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短編小説:色は匂えど散りぬるを
(一)
……名前を呼ばれた。
彩葉(いろは)は開いていたポメラを閉じて待ち合いのソファから立ち上がった。顔を上げるときにほんの少しだけ明るく染めたミディアムの髪が目にかかった。そろそろ美容室に行った方がいいかもしれない。根元も大分黒くなっている。向き合った時間の割には進捗はほとんどなかったものの、手癖のように保存のCtrl+Sキーを押すのは忘れない。
母には外での使用を止められてい
(一)
……名前を呼ばれた。
彩葉(いろは)は開いていたポメラを閉じて待ち合いのソファから立ち上がった。顔を上げるときにほんの少しだけ明るく染めたミディアムの髪が目にかかった。そろそろ美容室に行った方がいいかもしれない。根元も大分黒くなっている。向き合った時間の割には進捗はほとんどなかったものの、手癖のように保存のCtrl+Sキーを押すのは忘れない。
母には外での使用を止められてい