り始めた雨が勢いを増している。近ごろ雨の日が多く、ひと雨降るごとに季節を秋に押し進めているようだ。 男は古い木造アパートの1階にある自室でぼんやりとしていた。ワンルームの部屋には小さな座卓とテレビ、必要最低限の家電が置かれている。白いレジ袋に入れられた弁当のごみが何袋もあり、狭い部屋をより狭くしている。空のペットボトルや缶も転がっている。布団は敷きっぱなし。起きているときはそこに座り、夜はそこに寝る。いまは昼過ぎだが、男は布団に寝ころんでいた。天井にはなぜついたのかわ

            相手をみとめる

            やってもらったことに対してお礼を言う。目立たないけど頑張っている人にねぎらいの言葉をかける。形ばかりではなくて、ほんの少しでもいいから本当にそう思ったときに言葉にするようにしている。自分の気持ちを伝えたいということはもちろん、言われた人が報われた気分になったり、もっと頑張ろうという気持ちになってくれたらいいなと思って。ちょっと偉そうな物言いかもしれないけど、誰でも感謝されたり褒められたときに悪い気はしないものだ。 なぜそうするようになったか、はっきりしたきっかけは思い出せな