能の内容がわからない、何を言っているのか聞き取れない、といった声にお応えするために始まった、檜書店の字幕サービス「能サポ」。
字幕については、様々なご意見もあるかと思いますが、広く能や字幕に興味を持っていただければ…と願い、字幕制作のウラ話、苦労や失敗などを時々お話していきたいと思います。
流儀の違い
能の台本である謡本は、シテ方の各流で出ていて、その通りに上演されますが、能はシテ方以外に、ワキ方や狂言方、囃子方、それぞれに流儀があります。また、小書(特別演出)も合わせれば、天文学的…は大げさかもしれませんが、その組み合わせは何通りにもなります。
流儀が違っても大きな差はない、と思われるかもしれませんが、これがそうでもないのです。
毎回シテ方の流儀の次に確認するのは、ワキ方の流儀。シテ方の謡本にだけ頼っていると、ワキ方の謡が全然違う!となってしまうのです。
例えば、お馴染みの「船弁慶」。ワキの弁慶が名乗り、判官が平家を倒したと話した後、「兄頼朝との不仲の説明をしてから西国に下る」と言う場合と、「さる子細あって西国に下る」と言う場合とでは、違いますよね。
能サポには、「詞章チャンネル」と「解説チャンネル」があります(公演によっては、英語などの多言語を実施しています)。
(以前にご紹介した記事はこちら)
解説チャンネルなら多少の違いにも対応できますが、詞章チャンネルをご覧のお客様には、全く違う文句を見せてしまうことになります。また上記の「船弁慶」で言えば、解説チャンネルでも、頼朝との不仲…とするか、ある理由で…とするか、内容を変更しなければなりません。
という訳で、字幕を作る際、まずはシテ方の流儀の謡本を用意し、同時にワキ方の流儀を確認するのが、制作の第一歩となっています。
10月〜12月に字幕サービスが利用できる能楽公演の一覧です(太字の演目は字幕サービスがあります。その他詳細は各公演ホームページ等をご確認ください)。
舞台に合わせて解説(日本語・英語)と詞章をご覧いただけます。
能楽鑑賞のおともにぜひご利用ください!
能楽鑑賞多言語字幕システム《能サポ》について詳しくはこちら