山のポ　#毎週ショートショートnote

「さぁ！今、強くポが感じられるはずです」

体験者が山の中で手を取り合う。

「すごい...太陽の近くにいるみたいだ！」

一人の言葉に研究員が返した。

「感覚は人それぞれ。皆さん、どう感じたか共有していきましょう」

「お、俺も熱を感じる」

「白い光が見えるような...」

セッションが終わると、ある女が男に声をかけた。

「あの...もしかして2回目の参加ですか？」

「...いえ？というかこれ、1度きりしか参加できませんよね？」

「私、実は2回目なんです。どうしても山のポを感じたくて、友人の保険証を借りて...」

「なるほど...僕は初めてです」

「ですよね、すみません。前回同じような感じ方の人がいた気がして、もしかしたらと思って...」

「偶然近い感覚の人がいたのかもしれませんね」

「やっぱり私、素質ないのかな...20万も払ったのに...」

事務所に戻った男は、急いで名簿を開いた。

「お疲れ。どうした？そんなに慌てて」

「偽名の参加者がいた。もっと審査を厳しくした方がよさそうだ」

「え？大丈夫だったのか？」

「なんとか誤魔化したが、そろそろ危ないかもしれん。俺は明日から別のセッションに移るよ。海のピの方に行く」

「了解。じゃあ一人"体験者"をスイッチしよう」

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