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三浦崇宏×橋口幸生×竹村俊助 プロが教える言葉の技術 上級編(2020.02.16)

※表現はご本人が話したそのままでない部分があるかと思います

≪自己紹介≫
三浦さん:博報堂で10年
マーケティング→PR→クリエイティブディレクターと進み独立

『言語化力』がおかげさまで好評
概念・複雑な思いを言葉にという思いで出した

橋口さん:自分は書くのは得意だが人前に出るのは苦手
人前に出たくないけどクリエイティブな仕事をしたいと思って選んだのがコピーライターの仕事
スカパーを7年くらい担当

ANA×STARWARS、のどごし生の夢のドリームマッチを担当

このときは競合プレゼンで社内Aチーム・Bチーム・Cチームとある中でCチームだった
(三浦さん補足:競合プレゼンでは電通・博報堂のような大手だと社内でも複数チーム出す Aチームが本命、Bチームは少し面白目、Cチームは自由演技的)
採用してくれたキリンさんが偉かった クライアントの勇気がいいものをつくる
このときはいきなり長州力にあてるわけにはいかないので仮想長州力と何回か練習してもらったがその練習相手がカズ・ハヤシ(十分有名)

プリッツの日

鬼平犯科帳

コピーライターは言葉を起点にアイデアを考える仕事
奇をてらっているようで原作のままのことを言っている

三浦さん:BL要素あるよな、今でも面白いよなというところを言語化
真ん中にある言葉を発見していく
「なたで割りのみで仕上げる」と表現される
大きい刃物で物事を切るのがクリエイティブディレクター
のみで仕上げるのがコピーライター

≪お互いの本の感想≫
・三浦さん→橋口さん
橋口さんはもともと友人で先輩だがそれを差し置いてめちゃくちゃいい本
ダイエット本は日常でやれることがあるのがいい本
この本も次の日からていねいにやっていこうと思える
3個だけと思ってこの本の内容を意識するだけで相当言葉の使い方がうまくなる
『言語化力』で言葉の可能性を感じ『言葉ダイエット』で書き言葉での伝え方を身に着けていくという流れがよいのではないか

橋口さん:この本を書くのに約1年
この日にこれだけ書く、というのをExcel管理した
←藤子不二雄A先生のやり方をまねた

三浦さん:この本を広告・メディア関係者、官僚に研修で使いたい
2大病気
①作り手になった瞬間受け手の気持ちを忘れる
②難しい文章を書ける方が偉いと思っている
今はとにかく読みやすい方が偉いのが当たり前

橋口さん:企画書はサービス精神で長くなってしまう
先輩の原野さんに「プレゼンは短い方がカッコいい」と言われたことが影響

三浦さん:後輩の牧野くん「礼儀の本質は時間を奪わないこと」
昭和・平成の礼儀:相手を大事に思っていることを表現
(肩書きをつけたりなど)
令和の礼儀:偉い人ほど忙しい
相手の時間をいかに奪わないか
平安時代にふくよかな女性がよしとされていまはそうではないように価値観もアップデートする
10年、20年前と違うこともある
言葉マッチョ→ダイエット・スリム化の時代

・橋口さん→三浦さん
自分がそこまで気にしていなかったコピーに対して「橋口さんのあのコピー、すごく好きでしたよ」と言ってくれたことでこの人はどれだけ勉強熱心なんだ、ということを感じた

三浦さん:仕事のことを考えているのが好き
カンヌで初めて会う 夢のドリームあたりから面白いことをやる人だ、と橋口さんを認知
時代の中で機能する言葉を意識している方だと感じた

橋口さん:この経験から若手のいいコピーを書く人を注目するようになった
三浦さんは広告以外を見て広告を作っている印象
どうしてもコピーライターの世界はいい先輩についてコピーばかり見てしまう
「日出処の天子」は最高のコピーだと思っている
これがなかったら今頃日本は先進国でなかったかもしれない

三浦さん:見た目は違うがプロレスとヒップホップ好きで趣味が合う
ターザン山本氏が以前「プロレスしか知らない人はプロレスのことを何も知らない」ということを言っている
プロレスは社会のメカニズムの象徴(現在は男性・女性が対決すればたいてい女性が勝つなど)
広告しか知らない人は広告のことを何も知らない
人間の感情・欲望について詳しくなる

橋口さん:プリッツの「つらい。」
友人のクボさんが頭髪後退をFacebookに「#つらい」であげていたのをなんとなく面白いと思っていた
このときの担当が厳しく300案くらい書いてボツになった
「同情するなら買ってください」など
コピーライター的にはこちらを評価しそうなところ「つらい。」が採用

竹村さん:最近はそれっぽいコピーが評価されない傾向にあるのでは

橋口さん:ツッコミどころがないのが広まらない
一方いいコピーを作り続ければ蓄積になる(尾形真理子さんなど)

三浦さん:ツッコミのクリエイティブからボケのクリエイティブへ
矛盾・思い込んでいること「地図に残る仕事」など から
Yahoo!防災の「ちょうどこの高さ」

話し合いたくなる求心力
「ケンドリック・ラマー来日」

どちらの要素も大事

橋口さん:「スタンスを決めよう」
しゃべり・プレゼン・社内会議などが苦手だったが自分はしゃべりでこれが出来ていなかったということに気づき意識するようにしてからすごく楽になった

三浦さん:1個嫌われても筋を通す


橋口さん:佐々木宏さん(「そうだ 京都、行こう。」など)の逸話
Bだ、という全体の空気から僕はA案がいいと思ったのでA案ですね、と押し通した話
Aを通したいが嫌われたくないは両立しない
撤回ラインをどこに引くか
嫌われることを覚悟したうえで根回しはめっちゃする
大御所のまねしてキャリア終わる若手問題がある
佐々木さんも許せないことを言っているけどどこかチャーミングと言われている

三浦さん:「ほめディスり」煽り止めが大事
「こんなわがまま通せるの○○さんだけですよ~」と最終的にほめている
勝ちすじがあると思ったうえで踏み込む
箕輪くん(箕輪厚介氏)などもめちゃめちゃ気づかいしている
日常一番言っている言葉が「ごめんね」

橋口さん:スパイダーマンの映画批評でもすごいと思った
これまでのヒーロー像と違ってプライベートを大事にする、というところをあげていた
自分はまったく逆の印象 また父殺しか、という印象

三浦さん:アメリカのヒーローは自己犠牲を伴う
裏でプライベートの充実を取りに行く姿勢が新しいと思った
カラーバス効果 「変化と挑戦」を言っているので気づく部分もある

橋口さん:「「逆張り」はしても「冷笑」はしない」というフレーズ

三浦さん:自分が弱いところから始まっている
自分の存在に対する不確実さの自覚
調子に乗るとろくなことない人生を送っている
局地的に勝っていると負けている人がいる

橋口さん:「妥協でなく止揚」
自分は「通す」「通さない」という言い方が好きでない
いっしょにつくりましょう、というスタンスでやっている

三浦さん:原体験は鈴木おさむ氏との日産のプロジェクトの仕事
当時20代でソーシャルメディアについて知っているのが自分がいちばんだったことから抜擢
責任者をつける必要がありいっしょにやることに
いい意味でミーハー、下品
カッコつけない面白さがソーシャルメディアっぽい
まったく理解できないクライアント事情で企画がボツになったことを報告した際「そんなことでボツになるなんてめちゃくちゃ面白いね~」と言ってくれた
ルールは新しい補助線

橋口さん:鬼平も当初若手デザイナーがマンガ本のカバーに提案したもの
カバーには流通等での難しさがありポスターに
もともと何かを踏み台にして新たなものができることが多い
いろいろな妥協の結果いいものができる
ライオンキング→子供のライオンの動きがどうしても表現できず、草むらで隠したことでよりリアリティが出た
ヴェノム(スパイダーマンのキャラ)→スパイダーマンを黒くしてほしいというのを別キャラを立てて人気に

三浦さん:クリエイティブディレクターは別の視点を見つけるプロ
「ピンチはクイズ」と言っている
「無理かもしれませんがこれならできます」
でもともとよりいいものを生み出せることが醍醐味
無理を面白く切り返せる人が生き残る

橋口さん:「「けなして変える」より「ほめて変える」」
歴代の缶コーヒーなどは「ほめて変えない」
日本で初めてこうしてほめて変える考え方を言っているのでは

三浦さん:今回のそごうの広告についてもほっとけよと思った
クリティカルに傷ついている人はいないのに批判していいことがあるのか
Twitterがブランディングツール化し頭いいのをひけらかすツールになってしまっている
言わなくてもいいことまで言わなきゃいけないと思い込んでいる
ディスることは簡単に頭がよく見えてしまう
それをとにかくほめて前に進める
クリエイティブディレクターの仕事は
方針を決める→選ぶ→また決める ということ

橋口さん:アイデアを否定しても人格を否定することを絶対にしないようにしている
「人生の目的を言葉にせよ」
やりたいことがないという人のために就職のシステムがある

三浦さん:夢、やりたいことはころころ変わる
言葉にできていれば選択ミスは防げる

≪竹村さんからの質問≫
Q.言葉力を高めるには?
橋口さん:みんなが当たり前に使っている言葉を疑う
「ご確認いただけないでしょうか?」など
中村禎さんが以前電通で相手を「お得意」というのにびっくりしたと言っていた
言葉は自分のポジションを決める

三浦さん:言葉の中には価値判断が入る
「闇営業」という言葉は吉本にとっては社則違反だが「直営業」ととらえれば社会的にはとくに何も法に触れることはやっていない
「憲法改正」「ネット炎上」なども
メディアリテラシーの前に言葉リテラシーを

Q.言葉力を磨けば儲かるか?
橋口さん:儲かる
少なくとも自分は「お戻しをいただきました」などという若手とは組みたくない 自分は下の立場という思いが入っている

三浦さん:我々は業者ではなく「医者」であるという話をしている

≪質疑応答≫
Q.三浦さんにとっての「話し言葉」、橋口さんにとっての「書き言葉」の意味
三浦さん:目の前に相手がいるので言葉自体に意味はあまりない
言葉は一部品 補助線

橋口さん:書いているうちに理解できる 頭の整理
他業種の人は書かずにうーん、とうなって考えてしまう

Q.ことだまはあるか
橋口さん:それによって定義される部分はある

三浦さん:現実を改変する能力はあるが人間にしか通じない
「明日天気が良くなってくれるといいな」は通じないが「あの人が好きになってくれるといいな」は状況を変える

Q.本を書いて時間がかかったところ
三浦さん:言語化の段取りのところ
自然にやっていたことを言語化できていい経験になった

橋口さん:ダメ文章の例 単純に面白くない仕事

Q.作り手になった瞬間受け手のことを忘れてしまう理由
三浦さん:キャラクター効果 演じなきゃいけないと思う
いい面もあるがその弊害

橋口さん:人間ってそういう生き物だと思う

Q.受け手の気持ちを持ち続けるためには
橋口さん:「バカのふりして言うけどさ」というフレーズはよい

三浦さん:ある大物タレントのマネージャーの話(女性)
友人のおばちゃんが3人いてその人がマネージャーをやっていることを知らない
その3人が知っていることであればヒットと感じる
そういう人と会う場をつくっておく 港区のクリエイターは普通ではない

Q.ものごとをはっきり言えない
三浦さん:「わからない」も1つのスタンス
先日AbemaPrimeに出演した際当初「ネットの誹謗中傷」のテーマの予定が急きょ「中東派兵問題」にされて「わからない」を通した
わからないことは決して恥ずかしいことではない

Q.デザイナーとコピーライターとしての仕事のやり方
三浦さん:昔その言葉がなかった時代博報堂では
コピーライター:文案家 デザイナー:図案家 と呼ばれていた
アイデアを出すのが両者 それをクリエイティブディレクターが合体し直す

Q.『言葉ダイエット』の素敵な構成はどうやってできたか
橋口さん:共感をもてるものを作りたいと思ったことと編集者のアドバイスが大きい
今回の本を書くのにあたり文章術の本をたくさん見たがいい例ばかりでダメな例が少なかった

≪最後に≫
三浦さん:ぜひ本の感想をnoteに

橋口さん:「言葉の鎧を脱ごう」
自分のスタンスを出してやれば仕事が楽しくなる
そのきっかけに

竹村さんのnote

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